断腸亭料理日記2015

牛丼(の具)

7月25日(土)昼

土曜日。

突然であるが、皆さんは牛丼はお好きであろうか。

ご存知の[吉野家]だの[すき家]だの、チェーンのもの、
で、ある。

私は、きらいではない。
いや、むしろ好きといってもよいかもしれぬ。

30代の頃であろうか一週間に1回程度の頻度で
食べていたこともあったと思うし、今でも、
ごくたまににではあるが、時間がない昼飯などに
食べることはある。

うまいもの、で、ある。

そしてまた、時として無性に“あの味”が食べたくなることがある。

昨夜、無性に食べたくなり、帰り道にハナマサに寄って
牛のバラスライスを買ってきていた。

牛丼を出すチェーンは先の二つ以外にもまだいくつか
あるが、味は違っていようか。

微妙に違うような気もする。

また、時代によっても違ってきたのではあるまいか。
自分自身の舌が変わった可能性もむろんあるが、
一番の老舗の[吉野家]で考えても、私が20代の頃と
今とでは違うような気はする。

しかし、あの牛丼のうまさはなんであろうか。

具は牛肉と玉ねぎのみ。

いさぎよい、ともいえよう。

すき焼きの具であれば白滝だの、豆腐などが入ってもよさそうだが
それもなく、また野菜も玉ねぎでなくて、長ねぎでもよさそうである。

むろん、いろいろな材料を入れればそれだけコスト高には
なろうし、好き嫌いもあるかもしれない。

今は女性も食べるし、高齢者もよく見かけるが、
当初の主要なターゲットは10代〜30代くらいまでの男性、
ではなかったろうか。
このあたりであれば、やっぱり、肉、であろう。
余計な具材は不要。なにはなくとも肉だけが入っているのが、
私なども初めて食べた時には魅力に感じた覚えがある。

野菜も、長ねぎは玉ねぎよりも煮崩れるのが早いと思われ、
作り置きには向かなそうである。
また、他の野菜を入れるのも同じくコスト高になろう。

もう一つ、牛肉の種類。

[吉野家]は確かアメリカ産一本で、狂牛病の頃に
アメリカからの輸入が止まった時には販売をやめたり、
豚丼を出していたこともあったか。

ハナマサではいつも脂のある豚の三枚肉のような
バラのスライス、主にアメリカ産、を売っている。
おそらく、この肉が牛丼チェーンで使っている肉に
近いのであろう。
これを買ってきたわけである。

さて、最大の問題はつゆの味付け。

しょうゆベースで濃いめの味付けだが、
見た目にはしょうゆの色は濃くついてはいない。

濃口しょうゆ、酒、砂糖。
これに各チェーンさまざまな秘伝、工夫があるのであろう。

だがまあ、やってみるしかなかろう。

牛バラ肉は薄いスライスなのですぐに火が通りそう。
玉ねぎから時間差をつけた方がよさそうである。

玉ねぎを厚めに切って、鍋に入れる。

しょうゆを先に入れると色が付きすぎるので
後にし、水、日本酒、赤ワイン。

赤ワインはちょっと思いついたのである。
大昔に[吉野家]のものには、赤ワインが入っている、
と、いうのを聞いたことがあったからである。

これでしんなりするまで煮る。

玉ねぎの煮え具合ももう一つのポイントの
ように思う。

味が染みずぎず、クタクタにはならないくらい。

それで、肉を煮る時間も計算して、
しんなりしてきたら、砂糖、濃口しょうゆ。
たまりしょうゆも少し入れてみる。

味見。

色が付きすぎるのも牛丼のイメージではないので
多少控えめにし、砂糖はしっかり入れてみる。


牛肉も投入。


肉に火が通り、味が馴染めばよいだろう。
火の通しすぎはやはり、いけなかろう。

皿に盛り付ける。

今日は、酒の肴なので丼ではなく、具だけ。

[吉野家]でいえば牛皿といっていたか。


本来であれば紅しょうがなのであろうが、私は
紅しょうがはちょいと苦手。
いつもの京都の柴漬けも出す。

ビールを抜いて食べる。

肉も玉ねぎも煮え具合は狙ったところにきている。

つゆの味はどうであろうか。

ちょっと色が濃いようには思うのだが、
やはり甘みを多少強めにしたのはよかった。

80点くらいであろうか。

まあ、上々。

あとで調べると[吉野家]は隠し味程度なのであろう、
しょうがを入れているという。

今度試してみようか。






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