断腸亭料理日記2021

向島・長命寺桜もち

3813号

3月12日(金)

そろそろ、桜も咲きそう。
こんな時期なので、盛り上がって
騒ぐわけにもいかない。

せめても、長命寺の桜もちを買いに行こう。
咲いていない今がよい時期であろう。

吾妻橋[やぶそば]と、本所向島が続くが
これはたまたま。

長命寺桜もちは、浅草松屋の1階でも買える。
ただ、以前は毎日入荷していたと思うが、
今は週一回になっている。
向島の店まで買いに行く。

調べると、8時半から店を開けているよう。
早起き。

花粉もひどいので、早めに行ってみようか。
といっても、11時頃。自転車。

向島側の江戸の地図

現代も

今日は浅草側経由だが、以前は向島側を詳しく書いているので、
こちらもご参照。

吾妻橋まで出て、そのまま浅草側の隅田公園の中を
北上。

東武をくぐる。
昨年、東武の鉄橋に徒歩で向島側に渡れる
「すみだリバーウォーク」ができている。
自転車に乗っては通れないので、渡ったことはないが。

この脇に山の宿の渡し跡の碑。

山の宿というのは、このあたりから北側、
今の言問橋手前あたりまでの地名。
江戸初期から関東大震災まで。
池波作品にも出てくるが意外に知られていない
かもしれぬ。

その先、二天門船着場。
タリーズなどあり、スカイツリーのビューポイント。
コロナ以前は、中国人観光客などの定番観光コースで
にぎわっていた。
ウイークデーでもあるが、今は人はパラパラ。

そして上に言問橋と言問通り。
できたのは、関東大震災の復興事業。

言問の由来は、伊勢物語の在原業平の歌であるが、
まさかの明治4年(1871年)開業の[言問団子]の方が
先なのである。

言問橋といえば、今も追悼碑があるが東京大空襲で
向島側へ渡ろうとした人々が多数命を落としている場所。
またここには、戦後すぐの「蟻の街」の記憶もある。
(詳しくはウィキ

橋をくぐって、左に子規の句碑。

雪の日の隅田は青し都鳥

待乳山聖天からの眺めという。
むろん、先の伊勢物語、業平の

名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

を踏まえているのであろう。

野球場があって、山谷堀広場。

ここは旧山谷堀が隅田川に合流していたところ。
勘三郎在りし日、平成中村座の小屋もこの広場にできた。

山谷堀はここから、日本堤、吉原大門前、
さらには三ノ輪へと続いていた。

その先が台東区のスポーツセンター。

川っ縁の土手へあがり、桜橋。
この橋は、自動車は通れない。人と自転車専用の橋。
天気はよいが、風が強い。

渡ったところ、いつも桜が咲くと、向島の
芸者さん達が接待してくれる、茶店ができる。
まあ、今年はない、のであろう。

左に降りると、墨堤通りから首都高向島線の入口。
これを渡ったところに[言問団子]。

墨堤通りを戻った左が長命寺桜もち[山本や]。

子規先生は、まだ学生時代であったか、ひと夏、
ここの二階に下宿して小説(らしきもの)を
書いていた。
「正岡子規仮寓の地」なる案内板が歩道に設置されている。

5個入り、1,300円を買って、同じ道を戻り、帰宅。

こんな箱。

桜色の紐できれいに結ばれ、クラシックなラベル。
「名物すみだ川長命寺川前桜もち山本や」か。

箱。

これもよいではないか。

開けると。

立派な葉っぱのよい香り。
二枚。塩漬けの大島桜だそうな。

皿に出してみる。

切ると、こんな感じ。

品のよい甘さ。葉っぱも柔らかく、うまい。

長命寺桜もち[山本や]は創業が享保2年(1717年)。
江戸中期吉宗の頃。なんと今年で304年。
飲食関係、江戸・東京の店ではかなり古い方である。
初代があんこを小麦粉を焼いた皮で巻いて桜の葉で包んだ
桜もちを考案。つまり長命寺型桜もちの元祖。

やっぱり、これを食わなければ江戸・東京の春、
とはいえなかろう。

 

長命寺桜もち

 

 

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