断腸亭料理日記2020

浅草六区・翁そば

7月3日(金)第一食

さて、浅草の、書いていないそばやシリーズ?。

知る人ぞ知る、有名店であろう。
大正3年(1914年)創業というので、立派な老舗。

私はむろん、存在は知っていた。
店の前を毎日とはいわないが、しょっちゅう通っている。
六区の、そう、あの[水口食堂]

の並び。
洋食の[ヨシカミ]の角から北、[まるごと日本]方向へ
向かう、ちょいと闇市的雰囲気も残るこの路地、
知らなかったが、いっぷく横丁というよう。

[翁そば]は、ちょいとしたわけあって、一度も足を
踏み入れたことはなかった。

店はこんな感じ。

かなり、渋い。
渋すぎる、かもしれぬ。
やはり、知らなければ入れないくらいの
存在感、いや、むしろヤバイ感じ、すら
あるかもしれぬ。

昼を目指して、自転車で出る。

細い路地なので[まるごと日本]側に自転車を
とめて、行ってみる。

格子は開けてある。

入って、一人、というと、
お姐さんが、アルコール消毒を、と。

テーブル席には、透明の仕切り。
入口側の奥に掛ける。

ここは、カレー南蛮が名物。
迷わず、それ。

店の中も渋い。
並木の[薮蕎麦]にも負けず劣らず、クラシック。

品書きは、壁に札。
小上がりもよい感じの狭さ。
奥には、帳場らしい設(しつら)え。

お客は、わざわざ来たサラリーマン系が多いか。

きた、カレー南蛮。

なみなみと、丼にすり切り、といった塩梅。

そして、そばが、、、

こんな感じ。
そう、なのである。
この太さ。
うどんですか?といった、麺の色味。

竜泉から観音裏に代替わり、移転したかの、肉南の
[角萬]に瓜二つ。知らなかったのは私だけ?!。

こちら[翁そば]の方が古そうではあるが、、。
これはどういうことであろうか。

並木[藪]にしても、浅草の古いそばやは皆、
こうというわけではもちろんないであろう。

昔、一つの潮流のようなものがあったのか。
二郎系というのか、ガテン系というのか、
安くて、量が出せる。
まあ、そういうことか。

今は二軒だが、以前は流行ったのか。
浅草に残ってしまった、仇花(あだばな)?。
そうかもしれぬ。

盛りが多いのは確か、ではあるが、ただ、この丼、
実際は、小ぶりの昔風のもの。
目一杯盛られているが、まあ、特大の大盛ではない。
これで650円。
まあ、こんなものであろう。

カレー南蛮自体の味は、びっくりすることはない。
いたってノーマル。
肉は鶏で、玉ねぎ。東京の標準的なそばやの
カレー南蛮といったところ。

どこかに、豚ではないのか、と書いている人が
あったが、東京のそばやには、本来豚肉はない、
のである。あっても鶏。かつ丼のかつは、一般には
肉屋から買う。東京のカレー南蛮は鶏で正解である。
ついでに。
浅草案内のサイトに、ここのきつねそばの油揚げを
お揚げさん、などと書いているのがあった。
これはやめてもらいたい。
お揚げさんは、関西弁である。
浅草のそばやに関西弁は不似合い、不適切である。

「お」をつけて「さん」までつける。
関西の言葉は、京都の女房言葉が、元だと思うが、
こういう使い方が多い。御御御付(おみおつけ)も
やはり、東京はお付。お出汁、お豆さん、
飴ちゃん(なぜか、飴だけはちゃんづけ。)
さらに余談だが、アテもやめてほしい。
(これは上野藪だが。)
東京では、酒の肴、つまみ、である。
関西弁を否定する気は毛頭ない。
あちらのことを書くのであれば、私も、使われている
言葉を知っていれば使うことにしている。
紹介するのであれば、土地のことをよく理解してから
書くべきであろう。

閑話休題。
ここ、クセになりそう。
なにがといって、この味のある雰囲気。

お姐さんも、感じがよい。
そして、奥の調理場から聞こえるご主人らしい声。

そばが出る時に、都度、お待たせしましたぁ〜、と
奥から聞こえてくる。
今どき、こんなそばや、いや食い物やは、なかなか
なかろう。

太いそばと、クラシックな設え、店の人々、
色々ひっくるめて、居心地がよい。

なんでもっと前にきていなかったのか。
そう思うことしきり。

ご馳走様でした。
また、すぐにきそう、で、ある。

 

 

03-3841-4641
台東区浅草2-5-3

 

 

 

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