断腸亭料理日記2020
1月3日(金)
さて、今年の初芝居。
今年も歌舞伎座と国立の二か所に行くことにした。
歌舞伎座は三日の昼。
国立は昼のみで、五日。
歌舞伎座の昼を選んだのは私の好きな黙阿弥の「河内山」が
あったから。
11時開演なので、9時半、着物を着て出かける。
いつもの青緑のお召し風紬にトンビのコート、マフラー。
白足袋に竹皮表の雪駄。
銀座線で稲荷町から銀座。
三越も開店前、木挽町[辨松]も休み。
弁当は中で買うことにする。
地下の売店でカツサンドを購入。
今日の席は、1階花道脇の前ブロックだが、最後方。
売り出しすぐにネットで買ったが、さすがに正月、
なかなかよい席は取れなかった。
演目と配役を例によって写しておく。
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昼の部
中内蝶二 作
今井豊茂 脚本
一、醍醐の花見(だいごのはなみ)
豊臣秀吉 梅玉
淀殿 福助
石田三成 勘九郎
智仁親王北の方 七之助
曽呂利新左衛門 種之助
大野治房 鷹之資
智仁親王 芝翫
北の政所 魁春
二、奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)
袖萩祭文
安倍貞任 芝翫
安倍宗任 勘九郎
八幡太郎義家 七之助
浜夕 笑三郎
平{仗直方 東蔵
袖萩 雀右衛門
福地桜痴 作
三、新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし)
太郎冠者 吉右衛門
大名某 又五郎
太刀持鈍太郎 種之助
次郎冠者 鷹之資
三郎吾 吉之丞
姫御寮 雀右衛門
河竹黙阿弥 作
天衣紛上野初花
四、河内山(こうちやま)
松江邸広間より玄関先まで
河内山宗俊 白鸚
松江出雲守 芝翫
宮崎数馬 高麗蔵
腰元浪路 笑也
北村大膳 錦吾
高木小左衛門 歌六
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正月なので、一つのお話を最初から最後まで演る通し、
ではなく、様々な芝居のいいところだけ演る、見取り狂言。
四番構成。
一番目「醍醐の花見」は舞踊劇といっている。
慶長3年(1598年)秀吉の晩年といってよい頃の京伏見の
醍醐寺で行われた花見が題材であるが、これはお話らしい
お話はない。
桜満開の舞台にお堂の大きな建物とその下に床几。
秀吉がいて、北政所、智仁親王、智仁親王北の方、淀殿、
石田三成などが登場し、それぞれ、舞い踊る。
ちなみに智仁親王というのは、かの桂離宮を作った人。
初演は大正10年(1921年)、歌舞伎ではなく長唄の会。
これを2年前に歌舞伎座で改作をしかけられたものが
もとになっているとのこと。
魁春、勘九郎、七之助あたりが下の床几前で踊る。
難しいこともなく、正月らしい華やかな舞台でよい。
倒れて、昨年舞台復帰を果たした福助が淀殿。
ただ、淀殿は、智仁親王・芝翫と並んで、
幕開き後も堂上簾内(みすうち)。板付きといってよい
のであろう。
淀殿の立場、身分として秀吉は堂の下で、淀殿は堂の上で、
かつ簾内というのは、不自然な印象を否めない。
やはり、舞うのはもちろん、歩くのも困難なのか。
また、少ないが台詞もあるが、発音も少し難しそう。
残念である。
幕間に弁当。
大阪新世界の洋食やグリル[梵(ぼん)]の牛ヘレカツサンド。
有名店であるが、なぜ歌舞伎座地下の売店に入っているのか。
牛ヒレのカツサンドは、東京では珍しい。
さて、二番目。「奥州安達原」の「袖萩祭文(そではぎさいもん)」
これは17年11月、歌舞伎座で一度観ていた。
芝居の背景、初演などの詳細、考察は前に書いたものを
ご参照されたい。
主役は安倍貞任で芝翫。
芝翫という役者は、数年前、橋之助から襲名している。
イケメンで、奥さんはご存知の三田寛子さん。
大河「毛利元就」を演っていたり、TVタレント、俳優としては
私は好きな人である。
襲名中に、京都の芸妓さんとのスキャンダルなど出ている。
芝居にしても、この時の対応などどうも軽い印象が強かった。
だがやっと、というべきか、貞任はちょっと重みが出てきた。
(ちょっと太った?。)座頭役者としての重み、存在感は、
巧まずに出てこなければいけない。観客にはわかってしまう。
この人の場合、襲名興行も観たが、はったりというのか、
巧んでいるのが見えてしまってると感じるのであった。
今回それが多少よくなった、と。
今はこの人よりも年長の大看板の役者から、代替わりの
時代だといってよいのだろう。言葉はよくないが端境期、のような。
その上、兄の福助も倒れ、50代は少ない。これからの歌舞伎界で
年代的にもこの人が、看板を背負わなければどうしたって、
いけなかろう。健闘、精進を期待したい。
つづく
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