断腸亭料理日記2021
3859号
5月21日(木)第一食
さて、浅草橋、で、ある。
ちょっと、書いてみたい。
まあ、知らない方は少ないとは思うが
東京の方でもひょっとしたら、歩いたことはないという
むきもあるかもしれない。
観光地でもなし、用がなければこなかろう。
私の住む、元浅草から上野、浅草は
自転車で10分もかからない。
浅草橋はもう少し、15分はかからないか。
ちょっと離れてはいるがまあ、隣町。
だが、やっぱりそう縁がない。
自転車でうろうろするにしても、上野浅草よりも
圧倒的に頻度は少ない。
はっきり言えば、知っているうちに入らない
かもしれない。
浅草橋、いったいどんな街、なのであろうか。
上野浅草に比べると、盛り場、とはいえなかろう。
だが、近年、その注目度はかなり上がっていると
いってよいのではなかろうか。
テレ東「アド街」の浅草橋の回を参考に。
今の一番のポイントは、手芸関係の専門店、
あるいは[シモジマ]などに代表される、
雑貨類ではなかろうか。
雑貨、というのは、あまりにもざっくりした
言い方で、もはやあまり適切ではないかもしれぬ。
手芸用品は、私などにどんなものが含まれるのか、
はまったくわからない。
ビーズ、アクセサリーのパーツ、あるいは皮革品
なども含まれるようである。
[シモジマ]は紙、それも包装紙類。
そこからラッピング用品、紙袋、箱、リボン、
ビニール袋類、紙その他のテープ類、
業務用になるが店舗用品、POPなどなど。
界隈には、よく商店街の電柱などに飾られる
季節の花の造花などを売る店も見かける。
近いものだが、文房具。
文房具も、実は浅草橋は関係は深い。
文具関係の本社あるいは、東京支社、文具関係の業界団体の
事務所など、文具に関係するところが少なからずある。
次は、人形店。
これは江戸からの老舗。総武線の東口駅前にある
[吉徳][久月]あたりが有名であろう。
それから、玩具関係、玩具花火。
手芸と紙関係の雑貨から、若い女性が訪れる街。
これが、浅草橋にとって、最も重要な点であろう。
それこそ、20年、30年前にはもっともっと、地味な
街であったと思われる。
まあ、いわゆる問屋町。それもガチャガチャした
雑貨。一般消費者用にも積極的には売っていなかった
のかもしれない。
そこから今、お洒落なカフェなどもある街に
変貌しつつあるということになるのであろう。
この影響なのか、たまたま同時期なのか、
隅田川沿いに北隣の蔵前から、鳥越、三筋、小島、
私の住む元浅草あたりまでちょっとそんな匂が
漂ってきている。
そして、この日記の主題である、食い物。
これは、どうであろうか、上野浅草に比べると
もう一つ、有名店、老舗というのは、あまり
聞かないのではなかろうか。
佃煮の[鮒佐]中華の[水新菜館]洋食の[大吉]、、
こんな感じ?。
押しも押されぬ有名老舗というともう一つ?。
さてさて、今の浅草橋はこんな感じでよろしかろうか。
あ、そうである。
浅草橋の定義である。
「アド街」でも範囲を特定するが、私も特定して
置いた方がよいだろう。
浅草橋という町名は一丁目から六丁目まで。
丁数は多いが、そう広くはない。
東は江戸(蔵前)通り、南は神田川、西は左衛門橋通り、
北は蔵前橋通り。
概ねこれでよいのではなかろうか。
江戸通りの東側は柳橋で、柳橋は数少ない江戸からの
花柳界という歴史を持っており、今回の範囲には
入れないこととする。
北の蔵前は、おもちゃ・玩具という同じ特徴を
持っているが、また、別の歴史を持っており、
やはり除外。
正確を期するのであれば、北は蔵前橋通りではなく、
そのすぐ南の通り。鳥越川跡が、よい。
北の佐竹商店街隣の三味線堀から幕府の御米蔵、
隅田川に通じていた堀。
これが蔵前との境としては適切であろう。
また、南側。
神田川沿いは、古くは向柳原と呼ばれていた。
神田川の南河岸は江戸期から柳原土手といって、
露店に近い業態の古着屋のメッカであった。
横山町馬喰町界隈の繊維問屋街の元。
こちら側の向柳原もこの影響があり、繊維関係の
問屋、企業がある。
神田川沿いの道一本分、区別してもよいかと思われる。
と、いうことでいつものように江戸の地図。
明治40年。
そして、現代。
まず、江戸の地図からみていこう。
浅草橋は、江戸期正しくは浅草御門。
江戸城外郭門の一つ。
この通りは、国道6号。
今、江戸通りといっているが古くは、奥州街道。
江戸から北へ向かう本道。道幅も広い。
池波先生なども書かれていたが、その後は蔵前通りの方が
ぴったりくる。御蔵前の通りだから。
蔵前橋の蔵前橋通りと区別するために、江戸通りに
名前を替えたのか。
町屋はこの街道の両側。
茅町、瓦町。これは両側が同じ町名。
茅町は、古くはこのあたり湿地で茅の原であったから。
瓦町は瓦をこの付近で焼いていたから、という。
人形店はこのあたりに江戸からあったわけである。
ただ、なぜここであったのかは、諸説あるが
これ、という説得力があるものはないよう。
不明としておこう。
つづく
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