断腸亭料理日記2015
さて。
さより、である。
むろん、魚の。
上野の山へ行った後、4/29、いつものアメ横の魚やで見かけて、
ちょっと珍しいので買ってみた。
15匹程度。
いつもの一山500円。
さよりというのは、春先から今頃も旬であろうか。
鮨やでは光物として扱われるが、白身に近い身の味は上品で
あまみがあって好物である。
例によってアメ横で買うと、この量。
これだけあると、食べでがあるぞ。
まずは、三枚におろして、刺身。
頭を落とし、腹を裂き、はらわたを出しよく洗う。
腹を上にし背びれを下、尻尾を右に置いて、尻尾から一気に頭まで
半身を外す。ひっくり返し、もう半身中骨から同様に外す。
出刃から刺身包丁に持ち替えて、腹骨を外す。
頭から皮を引く。
さほど難しいことではない。
おろしてみると、子持ち(真子、白子)であったが、
もともと脂がある魚ではないので、うまさはあまりかわらないだろう。
また、さよりというのは、この姿、楚々(そそ)として
様子がいいではないか。
刺身ばかりもそうそう食べられないので、一先ずは頭を落として
腹だけを全部出しておく。
やはり、腹からわるくなるのであろう。
買った日の深夜。
今度は少し細めに切って、酢で洗ったもの。
酢洗い、などという。
透明な身が、白くなる。
いわゆる酢〆ではないが、もともと淡泊な魚なので
ほんのり酢の味が、ちょいと乙。
目先が変わって、うまい。
翌日の昼。塩焼。
さよりというのは、干物にもする。
私はあまりしないが、塩焼もノーマルであろう。
独特の香りがある。
やはり焼いても上品といってもよいかもしれない。
この味、なにか他の魚に例えようと思ったのだが、
思い出せない。
さよりというのは調べると、秋刀魚の仲間だそうな。
なるほど、形は近い。
ただ味の方は、随分と違う。
さて。
あとはなんであろうか。
その日の夜。
そうだ。イタリアンであればいけるだろう。
トマトソースにしてパスタ。
にんにくをオリーブオイルで炒め、二枚におろして
ブツブツ切ったさよりを入れる。
火を通し、白ワイン。
アルコールを飛ばしてカットのトマト缶。
軽く煮て塩胡椒。
味見。
淡泊な魚なのでどうかと思ったが、思った以上に
出しが出ている。
むろんくさみもない。
ペスカトーレのイメージでちょっとつゆが多めの
ゆるい状態がよろしかろう。
パスタを茹でてソースのフライパンで軽く煮込みながら
和える。
まあ、さよりでなくとも、どんな魚でもそこそこ
食べられるものになるが、これも十分にうまい。
さて、まだまだある。
さらにその夜。
小麦粉をふって、バターで焼けばムニエルだが、
イタリア風ににんにく&オリーブオイルで焼いてみるか。
小麦粉の前に、塩胡椒とタイム。
先のトマトソースには入れなかったが今度はそのままなので
タイムをプラス。
洋食では魚にはくさみ取りにタイムは定番だが、
タイムというスパイスは単なるくさみ取りだけではなく、
食欲をそそる香りでもあるように思う。
フライパンににんにくスライス、オリーブオイルで香りを出し
さよりを皮から焼き、両面軽く焦げ目の付くまで。
パリッとなかなかよい感じに焼けた。
内儀(かみ)さんなど、生意気にも今回の中でこれが一番うまい
などとほざいていたが、塩焼とはまた別で、うまい。
さて。
さより15匹。
にぎりだったり、押し寿司だったり、鮨もうまいので
考えたのであるが、前に書いているようにこのGW期間中、
一日一食、一杯のラーメン探訪中だったので、やめたのであった。
(しかし、パスタを作っているので、おんなじか。)
さよりがアメ横で安く出てくるというのはそうそう多くはない。
今回は、ちょいとめっけものであった。
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