断腸亭料理日記2021
3946号
10月6日(水)第一食
開けたら、きたかったところ。
上野の[ぽんた本家]。
NHK「プロフェッショナル」にも取り上げられ、
ミュシュラン掲載店でもある。
上野とんかつ御三家にも数えられるが、
洋食やが、本来の顔。
昼ではなく、呑みながら食べたい、
うまい、上質な洋食。
店名は書かれていない場合も多いが、
池波先生が上野でとんかつを食べると、
おそらくかなりの確率で、ここであったのでは
ないかと思われる。(もう一軒、惜しくも
閉店してしまった[双葉]
が行かれていた店であろうか。)
1905年(明治38年)創業。
おそらく、まだ、とんかつ、という言葉もなかった。
豚のカツレツであろう。
当代で四代目。
「プロフェッショナル」によれば、私よりも
年下であった。
夜営業の開店、16:30を目指して、自転車で出る。
JR高架下の御徒町ラーメン横丁のガードの通り。
中央通りに出る手前右側。
旧町でいうと、上野東黒門町。中央通りをはさんで
向こう側が西黒門町。先代八代目桂文楽師は、
このあたりに住んでいたので、黒門町の師匠と
呼ばれた。どのへんであろうか。
黒門というのは、今の上野公園である寛永寺の
正門が黒い門で、この黒門に由来する。
そういえば、シンガーソングライターの小椋佳氏も
黒門町の生まれであった。
16時半を少しすぎて到着。
営業中の木札を確認して、重い木の扉を開けて
入る。
入るとカウンターがあり、向こう側が厨房。
ご主人に一人、と指を出す。
階下のカウンターには既に二人。
お二階へ、とご主人。
一人だと、階下のカウンターなのだが、
密を避けるためであろう、二人で
お仕舞にしているよう。
奥の階段を上がって、二階のお姐さん。
窓際のテーブルへ案内される。
階上も二組ほど既に入っている。
皆、この開店を狙ってきている。
掛けて、さて、なんにしよう。
まずはビールで、カツレツ、ではない気分。
ほんとは、前々からの課題であった、
ビーフシチュー、もしくはタンシチューなのだが、
前回、春にきたときに、このコロナ禍で、
いつも使っている上質な牛肉が手に入らなく
なっているとのこと。
今日みると、メニューのその部分には、紙が貼られて
いるようで、見えない。
鮑のバタヤキ、同じく蛤のバタヤキ。
いかフライもうまいし、、、。
よし、フライものでいくか。
海老コロッケ、2750円也。
ビールとお通し。
かなりの確率でこれが出るが、お通しは、
いか下足のぬた。
辛子の効いた酢味噌。
この辛子酢味噌、いつになく、辛子がきいている。
作りたて?。
海老コロッケも到着。
やめていたが、ご飯と味噌汁もつけてもらった。
なんだか、食い意地が張るようになったか。
味噌汁は、赤だし。
アップ。
カツレツ同様、白い揚げあがり。
粒が大き目のパン粉は、サックサク。
キャベツにはテーブルのソースをかけて食べる。
見てわかるが、このキャベツはスライサーではなく、
包丁。
このソースは甘味が抑えられ、スパイシー。
海老コロッケ。
なにも、かけない。
それでよいだろう。
クリームコロッケというのは、いつも、
どこでも迷う。
なんとなくとんかつソースを掛けてしまうが
クリームには基本味が付いているので、いらない
はずなのである。
濃厚なクリーム。
なにがうまいのかというと、海老の食感が
しっかり感じられる大きさで入っている。
海老の肉を1cm3程度に丸めてあるようなのである。
海老の種類は、伊勢海老?、わからぬが。
うまい、うまい。
ご馳走様でした。
階下の帳場で会計。
若いお兄ちゃんである。
私は初めてだが、五代目、であろうか。
不要不急という言葉が、人口に膾炙してしまったが、
こういうことがあると、ほんとうに
自分がきて食べたい、というものが、
はっきりとわかる。
皆さんもそうであろう。
上野[ぽんた本家]の真価であろう。
台東区上野3-23-3
03-3831-2351
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