断腸亭料理日記2015
引き続き「菅原伝授手習鑑」の通し。
昨日は夜の部一幕目、車引で次は、賀の祝い。
この幕もあまり上演されない。
基本、車引と寺子屋だけなのである。
車引で、今度三つ子の父親の賀の祝いをするという話題が出ているのだが、
寺子屋はさらに賀の祝いの後の話しで、間が飛んでしまうのである。
むろん、賀の祝いでは、その次の寺子屋につながる
重要なことが起きている。
賀の祝いというのは、70歳の祝いで古稀の祝いということになる。
梅王丸、松王丸、桜丸の三つ子三人とそれぞれの妻三人が、
彼らの実家、四郎九郎改め白太夫の家に
集まることになっているのであるが、梅と松の二人が着いても
桜丸だけがいない。
梅王丸と松王丸は、車引での悶着のこともあり
またぞろ喧嘩を始め、庭に植えてあった梅、松、桜の
三本のうちの桜の木を折ってしまう。
結局、桜丸は現れず二人は帰る。
だが、実は桜丸は二人よりも早く着いており、
今回の菅丞相配流の原因を作ったことへの責任を取って
腹を切ろうと思っていることを父に相談していた
のであった。
梅王丸と松王丸夫妻が帰った後、桜丸が現れ、
桜丸は白太夫と妻の八重が見守る中で腹を切る。
豊国画 文久1 (1861年)江戸・ 市村座
女房八重:3代目沢村田之助 桜丸:13代目市村羽左衛門
八重は桜丸の後を追おうとするが、
またまた、帰ったはずだが、実は残って様子を見ていた
梅王丸夫妻が出てきて八重を止める。
皆、深い悲しみに沈むが、白太夫は後を頼み、
菅丞相の配流の地、大宰府へ向かう。
これで幕。
そして、寺子屋になる。
舞台は替わって、田舎家に小さな机を並べて
子供達が手習をしている寺子屋。
(平安時代なので、実際には寺子屋はないが。)
ここの主人は二幕目の、筆法伝授で菅丞相に伝授を受けているのだが
勘当はされている状態の武部源蔵。
そして、同様に二幕目で菅丞相が蟄居閉門になる時に、武部は
梅王丸によって、丞相の一子、菅秀才を託されている。
(この子供達が机を並べている一段高いところに、秀才らしき
子供がいる。)
やはり、筆法伝授を観ていないと、背景がわからない。
つまり、武部なる人物がどれほどのものか、ということ。
また、逆に筆法伝授もここまで観ないと完結はしていない、
ということになるのである。
冒頭、武部は外出中で妻の戸浪が子供達の面倒を見ている。
幕開きしばらく、よだれくり、という名前の子供が
いたずらをして立たされるというコントのような
部分が多少長めにある。
そこに村に暮らしているといういかにも武士の女房という形の
女性が、入門をさせたいといって、これも育ちがよさそうな
子供、小太郎を連れてやってくる。
この女は今日は隣村へ行って用をすませて戻ってくるのでそれまで
あずかっていてほしいと頼んでいく。
そこへ武部が帰宅。
暗い顔をしていたのだが、小太郎の顔を見て明るくなる。
子供達を奥で遊んでいるようにいって、
戸浪に外出していた理由を話す。
藤原時平は菅丞相の子供、秀才を探しており、
ほぼここの家にいるということを突き止めており、
村も包囲されている。
菅秀才の首を討って差し出せという命令を受けて帰ってきた
というのである。
小太郎の顔を見て顔色が明るくなったというのは、
秀才の身代わりに差し出そうというのである。
(なかなか、凄い。)
ここで、武部の
「せまじきものは 宮仕え」
という、有名なセリフになる。
そして、首を受け取りに役人と、その首実検のために
秀才の顔を知っている、松王丸がくる。
武部は小太郎の首を討って、首桶に納め松王丸に差し出す。
豊国画 文政6年(1823年)江戸・市村座 松王丸:七代目市川団十郎
緊張の瞬間。
松王丸は「相違なし」。
菅秀才の首であるという。
役人は時平に報告するといって、首を持って帰る。
松王丸は、自分は病気でもあり、もう時平公からおいとまをもらう、
といって、別に帰っていく。
そこへ、小太郎を預けた母親が戻ってくる。
(さあ武部、どうする?)
致し方なし、と、武部は母親に切りかかる。
母親は刀をかわし
「菅秀才のお身代り、お役に立ってくださったか」。
涙、、、、。
?。
もう、おわかりであろう。そう。
身代わりになった子供は、実に松王丸とこの女房千代の
子供であったのである。
(え〜〜〜!?マジでぇ〜〜?)
つづく
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