断腸亭料理日記2016

台抜き 大阪・船場・旬菜庵やなぎ

2月12日(金)昼

一日休みで、金曜は大阪出張。

昼を、淀屋橋あたりで食べる。

大阪出張の際、このあたりで昼飯となると、
洋食やというのか、定食やというのか、
東京でいえば[キッチンカロリー]同じく[南海]といった
昭和の香り漂うサラリーマン御用達の店[ニューハマヤ北浜店]
というのが私には決まりになっている。

今日はちょっと目先を替えよう。

温かいものがいいな。

続くようだが、うどん。

腰のある讃岐もよいが、柔らかい大阪風のうどんも
私はきらいではない。

ちょっと調べてみると、大正創業の店がみつかった。

場所も[ニューハマヤ]の比較的近く。
かの緒方洪庵の旧蹟、適塾 やら、愛珠幼稚園 やら、江戸・明治の
建物が残る区画の南側。

なんでもここの初代考案の“台抜き”なるものが名物とのこと。

“台抜き”とはまあ、なんのことはないかつ煮のこと。

大阪では全般的にそういうのかというのどうかはわからぬ。
東京では“頭(あたま)”なんという言い方もをするが、
かつ丼のご飯抜きで、下のご飯がない、台がないということで、
台抜きというようである。

場所は今橋通と丼池(どぶいけ)筋の角。
(大阪では、南北が筋で東西は通、なのか。)

丼池でドブイケというのは関西の方には先刻ご承知なのであろうが、
やはり難読地名であろう。

丼池というのはここよりもずっと南の方の通のそばに
明治の初期まであった池の名前というのが由来らしい。

今橋通に面した明治の建築、大阪市立愛珠幼稚園の
正門前なのだが幼稚園は今は耐震工事中。

入ったのは1時すぎ。

時分時(じぶんどき)はすぎており、空席もある。
一人、というと通りに面したカウンターの席に案内される。

窓から幼稚園の門が見える。

基本はここうどんやさんなのであろう。
夜はうどんすきなどもあるよう。

当初の予定通り、台抜きの定食にせっかくなので
ちいさなうどんのついたセットにしてもらう。

すぐにきた。


ご飯はお替り可。

分かれている意味は、これである。

その昔、かつ丼は界隈のお店の丁稚などにとっては
贅沢な食べ物で、丼一つではご飯は丼一杯分しかない。
せっかく食べるのだからご飯もたくさん食べられるようにと
分けて、ご飯のお替りもさせてあげた、というのが、
そもそもであるという。

この店では、このかつ煮自体も「かつ玉」と呼んで、
出汁やら、味付けやらが、なのか、特製とのこと。

なるほどかつがでかい。

食べててみると、味付けは、確かに大阪にしては濃いめ、
東京のような味である。
やっぱりこのくらい濃い方がかつ煮はうまかろう。

うどんは、大阪流の柔らかいもの。

さすがにこの年で、ご飯のお替りはやめよう。

ご馳走様でした。

勘定をして出る。

さて。

以前に、丼物の歴史を調べてみたことがあった。

主として、東京の、新聞に出てくる情報からいつ頃から
例えばうな丼があったのかなどを調べてみたわけである。

かつ丼は、一説には東京早稲田の蕎麦やが
大正10年(1921年)に始めたともいうが、
東京で一般化した(皆が知っている普通のメニューになった)のは
昭和のヒトケタ頃。

大阪ではどうなのか。

これが気になる。

東京で生まれたものが大阪にも伝わったのか。
同時発生的に生まれたのか。

東京だと現代では蕎麦やの定番メニューだが、
大阪には蕎麦やはほとんどなく、うどんや。
かつ丼も、うどんやに基本あるものなのか。

そもそも、東京ではそばや、ということに
限定しなくとも、とても一般的で、ベーシックであり
かつ、人気丼メニューであるが、大阪でもそうなのか。

なんだか疑問が一杯になってしまったわけだが、、、。

これには、ちょいと調べてみたらすぐに回答は見つかった。

どうもやはり、大阪のうどんやには、かつ丼はあるにはあるが
このように、ご飯と別にして、台抜き、かつ玉定食として
食べるのがどちらかといえば多い、らしい。
ついでに、台抜き、かつ玉も、大阪では一般的な呼び名のよう。
(大阪の方、合ってましょうか?。)

ここ[やなぎ]の創業は大正7年という。

かつ丼が東京で生まれる(?)少し前。
ちょうど、この店の創業初期に、東京ではかつ丼が
流行り、一般化していった。
同時発生かどうかはともかくとして、
昭和ヒトケタの頃大阪でも同時にかつ丼が一般化
していたことは想像できる。

そこで初代のご主人がこの“台抜き”サービスを
思い付かれた、まあ、そんなことではなかったのか。





06-6222-2123
大阪市中央区今橋3-2-16



 



 

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