断腸亭料理日記2017

国立劇場3月歌舞伎公演・

伊賀越道中双六 その1

3月20日(月)春分の日

今日は正月以来の歌舞伎見物。

歌舞伎座ではなく国立。

「伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」の通し。
中村吉右衛門、尾上菊之助、中村錦之助、中村歌六、中村米吉、、。

むろん吉右衛門が座長格であろう。

「伊賀越道中双六」というのはあまり上演されていないように
思うのだが、私としては宿題にしていた芝居。

人形浄瑠璃から歌舞伎に移された、丸本物でよいのか。

かの荒木又右衛門の伊賀上野での仇討を扱った作品。
「決闘鍵屋の辻」なんという名前で映画や時代劇にも
多くなっている。

「荒木又右衛門」は池波先生の師匠にあたる長谷川伸氏の
代表作といってよろしかろう。

まあ、これだけいわくあると、やはり見ておかねばならない
ということになろう。

12時開演なので、着物に着替えて、11時に家を出る。
着物は暮れに買って正月も着ていた青竹色の紬。

大江戸線で春日。春日から三田線で神保町。
神保町からはタクシー。

切符を引き上げて、入る。

弁当とビールを買って席に。

今回は、ちょっと出遅れてしまい、
1階最後列。
ただし、花道の脇。
これはまだよい。

幕が開く。

幕構成と主な配役を写しておく。

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近松半二ほか=作

国立劇場文芸研究会=補綴

通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)五幕七場


序  幕 相州鎌倉 和田行家屋敷の場

二幕目 相州鎌倉 円覚寺方丈の場

      同          門外の場

三幕目 三州藤川 新関の場

      同         裏手竹藪の場

四幕目 三州岡崎 山田幸兵衛住家の場

大  詰 伊賀上野 敵討の場

(主な配役)

唐木政右衛門            中 村 吉右衛門

山田幸兵衛              中 村 歌  六

佐々木丹右衛門・奴助平     中 村 又 五 郎

和田志津馬              尾 上 菊 之 助

近藤野守之助            中 村 歌  昇

捕手頭稲垣半七郎・石留武助  中 村 種 之 助

幸兵衛娘お袖            中 村 米  吉

池添孫八               中 村 隼  人

沢井城五郎・夜回り時六      中 村 吉 之 丞

和田行家               嵐   橘 三 郎

沢井股五郎              中 村 錦 之 助

政右衛門女房お谷         中 村 雀右衛門

幸兵衛女房おつや         中 村 東  蔵

                               ほか

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人形浄瑠璃としての初演は天明3年(1783年)、大坂竹本座。
歌舞伎に移されたのはこの年の9月だそうな。
(もっとも、人形浄瑠璃も元は歌舞伎の台本とのこと。)

ちなみに、この天明3年の7月に浅間山で
大噴火があったようである。

天明というのは寛政の前。
将軍は家治。
寛政は、松平定信の改革の時代になるが、
その前の、かの田沼時代、で、ある。

幕末まではまだ84年ある。

歌舞伎でいえば、鶴屋南北が文化文政でもう少し後。
そして、黙阿弥がさらに後の幕末から明治。

あるいは、人形浄瑠璃から歌舞伎に移された有名丸本物三作、
「忠臣蔵」「菅原伝授」「義経千本桜」は1746年前後で
この作品よりも30〜40年前。

これらは上方で作られ、ある種の共通する色を持っていると
私は考えている。

歌舞伎(人形浄瑠璃も含めた)作品、作風の
流れのようなものを考えると、江戸において町人文化が花開いた、
文化文政の南北作品群があり、それを受けて、より深い人間を
描いた黙阿弥作品群があると私は考えている。
そこに至る前であり、どちらかといえば、
先の丸本物三作に近いといってよいのかもしれぬ。

今回の芝居は通しといっているが、文字通りのお話すべてを
“通す”ものではない。
まあ、浄瑠璃が原作というのは、ほとんどがそのようだが、
おっそろしく、長い。
この「伊賀越」もちゃんとやると、二日は楽にかかる長さだという。

今回の目玉は四幕目の「三州岡崎 山田幸兵衛住家の場」。
(住家はスミカと読む。浄瑠璃ではよく使われる言葉である。)

この幕は『義太夫狂言の名場面といわれながら
戦後の上演が二回しかなかった「岡崎」(山田幸兵衛住家)。
平成26年(2014)12月国立劇場で、44年ぶりに
待望の上演が実現しました。』と国立劇場の説明にはある。

そしてこの時「読売演劇大賞」大賞・最優秀作品賞を受賞したという。
(主演は今回と同じ吉右衛門。)

で、その再演ということらしい。

また「伊賀越」を歌舞伎座などで演る場合には、
例の人気の幕だけやる、見取狂言では「沼津」という幕だそうで、
今回はこれは演らない。
まあ、これは長すぎるからということではあろう。





伊賀越道中双六 明治六酉年 豊原国周筆 和田下部武助 市川左団次



 

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