断腸亭料理日記2017
7月31日(月)夜
暑い。
今日などは日中、二回も炎天下の外出をしていたので、
途中、熱中症ぎみになってしまった。
日も出ていたが、やはり湿度が高いのであろう。
夕方にはもうくたくた、で、ある。
こんな時には、少し前から考えていたのは熱い担々麺。
先日の麻婆豆腐もよいのだが、もう一つ、担々麺も
忘れてはいけない。
私の行動範囲では、担々麺は湯島天神下の[阿吽]。
ここはかなりの列にもなる。
この支店が浅草の田原町にある。
どちらも近所ではあるが、田原町の方がすいているので、
よくきている。
田原町というのは銀座線の浅草から一つ目の駅。
田原町は、タワラチョウではなく、タワラマチ。
(この町名がマチなのかチョウなのかの話題。
前回、上記リンクページでちょっと考えている。
町人の町がチョウで、武家の町がマチという説がある。
これ、多少説得力があり、江戸期であればあてはまる例も
あるのだが、例外もたくさんある。
例えば、御徒町はマチで徒=歩兵が住んでいた武家の町。
しかし、田原町はマチだが武家の町ではない。
あるいは、芝、浅草、市谷などいくつもあるが、田町。
これも、必ずしも武家の町ではないがマチである。
ある程度原則はあったかもしれぬが、なにか個別の理由で長年
呼び習わされたと考えるのが自然ではなかろうか、というのが
今の私の考えである。)
ともあれ。
田原町交差点の北西側、一本目の通りを左に入った左側。
カウンターだけだが、湯島の本店と比べても
かなり狭い店。
7時すぎ到着。
列はなく、先客は一瞬私よりも先に入った、若いサラリーマン一人。
券売機で食券を買う。
黒ごまだの、汁なしなどあるが、ノーマルな担々麺。
辛さが選べるが、3がこの店のノーマル。
そして、3までは同じ値段。
この上、6まである。
カウンターに掛けて食券を出す。
この時に辛さを聞かれる。
「3」。
以前に「4」を食べたが、これでも既に相当辛い。
はねないように、紙エプロンをもらう。
きた。
のっているのは、挽肉と揚げたと思われる海老、
青味は水菜。
挽肉などの上に花椒がまぶされている。
スープの上はラー油でその下が、白胡麻のスープ。
食べる。
スープのごまはかなり濃厚、
かなりの量のごまペーストを使っているのではなかろうか。
麺は丸麺で気持ち細め。
ノーマルな辛さ3でも、辛みも花椒の麻(マー)も
かなり強い。
素揚げなのか、小海老は単なる具なのか、だしかなにか
使ったあと、なのかよくわからぬが、ちょっと
気になる存在である。
前にも書いているが、かなり細やかな神経を使って
味の設計がされている担々麺、で、ある。
汗だくになって食べ終わる。
さて。
担々麺というもの。
これも麻婆豆腐同様、日本人の好きな四川料理なのであろう。
ただ、やっぱり様々な担々麺がある。
中国四川でも、あまり私自身は知らないが、ほぼラー油だけの
和えそばもあるというし、日本で一般的な甜麺醤で味を付けた
豚挽肉と白胡麻ペースト、芝麻醤の入るものもあるのであろう。
担々麺も、麻婆豆腐同様に日本で発達、そして
この店のようなところで洗練されていった
麺料理、ということができるのではなかろうか。
元来麻婆豆腐にしてもそうなのだが、日本人は唐辛子の
辛さというのはあまり得意ではなかったはずである。
インド風のカレーもそうだが、我々の学生時代、30年ほど前
あたりからか徐々に辛いものが流行り始め、舌が慣れ、
皆が食べられるようになっていった。
そしてステップとしてはメニューが一般化した後、そう、
ここ15年くらいのことであろうと思うが、唐辛子の辣だけでなく、
花椒のシビレ、麻も知られるようになり、この麻と辣の刺激による
ある種の快感を知るようになった。
これが今ということになる。
しかし、四川料理といってももっとたくさんのメニューがあるのだろうし
中国でもこれだけ取り上げて、メジャーなメニューではないのでは
なかろう。なぜ麻婆と担々麺だけわが国で愛されているのか。
それこそ日本における四川料理の草分けである、陳建民氏が
日本人の口に合うようにアレンジし、広めたという下地があった。
キーワードは豆腐と胡麻であろうか。
どちらも日本人にはベーシックなもので、
馴染みやすかったということか。
それがさらに麻婆は様々なアレンジがされ、担々麺の方は
洗練させていった。
そもそもラーメン自体がそうであった。
入ってきたものをアレンジ、加工、進化、洗練させていく。
おもしろい食文化であろう。
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