断腸亭料理日記2017

2017年秋 秋刀魚

10月7日(土)夜〜

さて。

秋刀魚、で、ある。

今年も、というべきか、より、なのか、
不漁が伝えられて、吉池に並んでも、
解凍ものの方が、おすすめになっていたり。

困ったもの、だとは思うのだが、そんな時に
無理をして食べなくともよい、とも考えて
今年はまだ買ってはいなかった。

今日、上野の山探索から、
いつものアメ横の安売りの魚やをまわってみると
秋刀魚を見つけた。

この店お馴染みの一山500円。
10本以上はありそうである。

試しに買ってみようか。

それから。

珍しい。
やりいかもあった。やっぱり500円。
これも。

大根は、ハナマサ。

安い、一本、100円。
いつも通り、スーパーで切ったものにしようかと
思っていたが、これでよいか。
あまったら煮物にでもしよう。

秋刀魚、一本。

見た目にも小さくて、細い。

まずは塩焼き。

大根をおろして、秋刀魚は半分に切って
ガスのグリルで焼く。

案の定、ほぼ脂はない。

だが、秋刀魚というのは、不思議なものである。
大根おろしとしょうゆで食べれば、
これはこれで、うまい。

さて、あとはどうやって食べようか。
まだまだある。

秋刀魚飯もあるが、蒲焼のようなものに
してみようか。

翌朝。

二枚から、中骨も取る。
さらに半分。

三本分。

開いた生を見ると、やはり脂がないのが
よくわかる。

フライパンに並べ、焼く。

ひっくり返して、

ここに、そのまま、しょうゆ、酒、砂糖。
煮詰める。

蒲焼というよりは、まあ、照り煮、か。

こうしても、脂がない秋刀魚も、うまい。

缶詰に、秋刀魚の蒲焼というのがあるが
あれはうまいものである。
好物といってよいだろう。
見かけると、必ず買ってしまう。

さて、残りは、秋刀魚飯。

白焼きにしてしょうゆ味で炊き込む。

米を研ぎ、酒と少し濃いめにしょうゆ味で
水加減する。
酒が入ると、浸水が遅いので、3時間以上。

はらわたを出し、半分に切って塩をせずに
白焼き、素焼にする。

よく浸水した米の上にのせ、
そのままそのまま、炊く。
電気炊飯器、で、ある。

炊きあがり。

一度、秋刀魚を取り出して、中骨を取り
身をほぐす。

再び、釜に戻して混ぜ込む。

もみ海苔を散らす。

それなりに、まあ食べられないことはないが、
脂がほぼないので、焼いて、炊き込んでしまうと
秋刀魚そのものはスカスカ。

やはり秋刀魚飯は、脂がたっぷりとのった
以前の我々が知っている、秋刀魚でこそのもの
であった。

残念、で、ある。

気候の変化、海洋条件の変化もあろうし、
中国、台湾などの大型船による、大量漁獲。

様々な要因がある、のであろう。

秋刀魚を食べないと、生きていけない
というわけではないが、やはり、このままでは
いけない。

7月に、日本、中国、韓国、米、ロ、台湾など関係国・
地域が参加する北太平洋漁業委員会(NPFC)で
秋刀魚の漁獲制限を日本が提案したが、中国などの
反対で合意ができなかったと聞く。

食文化を自らのアイデンティティーと考える
ヨーロッパなどではこんなことは考えられないこと
ではなかろうか。秋の秋刀魚は食料でもあるが、
我が国の食文化の重要な一つである。
落語「目黒の秋刀魚」の例を引くまでもなく、
北海道から三陸、関東、紀伊半島あたりまでの
太平洋岸に住む日本人の庶民が長年食べてきた
安くてうまい秋を代表する味覚である。
私達、これらの地域に住んでいる者の食文化にとって、
決してなくしてはならないものだと思うのである。

食料でもあるが、食文化の側面からうまい秋刀魚を
復活させることを考え、また、訴えるべきではなかろうか。





 


    

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