断腸亭料理日記2020
7月8日(水)第二食
午後、吉池にまわってみる。
なにか、魚、よいものがないか、と。
と、ぎんぽう。
さばいたもの。
漢字で書くと、銀方。
ぎんぽ、でもよいのだろうが、今回は、パックの
名前に合わせて、ぎんぽう、で行ってみよう。
と、書いてきたが、この魚、ご存知の方は少ないかもしれぬ。
天ぷらの種。
それも江戸前の。
この時期のものだが、
東京の天ぷらやでもほぼ見ないのではなかろうか。
なんで知ったのか。落語である。
小三治師の「道具屋」だったと思う。テープである。
「道具屋」は柳派では、かなり基本的な噺だと思うが
他の人のものではぎんぽうは、出てこない。
与太郎が道具屋の露店を道端に広げ、まわりの風景を独り言で
描写する件(くだり)がある。
ここに、天ぷらの屋台があり、客が、ぎんぽうを頼み、
食べている、というのを、与太郎に語らせている。
この音を随分前に聞いて、天ぷらのぎんぽう、とは、
どんなものであろうというのがずっと気になっていた。
そして2008年なのでもう、20年以上前になるのか、
吉池で、ぎんぽを初めて見つけた。
さばいていないもの。
こんな魚。20cmちょいくらいか。
知らなければ、かなり、グロイかもしれぬ。
小さなウツボのような。
種としては深海魚のゲンゲに近いとのこと。
だが、こいつは、日本中の磯にいるらしい。
江戸前種なので、東京湾にもたくさんいた(る?)わけである。
それでか、もともとはかなり安い魚。
それこそ、屋台の天ぷらやで普通にあるくらいの。
ただ、ぎんぽうはうなぎや穴子のように、
目に錐(きり)を打つ、目打ちをしないと開けないのである。
私は、これで初めて目打ちを合羽橋で買ってきてやってみたが、
まあ、初心者が簡単にできるようなものでもない。
散々なことになった。
安い魚だが、目打ちをしてまでさばかなければ
いけないので、手間はかなりかかる。
手間はかかるのだが、安いものなので、高くは出せない
のであろうか。使う天ぷら職人もいなくなっていった、
という話である。
で、今回は、開いたものがあったのである。
愛知産。2枚で580円。
吉池でも、開いたものは今回初めて見た。
最近も季節なので、丸のままのものは売られていた。
とにもかくにも、レアキャラである。
買わねば。
と、いうことで、今日は、天ぷら。
いかも買おう。
いかといえば、江戸前天ぷらではすみいか。
ここのところ、吉池ではすみいかがなぜかよく並んでいる。
この季節のすみいかは、産卵期。
大きくなっており、堅い。
それで、江戸前鮨やなどでは、普段使っている
すみいかではなく、白いか、あおりいかなどを
使うところも少なくない。
だから逆に、吉池に並んでいる、のか?。
さばいた白いか。これは長崎産。569円。そこそこである。
帰宅。
ぎんぽうはこんな感じ。
ちょっと光ってしまった。
白いか。
出してみる。
ぎんぽう。
こんな感じ。
やはりぬめりがあるので、塩もみ洗いを数回。
いかは五つに切っておく。
ぎんぽうは、一匹を半分に切る。
小麦粉をまぶし、
いかから揚げる。ちょっと久しぶりに動画。
ぎんぽうも揚がった。
まあ、かき揚げでなければ、ほぼ大丈夫。
白いか。
白いか、なのでうまい、、のではある。
が、続けて、揚げてしまったからか、熱が入りすぎか、
もう少し柔らかくできたかもしれぬ。
先に食べればよかった。
ぎんぽう。
こっちはよいぞ。
ふっくら。穴子とも違う。白身ではあるが、よいうまみと
香りがある。以前、自分で開いたものよりも格段にうまい。
この魚、足が速い。生けをおろしたものだったのかもしれぬ。
今日は、成功、で、ある。
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