断腸亭料理日記2019
引き続き、志ん生師「らくだ」。
大家のところに酒と肴の要求。いやなら死人(しびと)にかんかんのうを
踊らせる、という脅し。ふざけるな。見てえもんだ。婆さんと二人で
退屈してる、と、大家。
屑や、帰ってくる。
丁の目の半次にいうと「そういったんだな。よし、わかった。
向こうを向け。」
らくだの死骸を屑やに背負わせる。
上方では、らくだのほっぺたが、屑やのほっぺたにくっつく、という
演出もある。
屑「食い付きゃぁしないでしょうね」
半「食い付きゃしねえ、くたばってるんだ。
さ、さ、行け!
ここか?
俺が開けたら、すっと入ってけ。
おう!、大家ってのはお前(めえ)か?!
らくだの死骸担ぎ込んできたからな、
今、かんかんのう踊らせてやるから、よく見てろ。」
大「ひゃぁ、、、婆さん、持ってきたよ。
冗談、いっちゃいけない。お前。
持って帰っとくれ。持って帰っとくれ。
酒と煮しめ、わかったよ。」
半「せっかくきたんだから、ちょいと躍らせろ」
大「やめてくれ、持ってっとくれ」
〜〜〜〜〜〜
志ん生の録音を二つ聞いたが、どちらも踊らせていない。
円生、談志は踊らせている。
円生版。
半「どこだ」
屑「ここ」
半「この家か。」
表の戸を開ける。
大家の家なので、いきなり座敷ではなく戸を開けると台所の土間で
さらに仕切りの障子があるという細かい設定。
半「竃(へっつい・かまどのこと)の脇に立てかけろ。
突っ張ってるから、ダイジョブだ。
立てかけとけ、っていってるんだよ。
俺がな、この仕切りの障子を開けるから、それを合図に、
かんかんのう歌え」
屑「冗談いっちゃぁ、いけませんよ。そんなの私歌えませんよ。」
半「歌えません、って!」
屑「だって、知らないんですよ」
半「この野郎。歌わねえと、蹴殺すぞ!」
屑「う、う、う、、、歌います」
半「よし。
いいか。開けるとたんに歌うんだ」
開ける。
半「そら!歌え!」
屑「かんかんのぉ〜〜〜、きゅー(の)れ(ん)す、、」
大「あ!、、いけない、お婆さん、ホントに持ってきたよ。
待ちな、てんだよ、逃げるんじゃないよ。」
屑「かんかんのぉ〜〜〜、、、」
大「歌うなよ、屑や。
お婆さん、逃げるんなら、俺も一緒に逃げるよ、不人情だな。
あ、わ、あ、あげます、あげます、今すぐにお届けをするから、
どうぞ、どうぞ、お引き取りを」
談志家元は円生版といってよいか。
〜〜〜〜〜〜
二人、戻ってくる。
半「死骸、土間へおっ放り出しとけ。
もう一軒行ってくれ。」
また「釜のふたがあきません」「行け!」の一件(ひとくだり)またあって。
半「表の、八百屋行ってくれ」の指令。
早桶(棺桶)替わりの菜漬けの樽借りてこい。
「あいたら返してやるから、って」。
「貸すの貸さねえのいったら、、」「かんかんのうですか?」
「わかってきたじゃねぇか」。
八百屋にきてみると、やっぱりここでもらくだは酷かった。
金など払ったことがない。なんでもかんでも、持ってっちゃう。
樽はやれるわけがない。
屑「と、めんどくさいことになる」
八「なんだい、めんどくせえって」
屑「死骸のやり場がないから、担ぎ込んできて、かんかんのう
踊らするって」
八「なにぉ〜!、踊らせろぃ!」
屑「今、大家さんとこで、踊らせてきた」
〜〜〜〜〜〜〜
「こう、お座敷が増えたんじゃやりきれねえ」
「どっかでやってきたのか?」
「今、大家さんとこで」
と演るのが、一般的。
〜〜〜〜〜〜〜
そりゃ、たまらねえ、と、樽と、縄、差し担いにするための
竹の棒も貸してくれる。
借りて屑や、戻る。
と、ご苦労だったな、と丁の目の半次。
お前(め)えの留守にお蔭で、月番から香典と大家から、
酒と煮しめが届いている。
仕事に行く前に、死人背負って身体が穢れているから、一杯
ひっかけていけ、といわれるが、屑やは、お酒は勘弁してくれと、
断る。呑めないわけじゃないが、仕事にならなくなるから。
呑め、呑めないのやっぱり押し問答があって、やっぱり
脅されて、一杯呑む。
屑や、いい呑みっぷりで一気に呑む。
あんまりいい呑みっぷりなので「なんだ、呑めるんじゃねえか。
一杯、ってのはねえ。一膳飯もよくねえ。もう一杯呑め。」
また押し問答するが、もう一杯呑む。
「駆け付け三杯、っていうだろう。
もう一杯だけ呑め。」
「なん度もいわせるなよ。」、と、脅され、屑や、呑む。
呑んでいるうちに、段々、酔ってくる。
もちろん、段々酔ってくるように演じるのである。
これは談志家元が定評がある。
円生師、志ん生師とくらべても確かに談志師の方が
ここは上手い。
つづく
断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5
|
2004 リスト6
|2004
リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10
|
2004
リスト11 | 2004 リスト12
|2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005
リスト15
2005
リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20
|
2005
リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006
6月
2006 7月 |
2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006
12月
2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |
2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月
2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月
2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |
2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |
2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |
2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |
2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |
2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |
2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |
2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |
2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月
2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |
2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |
2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |
2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |
2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017
1月 |
2017 2月 |
2017 3月
| 2017 4月 | 2017
5月 | 2017 6月 | 2017
7月 | 2017 8月 | 2017
9月 |
2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |
2018 5月 |
2018 6月|
2018 7月|
2018 8月|
2018 9月|
2018 10月|
2018 11月|
2018 12月|
(C)DANCHOUTEI 2019