さて。
昨日の、焼きとんや[ま〜ちゃん]。
意外に(?)皆さんの評判がよかったようである。
なぜであろうか。
ちょっと考えてみたのと、
焼きとんやって、なんだろう?、を少し考えて見たくなった。
焼きとんやと、いっているが、本来は“もつ焼き”であったろう。
“焼きとん”を使い始めたのは、20年ほど前、
なぎら健壱先生、あたりからではなかろうか。
それ以前のもつ焼きやといえば、文字通り、なぎら師匠の
庭である、東京東部、下町に昔からある、朝からやっている、
昼から呑んでいる、謎の空間。
こういうところを、なぎら師匠が掘り起し、紹介し始めた。
私も葛飾の四ツ木に住んでいたので、少なからず
馴染みはあるが、立石仲見世の[宇ち多]あたりは、その筆頭に
なるなかもしれぬ。
実際のところ私などは、四ツ木に住んでいた当時も
まだ30そこそこの若造で、とても怖くて、あの長い
腰まである暖簾の向こうに顔を出せる身分ではなかった。
その後私は、浅草へ引越し、[宇ち多]へは結局行かずじまいである。
こういった、もつ焼きやが東京の場合、
いつ頃からあるのであろうか。
森下の[山利喜]もきれいな有名居酒屋であるが、
焼きとんを、看板にしており、大衆酒場とも
名乗っている。[山利喜]の創業は関東大震災後という。
その頃にもしかすると、もつ焼きが既にあったのかもしれない。
今、正しい証拠を私自身は持ってはいない。
今後の宿題とさせていただこう。
戦争があり、終戦後の闇市。
物不足で、酒もない。
カストリ、バクダン、色んなモノがあったようだが、
目がつぶれる(?)ようなものでも争ってんでいた時代。
(むろん私は知らないが。)
大方、下町のもつ焼きやは、このあたりをルーツにしている
のであろう。
荒くれ者の労働者が憩う場所。
(やっぱ、こわいわ。)
ウィキペディアによれば焼酎にウメやブドウのシロップを入れて
呑むのは戦前からあったというが、これに炭酸水を入れるようになったのは
昭和30年代で、東京下町に広がったという。
こういうところであるから、女子供は
やっぱり近付けぬところ。
私などには今でもそういう意識は強い。
それが、先のなぎら師匠あたりからの“啓蒙活動”によって
当時の若者であった我々の世代に伝わった。
私も、おそれながらも、森下[山利喜]、人形町、あるいは上野の
[カミヤ]などに行くようになった。
これらは距離的に近くで[宇ち多]などよりはちょっと、
敷居が低そうに見えたから、ではある。
そして、ここ5年ぐらい、もう少し前か、であろうか、
都内では焼きとん、もつ焼き、ホルモンを看板にあげる
小ぎれいなチェーン店が急に増殖を始めた。
原因、きっかけはなんであったのであろうか。
立ち呑みブームなども関係しているかもしれない。
さて。焼きとんやとは、基本、もつ焼き、焼きとんを肴に、
主としてチューハイ(焼酎)を飲ませる酒場。
もつにしてもチューハイにしてもポイントは、安いということ。
この20年、30年でもつに対する皆のハードルは
大幅に下がり、むしろうまいもの、という認識も
定着してきている。
また、女性がこうした居酒屋に行くことのハードルも
大いに下がっている。
こういったことを背景に今の東京の焼きとんや
花盛りがあるのであろう。
そして、昨日書いた[ま〜ちゃん]のような
New Waveともいえるところも現れている。
[ま〜ちゃん]は野方の[秋元屋]という有名焼きとんの
出身だそうで、従来の下町、東京東部にルーツも持つ
“ちょっと、女子供には近寄れない、やさぐれて、こわもての
ハチマキ系(?)の兄ンチャンやお父っつぁんの憩いの場”であった
焼きとんやとは、一線を画した、山手系の焼きとんや
といってよいのであろう。(でも、小洒落てはいないのがよい。)
先ほどから、チューハイともつ焼きで安い、と書いた。
確かに、焼きとんやで、高いところはない。
問題は、うまいかどうか、で、ある。
やはり、大方のでき星のチェーン店は、安いことは安いが、
まあ、それなりであろう。
通うほど、あるいは電車賃をかけてまで行くほどの
ことはない。
老舗の有名店は、それぞれ独特のノウハウを持って、
安くてうまい。(それに、あの独特の“こわさ”も
フリークには魅力なのであろう。)
[ま〜ちゃん]のような焼きとんやであるが、
安さはそのままで、ある種のセンスのある、うまい、
新しいアプローチをしているところ、というのは、
やっぱり大歓迎であろう。
山手出身であってもやっぱり焼きとんやといえば、
それなりに“こわい”要素はあったのであろうが、
これもどんどん薄まっていく。
これも歓迎すべきことのようには個人的には思える。
このWave。
私は、なんとなく東京のラーメンに似ているような
気がするのである。
ラーメン勃興期というのであろうか。
東京のラーメンというのは、もはや世界に冠たる食文化に
なっているといってよろしかろう。
東京のラーメンにはフリークというのか、
ちょっとオタクが入った人々がいて、食べ歩き、また彼らが店を育てる。
これがとても東京的なのである。
実は、焼きとんやにも、これに近い人々がいる。
オタク心をくすぐる得もいわれぬ、魅力がある、のであろう。
ラーメンの例をみてもそうだが、必ずしもこれは
わるいことではなかろう。
(私自身は自分をオタクではないと思っているが。)
[ま〜ちゃん]のようなNew
Waveの焼きとんやが
一つのジャンルになるくらい増えてくれたら、うれしい。
切磋琢磨して、より、より、うまいものができてくる。
たのしいではないか。
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