断腸亭料理日記2016
4月27日(水)夜
さて。
水曜日。
今日も例によって、帰り道、御徒町の吉池に寄る。
8時も近い。
今日はちょっと軽いものにしようか。
一通り見てまわって、、、、。
白魚が半額。
そろそろ季節も終わり、なのか。
季節の縁起物のような魚ではあろう。
あまり応用がきかない。
その隣、生の桜海老。
生食用と書いてある。
これは珍しい。
静岡産。
由比町が有名であろう。
春と秋の二回漁期があった。
食べてみようか。
そして。
ん!。
小柱。
これは愛知産。
これもこのままつまんで、柱わさび、と、しようか。
柱わさびは、池之端の[藪蕎麦]で最も好きだった酒の肴。
夜の営業をやめてから、行けなくなってしまった。
よし。
わさびくらいは、本物を使おうか。
練りや、チューブではなく、本わさび。
桜海老と小柱を買って、地下へ移動。
野菜売り場で、本わさびを探す。
小さいものでむろんよかったのだが、
大きいものか、二本入りしかなく、どちらも680円。
完全に業務用である。
仕方がない。
二本入りを購入。
帰宅。
どちらも洗って、皿にのせるだけ。
柱わさびは、気は心、海苔を細く切って、散らす。
わさびは、サメ肌のわさびおろしもあるのだが、
おろし金の方が、辛くおろせるというのを聞いた。
確かに、プロは大きなおろし金でおろしている。
おろし金の細かい方でおろしてみる。
ん!。
なるほど。
おろしている最中から、目に染みるほど。
桜海老。
柱わさび。
やっぱり本わさびは違う。
辛みもさることながら、香り。
そして、意外かもしれぬが、あまみがある。
知り合いで、本わさびをなめながら酒を呑む人もいるくらいである。
桜海老はまあ、これも縁起ものか。
やはり、かき揚げなぞにした方がうまいであろう。
柱わさび。
いかにも、江戸前の酒の肴という顔をしているではないか。
小柱というのは、ご存知の通り青柳(ばか貝)の貝柱。
今でも浦安、木更津、富津など東京湾でも獲れており、
吉池などにも並ぶことがある。
[藪蕎麦]などでは内地産のものではなく、
北海道産の大粒のものを出していた。
むろん、そちらの方がうまいのだが、
今日なども吉池にはなかったし、値段も3倍くらいには
なろう。
しかし、あれだけ大きさが違えば、もはや別のもの
と、いった方がよいだろうし、本来の江戸前の酒の肴
というのであれば、内地産のものが正しい選択である。
こうしてそのまま柱わさび、天ぷらでかき揚げ。
まさしく大定番であろう。
にもこんな一節がある。
「できますものは、つゆ、はしら、鱈、昆布、鮟鱇のようなもの、
鰤にお芋に酢だこでございます、へぃ〜」(先代金馬師)
居酒屋の小僧がお客に、出来るものをいう件(くだり)。
(ちなみに森田芳光監督の映画「の・ようなもの」はこの件の
「鮟鱇のようなもの」からきている。)
ここに出てくる、はしらが、おそらく小柱。食べ方も
柱わさびではなかろうか。
小柱といわず、ハシラ。
上品でも珍しくないが、江戸前の肴である。
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