断腸亭料理日記2017
6月7日(水)
今日は一日休みを取り、家の用のための
各所、外回り。
朝飯は、近所、小島町の路麺[アヅマ]
。
毎度書いているが、路麺というのは(造語で私しか使っていない
と思われるが)独立系の立ち喰いそばのこと。
台東区、浅草、下谷には数多くの路麺があるが、
中でも元浅草の拙亭に最も近い店。
春日通りと清洲橋通りの交差点角にある。
気温が上がってくると、冷やしの季節。
ここはちょっと割増になるが、冷やしのぶっかけも
食べられる。
冷やしたぬき、あるいは、名古屋地方でよく食べられている、
うどんの“コロ”の要領で、冷たいつゆでおろし、さらに天ぷらを入れる
というのもありだが、おろしだけにしてもらった。
細長い海老天のようなものや、かき揚げでも軽めに揚げられたものは
つゆが染みやすく、向くのだが、ここのゴロっとしたかき揚げは
冷たいつゆでは若干食べずらい。
大きなチューブのわさびも一緒に置かれる。
おろしも、おろしたて、というわけにはいかぬが、
存外ちゃんとしている。
立ち喰いそばとなると、初夏が近づくと足が遠のきがちだが
最近は駅そばでも冷やしのぶっかけなどに対応している
ところもあるので、ちょいとよい。
ザラっと腹に流し込む。
さて、昼飯。
ちょうど時分時(じぶんどき)、池袋のサンシャイン60通りを
歩いていた。
ん!。
[桂花]があった。
[桂花]ラーメンというのをご存知の方は
この文章を読んでいただいている方ではどのくらい
おられるのであろうか。
一般に東京の話題のラーメンといって、
ランキングなどに登場するようなところではないだろう。
熊本ラーメン。
昭和30年、熊本で創業。
昭和43年、新宿末広店(新宿三丁目)開店。
昭和47年、新宿東口駅前店開店。
東京での九州ラーメン、とんこつラーメンの先駆け、
草分けといってよいのではなかろうか。
私が行き始めたのは高校時代なので
37〜8年前。
新宿が通学経路で、西武新宿から丸ノ内線に乗り換えるので
ちょうどアルタ裏、[桂花]の店の前を通っていたのである。
この頃はまだ、ラーメンブームというものが
始る前であったろう。
とんこつといえば博多であるがまだそれも
東京には入ってくる前であろう。
熊本のラーメンがみな[桂花]のようではない
ということを聞いたことがあるが、かなり濃い白濁した
スープで白というよりも黄色に近い色で、マー油という
赤茶けた脂が浮いてる。麺も堅め。
これが食べ始めると、妙にクセになる。
とんこつラーメン、あるいは熊本ラーメンというよりも
私には東京のしょうゆラーメン以外のラーメンの原体験のような
位置付けになっていったようである。
太肉(ターロー)という角煮と生キャベツののったものが
以前は定番であったが、軽くノーマルな桂花ラーメン。
煮玉子、チャーシュー、茎わかめ。
スープはただのとんこつではなく、「豚骨鶏がら白湯(パイタン)」
といっている。
以前からそうだったのであろう。別段味は変わってはいないはず。
これに赤黒く浮いている油がマー油。
馬油(マー油)、馬の脂、かと思ったら、左に非ず。
[桂花]オリジナルのネーミング。
焦がした(?)にんにくを主とした香味油。
スープとこのマー油の組み合わせがクセになる素
なのであろう。
熱いこのスープを飲めば、腹に染み渡る。
その後、このマー油に近いものはいろいろな店で
出会うことになった。
また、当時は堅い茹で上がりの麺も東京では珍しかったが
これも圧倒的な個性に感じられた。
茎わかめも、他ではあまりラーメンの具としては
使われぬもので、あの食感が忘れられなくなった。
〆て、私にとってはいつ食べても、安心できる、
うまいうまい超定番のラーメンになっているのである。
上野、浅草が地元になった今、新宿などには
あまり行かなくなってしまったが、無性に食べたくなることが
ある。
そして、こうして見かけると、飛び込んでしまう。
競争激しい東京でも長く、長く営業を続けているのは
東京生まれのラーメン店でもそうは多くはない。
もちろん、この店の様々な経営努力というのもあるのだろうし、
真似されても、生き残るだけのオリジナリティーと気迫のようなものが
あの一杯には確かにあるのであろう。
ご馳走様でした。
おいしかったです。
小島町・アヅマ
台東区小島2-20-6
桂花ラーメン
・池袋サンシャイン60通り店
豊島区東池袋1-22-13第5中村ビル1F
03(3981)1871
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