断腸亭料理日記2020

浅草・とんかつ・ゆたか

10月13日(火)第一食

引き続き「東京とんかつ会議」より。

選ばれている、浅草のとんかつや、
[とお山]に続いて、二軒目。

今日は、とんかつ[ゆたか]。

平仮名で“ゆたか”だが、看板の“た”は
変体仮名の

これを使っている。
この字は当の旧字、當をくずしたもの。
浅草には老舗が多いが、変体仮名を使っているところも
多い。

場所は洋食の[ぱいち]の隣。
雷門通りから北へ一本目。「食通街」と呼ばれている
東西の横丁、[ぱいち]の角をさらに北へ入ったところ。
裏路地といってよい。

初めて、である。
実のところ、不勉強ながらここは存在も知らなかった。
食通街は、週に一度とはいわないが、月になん度も
通っているのに。

創業は戦後すぐという。
建物は、数寄屋造りが自慢のよう。

店に着いたのは13時半前。
自動ドアを開けて入ると、ちょっと背の高い
若旦那風のお兄さんが迎える。

二階もあって凝った部屋らしい。

一階、奥のテーブルに案内される。

先客は二組で静か。
さすがに落ち着いた店内。

これは、ビール、かな。

掛けると壁の貼り紙に目が留まった。
松茸土瓶蒸し。

秋になって、この文字を見ると、どうしても一回は
頼みたくなる。

実のところ、今年は某店でひどいものにぶつかって
しまっていた。こういうものなので、どんなところでも
1500円超。その割に松茸は申し訳ほども入っていない。
そのうえ土瓶は弦が不安定で真っ直ぐ持てない。
バイトのお嬢さんは土瓶の“瓶”が読めない、、。
もはや笑ってしまった。

口直し、しなければ。

お兄さんを呼んで、ビール中瓶とロース(1,637円)
の定食。土瓶蒸しも。

20分ほどかかりますが、いかがいたしましょう?。

いいですよ。

とんかつの方が先になってしまいますが。

かまいません。

土瓶蒸しを食す方が優先であろう。

ビールがきた。
スーパードライ。
お通しのようなものはなし。

やはり、とんかつが先にきた。
ご飯と味噌汁も聞かれたが、面倒なので
置いていってもらった。

「とんかつ会議」で、益博先生は包丁が四か所しか
入っていない。東京でここだけではないか、食べずらい、
と書かれている。
これ、改善している。(この本は2017年の出版)

アップ。

よい色。
やっぱり、最初は塩で。

柔らかい。
そして、うま味も濃い。
このくらいになると、やはり確実に水準以上。
脂身もちゃんとあるが多すぎない。
厚みは、厚からず、薄からず。
老舗らしくバランス系、というところか。
ちなみに、ここは、グレードはなく、ロースとヒレのみ。

ご飯と味噌汁は置いておいて、ビールを呑みながら
ゆっくり食べていると、土瓶蒸しがきた。

開けると、こんな感じ。

ここは、宴会用のコース料理もあり、いわゆる割烹料理も
できるよう。
松茸も、存在感があるほど入っている。
頭付きの海老、銀杏、蒲鉾、など。

松茸は香りはもちろんだが、このシャクシャクとした
食感がうれしい。
また、出汁もはらわたにしみるようで、うまい。

先に土瓶蒸しとビールを片付け、残っているかつで
ご飯と味噌汁。

先生の指摘ではとんかつの裏側の衣に油が残っていると
していた。食べているうちに、衣が柔らかく
なってきたが、油の残りはあまり感じなかった。

お新香は、どうもキャベツの千切りのぬか漬けのよう。
水にさらしてあるのであろう、十分にうまい。

味噌汁は豆腐と三つ葉。色はノーマルであるが、ちょっと赤だし
のような風味でうまい。

やはり益博先生は、お新香、味噌汁は工夫はあるが、
とんかつとご飯のレベルに達していないとしていたが、
私なぞには、うまかった。
ご飯は多少冷めさせてしまったが、堅めにうまく
炊かれていた。
ともあれ、それだけ、かつとご飯のレベルが高い
という益博先生の評価なのであろう。

とんかつと、土瓶蒸し、私には十二分に満足。

ご馳走様でした。
おいしかった。

 


とんかつ・ゆたか

台東区浅草1-15-9
03(3841)7433


 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2020