断腸亭料理日記2021

いなだ昆布〆

3930号

9月11日(土)〜

さて、いなだ、で、ある。

浅草ロックスの西友で刺身に切ったものを
見つけた。
1パック358円と格安。
一匹分のよう。

いなだというのは、小型の鰤(ぶり)。
ご存知の通り、鰤は出世魚と呼ばれ、
関東では、わかし、いなだ、わらさ、ぶり。
関西ではつばす、はまち、めじろ、ぶり、
というそう。

おそらく、今日のものは30cm程度のもの。
相模湾か、神奈川産。

安いので買ってみた。

関東では、大型の脂ののった成魚の鰤は、
あまり獲れないのであろう。
見たこともない。
従って、食べる習慣も元来あまりなかったと思う。
江戸前鮨にも、今もあまり扱わないし、
もともとなかったのであろう。

鰤というのは、私が大学で学んだ日本民俗学では
儀礼魚と呼んでいた。正月食べる魚。
年取り魚などともいう。
あるいは冬の魚なので、冬の祝い事などに食べる。
ただ、これは西日本。
関東も含めて、東日本は、いうまでもなく、鮭。
お節料理にも入るし、塩漬けの新巻鮭は
歳暮など冬の贈答品として定番であった。

東西の境はどこであろうか。
はっきりしなかったので、調べてみると、
糸魚川構造線あたりのようである。 (ウィキ

太平洋岸は静岡、日本海側は富山と新潟。
中間にあたるところは、長野県を含め、
鮭、鰤が混在しているとのことである。

閑話休題。

鰤はそんなわけで、関東の近海ではあまり獲れない
と思うのだが、いなだ、さらに小さなわかし、は
かなりの頻度で見かける。
最近も、吉池で一匹のものを見かけたような
記憶があるし、アメ横の安売りの魚やでも
よく見かける。

決まって大きさの割に安い。
刺身で食べられるのだが、これも決まって
味はもう一つ、なのである。
だから安いのであろう。
今まで、アメ横などで買って、
自分でさばいてなん度も食べている。

もちろん、成魚の鰤は脂がたっぷり。
しかし、わかし、いなだあたりは、ほぼ脂はない。
身も鰤よりは柔らかめ。
うまみもないのか。
鰤から脂を抜いた味、ともいえないのである。

これ。

どうしようか。

一度、このまま食べてみようか。

一切れだけ、しょうゆをたらして食べてみる。

あー、やっぱり。
いなだの、味。

やったことがあったけ?。
記憶にないが、昆布で〆るか。
昆布〆用の昆布の買い置きがあった。
特殊なものではないと思うが、薄いもの
で、ある。
水分を抜き、うまみを加える意図であれば、
出汁を取るような厚さはいらない、ということ
であろう。

量が多いので、昆布も随分使う。
大きいもの二枚ではさんで、ラップでくるむ。

輪ゴムで止める。

この日の深夜。6時間ほど経過したもの。
様子を見る。

多少、水分は抜け、色も黄色味が足されている
ように見える。

昆布〆は鯛や平目など白身でよくやるが、
あれらは、6時間ほどでも十分効果があった。
身が薄い?、より淡泊だからか。

逆に長時間置くと、水分が抜けすぎて昆布に
くっつく。カチカチになってしまう。

生わさびをおろして少し食べてみた。

あー、やっぱり、だめ。
生とあまりかわらない。

これで、はっきりいうと、もうあきらめていた。
が、昆布ではさみ直し、冷蔵庫へ入れておいた。

翌夜、この日のメインは別にあったのだが、
ダメ元で出してみた。
24時間たっている。

さらに色も変わり、水分も抜けている。
ただ、白身のように、抜けすぎているという
こともない。
昆布からも離すことができる。

どんなものであろうか。

ダメ元なので、わさびもチューブのもの。

が、これが、驚いた

かなり、うまい、のである。

いや、そこまでいうのは言いすぎだ。
だがしかし、生、昆布〆6時間と比べて
そうとうにうまくなっているのは事実、で、ある。

そうであったか。
いなだをうまく食べるには、昆布〆。
それも24時間。
発見、で、ある。

 

 

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