断腸亭料理日記2017
夏休みのモルディブを書いている間に
食べたものをちょっとだけ。
まずは、8月28日。
御徒町の吉池で見つけた、生のやりいか。
いかは最近、函館などでするめいかの極端な不漁などが報道されているが
それ以外のいかも全般的に高めではなかろうか。
やりいかは茹でて、甘いたれをかけて食べる、
江戸前鮨や式。
内儀(かみ)さんも好きで最近、これにはまっている。
ただ、生のやりいかもいつもあるというわけでもなく、
値段も安くない。
1パック、小さなもの4〜5杯か、300〜400円。
2パック買ってしまおう。
やりいかというのはどんないかなのか。
あまり今まで意識していなかった。
東京の江戸前鮨やでは今は、いかといえば、生のすみいか、
と決まっている。
ちょうど夏の終わりの今は、生まれてしばらくたった
小さなすみいかが、新いかという名前で、鮨やに並ぶ。
とても柔らかく、香りもよく格別なものである
それで私も、魚やですみいかを見つけると食指が動く。
すみいかは今はさすがに流通はしていないと思うが、
昔から東京湾にいたし今もわずかかもしれぬが、いる。
文字通り、江戸前のいかといってよいのであろう。
ただ、東京の江戸前鮨でも、いかを生で食べるようになったのは
明治になってからという。
それ以前は、火を通した煮いか。
江戸末、文化文政のにぎり鮨が生まれた頃には既にあった。
これがやりいか。
今も、出す鮨やもあるが、印籠(いんろう)といって
酢飯をボイルしたやりいかの胴に詰めたもの。
こんなものが当時の鮨を描いた浮世絵にも出てくる。
ほとんどのいかが、火を通すと堅くなるのに対して
なぜか、やりいかは柔らかい。
これがやりいかのポイントである。
また、鮨やの符丁でツメといっている甘いたれとの相性も
抜群によい。
今はわからぬが、すみいか同様、やりいかも、
以前は江戸湾にもいたのであろう。
どうしても鮨やでいかといえば、生のもの、特に東京では
すみいかで、火を通したやりいかは、地味であるし、
置かない鮨やも多いが、私は、贔屓をしたい。
生のやりいかがあれば、茹でて甘いたれをかけるだけ、
かなり簡単である。
そんなことで、このところ甘いたれをかけて食べる
茹でたやりいかに執心しているのである。
やりいかは、すみいか同様、一年しか生きない。
夏前に産卵するので今は、まだ小さい。
大きくなった冬が旬で春には子持ちになり、これも珍重される。
ともあれ。
やりいかは、洗って下足を引っ張り、はらわたから引き抜く。
下足の目玉から上を切って、下足としてスタンバイ。
あとは茹でるだけ、なのであるが、今日はこの茹で汁で
甘いたれ、いうところのツメを作ろう。
拙亭には煮穴子の煮汁を煮詰めたタレは常備しているので
これでもよいのだが、以前の鮨やでは、穴子は穴子、
やりいかはやりいか、蛤は蛤と、そのものの煮汁を味付けし、
煮詰めてたれとして使い分けていたという。
これをやってみようということ。
煮詰めやすいように、テフロンのフライパンに水を張って
やりいかを入れ、煮立てる。
火が通ったら、いかは上げる。
茹で汁に酒、砂糖、しょうゆを入れて、煮詰める。
プロでは味醂を入れるのもあるようである。
ただ、穴子を煮る場合、味醂を入れると堅くなる。
それで入れないのがセオリーであると思われる。
その場合は煮あがって、煮詰める時に味醂を入れるのがよいのか。
さて。
煮詰めれば、基本トロトロのたれになるのだが、
これが意外にむずかしい。
いつも、計量はしていないので、毎回勘だけ。
砂糖が少ないと、なかなかトロトロにならないし、多すぎても
煮汁の旨みを消してしまう。
また、しょうゆの量も問題。バランスなのであるが、
多すぎても塩味が強すぎて、うまくない。
味見をしながら、灰汁をすくいながら、煮詰める。
やはりプロでは一日かけてゆっくり煮詰めるというのもある。
これが本当なのかもしれぬ。
だが、そんな時間はないので、私の場合、穴子の場合でも強火で
一気に煮立てて水分を飛ばしている。まあ、風味が飛んでしまいがちという
ことがあるかもしれぬ。
この煮詰める時に、表面積の広いフライパンだと早いのである。
その上、テフロンであればベトベトのタレを洗うのにも
有利である。
20分くらいかかったか。
煮詰まった。
皿にのせて、たれをかける。
たれ。
甘いたれ、にはなっている。
ただ、煮穴子であれば比較的風味が強いのでまだよいのかもしれぬが
今回のやりいか、やりいからしい風味が飛んでいるような、、、。
これであれば、わざわざやりいかの煮汁で作らなくても
穴子のものを使ったものでよかったかも。
確かに、よい鮨やのツメの味、まあ、香り、には、
独特の、ツーンと鼻をつくうまそうなものがある。
だがまあ、御の字。
やりいか自体はうまいし、巨匠ではなし、
よしとしよう。
断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5
|
2004 リスト6
|2004
リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10
|
2004
リスト11 | 2004 リスト12
|2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005
リスト15
2005
リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20
|
2005
リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006
6月
2006 7月 |
2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006
12月
2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |
2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月
2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月
2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |
2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |
2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |
2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |
2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |
2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |
2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |
2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |
2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月
2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |
2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |
2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |
2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |
2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017
1月 |
2017 2月 |
2017 3月
| 2017 4月 | 2017
5月 | 2017 6月 | 2017
7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |
(C)DANCHOUTEI 2017