7月6日(月)夜
月曜日。
帰り道、そばが食いたくなった。
夜というと、やっぱり今までは池の端[藪蕎麦]であったが
書いている通り、昨年昼時のみの営業になってしまった。
どこがよかろうか。
雨も降っている。
[藪][まつや]のある神田へまわるのはちょっと面倒。
そうなるとやはり上野[藪蕎麦]か。
この前[蓮玉庵]で書いたのだが、老舗の蕎麦やの意義のようなこと。
端的にいえば、その店が持っている歴史と今の店の雰囲気、
そしてそば、つまみの味、そしてサービス、客あしらい。
これらのバランスということになるのか。
歴史はあるのだが、いってはわるいが、幽霊屋敷のようなところ。
それでもまだ、そばがうまければまだよいのだが、大方は
そんなことは稀で、お客も少なく、結果居心地もわるい。
まあ、これでは二度と行かない。こういうところもある。
極端な例であるが、こういうところから、私が“趣味そば”と
呼んでいる店。どこかで修行、あるいは自己流で腕を磨き、
粉や打ち方その他、こだわってかつ、お洒落な店を
開店させる。マニア(信者?)の方には受けているのであろうが、
どうも客商売の顔をしておらず、だいがいは態度がデカイ。
私などにはこれも行きたい店ではない。(むろんなかには
よい店も少数だがあるが。)まあ、こんなところまである。
上野[藪]はどうか。
[藪]という看板だが、いわゆる三藪には入っていない。
創業は明治25年。この前に書いたように、戦後開店の池之端[藪]よりも
ずっと古い。神田の暖簾分け。当代で四代目のよう。
三藪は神田、浅草並木、池之端でそれぞれご親類。
まあ、直系ということか。
上野も歴史をみると立派な老舗であるが、三藪のように店は
老舗然とはしていない。
比較的頻繁に改装もしている。
従って昔の老舗の雰囲気を感じたい、愉しみたいという店ではない。
(彼らとすればそういう選択肢もあるのだろうが、
あえて選択していないということなのであろう。)
上野御徒町で降りて、上野[藪]に向かう。
道々なにを食べようか考える。
この季節は、ん!、サラダそば、だ。
中央通りを渡ってアメ横ビルをかすめて、海苔やのガードを
くぐり、丸井裏角に到着。
入ると、お姐さんが出迎える。
傘を備え付けのビニール袋に入れるのを手間取っていると
かわりに入れてくれて、奥のカウンターに案内してくれる。
座って、瓶ビール、エビスの中瓶。
つまみは品書きをみて、まぐろやまかけを頼む。
ビールがきて、
まぐろやまかけ。
まぐろはブツではなく、中トロと、赤身、二種の切り身。
もみ海苔、穂紫蘇、わさび、などがのっていて、
盛り付けも美しい。
まぐろの色もよく近海の生ではなかろうか。
当代、四代目は和食の修行をされたとのことで
ただの老舗そばやのつまみではない。
そして、タイミングをみて、サラダそばを頼む。
そばマニアの方には許せないそばであろうか。
いつからここの夏のメニューにあるのか
憶えていないが、私は好きである。
一夏になん回かは食べにくる。
きた。
ドレッシングとつゆの二つが添えてあり、
具をのせて両方を全部かけ、混ぜて、食べる。
具は野菜、鴨肉、小海老から揚げ。
混ざった。
ドレッシングは酸味が少なく、食べやすいし、
(私はあまりぐずぐずいわないが)そばの香りを
邪魔するものではないのではなかろうか。
最近、おろしのぶっかけに凝っていたが、これもまた
夏向きのそばの食べ方として、十分ありであろう。
やはり、ここの四代目はこうい新しいメニューにも
積極的に取り組んでいるということであろう。
さて。
食べていると、欧州人らしき小さな子供二人を連れた若い夫婦が
店に入ってきた。
「Yabu soba?」
はい、と出迎えたお姐さん。
東アジア、東南アジアのお客さんはたまに見るが、
欧州人はめずらしいのではなかろうか。
店名をいっているので、知っていて訪ねてきたのであろう。
奥のテーブルに案内され、着席。
英語のメニューを渡された。
会話を聞いていたが、フランス語に近いようだが違う?。
ドイツ語でもなく、ロシア語でもないし、イタリア、スペイン
ラテンあたりでもない様子。北欧か?。
小さな子供もいるが、どんなものを頼んで、
どんなふうに食べるのか。
東アジア人でも、麺をすするのがマナーでないのか
ざるそばを、れんげを使ってかなり苦労をして食べていたのを
ここで見たことがある。
興味津々、、、であったが、、こちらは食べ終わっていた。
立とうか。
うまかった。
ご馳走様でした。
勘定をして出る。
居心地もわるくなく、酒もつまみも、そばもうまい。
老舗然とはしていないが、よいそばやであろう。
台東区上野6-9-16
03-3831-4728
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