断腸亭料理日記2017

天ぷら・蔵前いせや・出前

6月18日(日)夜

日曜夜。

天ぷらの蔵前[いせや]の出前を取ることにした。

なんだか蔵前シリーズのようであるが
店のあるところの町名は蔵前だが四丁目で春日通り沿い。



例の旧町でいえば、三桂町。
蔵前というには多少違和感がある場所。

だいたいにおいて、今、蔵前という町名は広い。
広すぎる。
一丁目から四丁目まで。

江戸の地図を出してしまおう。

ついでに、以前の「下町歩き」の講座の蔵前編も。

昔の蔵前については詳しく書いている。

今さらだが、蔵前というのは、江戸の頃、
幕府の米蔵、浅草御蔵があり、その前の町、なので
蔵前なのである。上の地図で御蔵前片町が本来の蔵前で、
大通り沿いの小さな町。

その昔は、浅草御蔵の米を受け取り、持ち主である
旗本に現金化して渡していた、札差という業態の
大店が大通り沿いの片側、先の御蔵前片町をはじめ、森田町、
元旅篭町などに軒を連ねていたわけである。

江戸でも指折りの金がうなっていた町。

今は、蔵前は一丁目と二丁目の大半が元の浅草御蔵そのもの。

三丁目はその西側で、旧元旅篭町や蔵前八幡で、国際通りと
春日通り、蔵前通り(現江戸通り)の三角地帯。
文字通りの意味でいう蔵前はここになるだろうか。

四丁目は三丁目の西隣、新堀通りまで。
ここまでくるとほぼ以前の蔵前ではない。

明治以降、むろん江戸幕府の瓦解とともに、
金がうなっていた大金持ちの町は、消えてなくなる。
それ以降は、前に書いたように、玩具、雑貨などなどの
問屋の町になっていったといってよいのであろう。

ともあれ。

天ぷらの蔵前[いせや]。

ここは吉原大門前の名物天ぷらや、土手の[伊勢屋]の分かれ。
(先代、先々代あたりであろうか、ご兄弟が独立したという。)

随分以前に、二階で私の拙い落語会を
開かせていただいたこともある。

また、天サンドといって、
海老天ぷらをパンにはさんだものもここの
名物で、忘れてはいけない。

なぜかうちの内儀(かみ)さんが好きで
隅田川の花火大会の日には必ず買ってくる。

ここは、なんといっても正統派スタイルの江戸前天ぷら。

お塩でどうぞ、という手合いではない。
どちらかといえば、天丼や天重がわかりやすいが、
甘辛の濃い味のもの。

天重二つと、今日は天ぷらだけも頼んでみた。

夕方5時の開店とすぐにTELをしたので、
すぐにきた。

天ぷらだけのものも、お重に入ってきた。

海老天ときす、ピーマン、茄子。

こっちが天重。

ついている天つゆは、東京でも一般的な薄味ではなく、
ほぼ丼つゆに近い、甘辛。

お新香と、甘辛の丼つゆ味がついた、天かすも。

お重の方は、さいまき海老天とかき揚げ。
かき揚げの中身は、芝海老。

とにかく、濃い。

全部濃い。

濃くてうまい。

古い東京、江戸前の天ぷらは
丼でなくても甘辛い濃いつゆで食べていた?。
少なくとも、ここではそうであった、のであろうし
今もそう。

薄衣で中は半生、お塩でどうぞ、の天ぷらは、
今は東京のほとんどの天ぷらやのスタイル。
これは江戸前天ぷらの進化した姿なのかもしれぬ。
むろん、これはうまい。

しかし。

濃い甘辛、これもうまい。

私には故郷、東京下町の味、で、ある。





蔵前いせや
台東区蔵前4-37-9
03-3866-5870


 

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