断腸亭料理日記2015

上野・洋食・ぽん多本家

7月22日(水)夜

今夜は上野の洋食・とんかつや[ぽん多本家]へ
行きたくなった。

[蓬莱屋][井泉]を入れた上野のとんかつ御三家の中では、
一番落ち着いたイメージ。

そして、とんかつが看板ではあるが、ここのメニュー名はカツレツで
今も洋食や、を、名乗っている。

それでタンシチューだったり、バタヤキなど、
カツレツ以外のメニューもある。

私が気に入っているのは、そのバタヤキ。
蛤のバタヤキをよく食べている。

バタヤキ、バタ焼き。

よい響きである。

まあ、バター焼きなのであるが、
我々の子供の頃にはまだ残っていた言葉であろうか。
親の世代、あるいは、さらに上か。

バタヤキをメニューの名前に使っているのは私が知っている範囲では
ここと人形町の[小春軒] くらいであろうか。

いわゆるバターしょうゆ味なのだが、とても懐かしく、
うまい。

と、いうことで[ぽん多本家]。

頭の中は“バタヤキ”、で、ある。

上野御徒町駅から上がって、広小路を南下。
信号を左に渡る。

路地に入って、左側。

暖簾に創業明治三十八年とあり、
重い木製の扉を開ける。

入って、一人、という。

今日は店は妙に静か。

誰もいないカウンターに座る。

ここは二階もあるが、今日はお客が少なめか。

外の暑さに比べて、おそろしいほどキンキンに冷えた室内。

座って、ビール中瓶を頼む。

ここにはバタヤキは蛤以外にももう一品ある。

なにかというとアワビ、で、ある。
品書きには、時価、と、ある。

聞いてみようか。

ビールとお通しがきた。


聞くと、アワビバタヤキは、7000円!。

これはいくらなんでも高価である。

今日はやめて、またの機会に取っておくとして、
いつもの、蛤の方を頼む。

ビールを一杯。

お通しは柔らかく煮た、煮穴子。
ほんとうにここはとんかつや、洋食やとは思えないものを出す。

江戸前鮨やか、和食やである。

ほろほろに柔らかい穴子がうまい。
腹も減っているので、バクバク食べてしまう。

と、すぐにきた。

 


蛤バタヤキ。

つけ合わせの野菜はレタス。
ドレッシングで既によく和えられている。

蛤バタヤキ。

この大きさ。宝石のようなとまでいうと、いささか
大袈裟ではあるのだが、なんとなく、食べるのが惜しい。

小麦粉をふってあって、ムニエルといってよいのか、
表面はカリッと焼いてある。

味は濃いめのバターしょうゆ。

口に入れると蛤は、プリッとした食感。

これは堪らぬ。

懐かしい味ではあるが、
この味はなかなか素人にはできまい。
濃厚にして繊細な仕上り。

ここの看板、カツレツが2700円なのに対して、
この蛤バタヤキは、3240円也。

ご存知の通り、今、蛤は獲れる量も少なく、安くない。
それも、大きなものとなると、一つ数百円はしよう。

これを、思うさま食べられたらどんなに幸せであろうか。

まったく、食べ終わるのが惜しい。

が、むろん、終わりは訪れる。

勘定をして、出る。

ご馳走様でした。
今日もおいしかったです。

 


台東区上野3-23-3
03-3831-2351


 

 





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