断腸亭料理日記2019

浅草・弁天山美家古寿司 その2

引き続き、浅草[弁天山美家古寿司]。

にぎり。

光物。

光物は、大好物。
あるものは全部頼んでしまう。

鰺、小肌、きす。

鰺。

完全な生、ではない。
酢洗いをしてある。
江戸前の古い技であるが、
今は、生でよいのではなかろうか。
赤酢で自分でにぎったが、赤酢であれば、完全に〆る、
あるいは酢洗いがよいか。

小肌。

半身。
ここの小肌は比較的ノーマルなのではなかろうか。
きちんと〆っている。

有名店で、あえてであろうが浅く〆ているところがあるが
あれは、私はだめである。
やはり生ぐさかろう。

きす。

きすといえば、だいたいは天ぷらであろう。
今もきすは、東京湾でたくさん獲れる。
この店の系統など、江戸前を看板にするところは、
きすを〆てにぎる。
きすというのは、生では、生ぐさく食べられないが、
〆れば食べられる。
淡泊な魚であるが、うまいものである。
なぜ、他の鮨やではにぎらないのか。
以前は、定番であったものだったと思われる。
そうむずかしいものではないと思うが。

まぐろ、中トロとヅケ。

ヅケというのは、ご存知の通り、赤身のしょうゆ漬けである。
ヅケと親方に頼んだら、一瞬間があった。

そうである。今、ヅケはあたり前でそれこそ回転寿司にも
あるのではないかと思う。だが、30年ほど前であろうか、
私が自分の金で鮨を食べるようになった頃には、まだどこにでも
あるものではなかったと思う。その頃、ヅケという言葉は
あったが、漬けていない赤身もヅケと言っていた。

親方の一瞬の間は、どちらなのか、ということ。
しょうゆ漬けは、日持ちをさせるための古い技術であったが
一度影が薄くなった時期があり、うまいものであるという
ことが再発見され、よみがえった種であろう。

硝子ケースの中に珍しいものがあったので、
もらった。

かじきと、ぶり。

向こう側がかじきで、手前がぶり。

かじきは昆布〆。
ここでもいつもある種ではなかったと思うが、これもうまい。
昆布〆とかじきの好きな、北陸にもあったような気がする。
かじきなども水分が抜け、ねっとりとし、うまいのである。

問題(?)はぶり。

うまい。

聞いたのだが、なにもしてません、と、親方も若親方もいう。
秘密、、、なのか、、?。

やはり水分は抜けている。完全な生ではない。
ケースの中のサクを見ると、明らかに普通のぶりの姿ではない。

海老。

撮り忘れてしまったので、尻尾だけ。

ここのは少し大きめのサイマキ海老。車海老である。
甘酢漬け。これが古い技。わざわざゆで立てをにぎるところもある。
おそらくそれがベストなのであろう。
一般には茹でたものも流通し、それをにぎるところも
少なくない。この甘酢漬けはずっとうまい。

内儀(かみ)さんの希望で、いつも頼むが、おぼろと
玉子焼きの海苔巻き。

おぼろも江戸前の古い技術。
白身などを鍋で熱をかけて叩き身をほぐし、
甘く味を付けたもの。
私たちの子供の頃には、ピンク色の甘いデンブというのが
弁当やら、ご飯のお供によく出ていたが、あれが近いもの。

おぼろ自体はデンブほどは甘くはない。
小肌や海老のにぎりにはさんでにぎったりするが
気が利いたものである。

ここまできたら、お仕舞なのだが、一つ、忘れていた。

貝。
私はあまり貝類はプライオリティーは高くないのだが、
これは食べたい。

煮はま。

大きい。

甘くてうまいもんである。

やはり江戸前のにぎり鮨を代表する種であろう。
だが、これを置いているところはまあ少ない。

蛤自体、東京湾では流通するほどは獲れない。
今は、茨城の鹿島灘あたり、伊勢湾あたりか。
そしてこれくらい大きいものは、かなりの高価である。

煮蛤であるが、実際は今は煮てはいない。
火を通したものをつゆに漬け込み、味を付けている。
つまり、漬け込み蛤。

こんなところで終了。
うまかった。

勘定はビール二本、二人で21,000円ほど。
こんなものであろう。

ご馳走様でした。

 

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

 

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