断腸亭料理日記2015

雷門・松喜の肉ですき焼き

9月21日(月)夜

さて。

今夜はすき焼き。

内儀(かみ)さんが、すき焼きにしようと、
浅草雷門の[松喜]で肉を買ってきた。

雷門通りにある牛肉店で、浅草界隈では名代。
そこそこよい肉が、割安。安売りの日には列にもなる。

このクラシックな紙の包みがよい。


そして、オリジナルの割り下。


便利だし、うまい。

もう一つ。これも欠かせない。


白滝。
むろん、ここは肉やなので、白滝は作っていないが
[松喜]に置いているものは細いもので、ちょっと珍しい。

これらは[松喜]には売っていないが、
この他に、焼き豆腐とねぎ。

さて。

[松喜]はレストランをやっていたこともあったが、
基本的には肉や、である。
それも牛肉をメインにした。
割り下や白滝も売っているくらいで“すき焼きシフト”
の肉やといってよかろう。

浅草というのは老舗のすき焼きやの多い町である。


[今半]がそれぞれ別の店で、本店、別館、浅草今半の三軒。
それから、雷門通りの[ちんや]。さらに[米久]。
([松喜]も肉やだが、すき焼きシフトの牛肉やである。)
五軒のうち三軒は同系だが、それでも五軒は多かろう。

これだけ老舗のすき焼きやが集まっている街も
東京でも珍しいのではなかろうか。

東京の古くからの盛り場、例えば、人形町、上野、銀座、
新橋、などみても老舗はこんなには集まっていない。

疑問に思って、調べてみていたら、
ちょっとおもしろいものを見つけた。

なにかというと浅草[ちんや]の六代目の旦那
住吉史彦氏が書かれていた、歴史などを含めた、
かなりしっかりしたすき焼きに関するレポート(講演録)を見つけた。
(この方は、1965年生まれで私よりは二つ下で
 まあ、同世代といってよかろう。)

これ、かなり興味深い。

毎度書いているが、食いものの歴史、食いものやの歴史というのは、
ちゃんとしたものは、ほとんどない、と、いってよい。

このレポートは老舗すき焼きやのご店主という立場で
かなり詳細に調べられているようで、信頼度は高そうである。

私も以前にすき焼きの歴史を推論を交えて
考えてみたことがある
が、わからないことも
多かった。

住吉史彦氏のレポートを読むと、推論を裏付けてくれて
いたところもありまた、その疑問に答えてくれてもいた。

最初の私の浅草にはすき焼きやが多い、ということの
答えは得られなかったが、東京の主だった老舗すき焼き店を
挙げられていた。

その中の浅草でないところを拾ってみた。
新橋[今朝」、小伝馬町[伊勢重]、湯島[江知勝]、
神田[いし橋」、銀座[吉澤]。
ほとんど知っているところであったが、よく調べてみると
銀座[吉澤]が昭和二年で、それ以外は、文明開化の頃
まだ牛鍋といっていた時代から続く、押しも押されぬ、大老舗。

しかし、やっぱり皆それぞれ、別の街である。
また、盛り場、当時の花街、などなぜそこか、興味深い。

あるいは、老舗が集まっているのはすき焼きやだけでなく、
例えば、天ぷらや、うなぎやなども浅草には老舗が
集まっている。
ということは、浅草だから、ともいえるかもしれぬ。

この件、またゆっくり考えてみようか。

ということで、すき焼き。


やっぱり大きく切った肉はよい。
また、このくらいの厚みも必要かもしれない。

すき焼きだけでは、と酢の物も。


溶き玉子をくぐらせて、


食べる。

まさに、堪えられぬ。

うなぎの蒲焼とはまた違う、幸せを感じる。

たまには、うまい肉ですき焼き。

皆さんもそんな気分がおありになるように
思われるが、ちょっと大袈裟だが、すき焼きを食うのは
日本人の補給。
そんな気がするではないか。


03-3841-2983
台東区雷門2丁目17−8



 


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