断腸亭料理日記2014
7月17日(木)昼
埼玉県の熊谷へ。
むろん仕事。
12時、新幹線で熊谷駅着。
熊谷へくるのは初めて、である。
熊谷といえば暑い町というのでとにかく有名になっている。
実際にはこのあたり、深谷だったり、行田、
利根川を渡った群馬の太田、館林あたりは
似たようなもの、なのであろう。
熊谷には気象台があって目立つだけなのか。
わからぬが、夏になると、なにかというとメディアに登場するようになり
知名度は相当に上がっているといえよう。
最近はそれを逆手に取って、熊谷市自ら「あついぞ!熊谷」を
キャッチフレーズにし、売り出すようになってもいる。
JRの改札を出て左側コンコースを、南口へ向かう。
秩父に向かうローカル私鉄、秩父鉄道の改札への通路が左側にある。
右側にはなん軒か並んで飲食店。
一番手前に「熊谷うどん」という看板が見えた。
駅を出て昼飯を食おうと思ってきたのだが、
駅を出てしまうと、なにもない、ということも
危惧される。
なにか「熊谷うどん」というのは気になるものがある。
「熊谷うどん」?。
聞いたことがあるような気もするが、
初めてのような気も、、。
看板には「あつさ体感40.9度の麦畑」なる
キャッチコピーが書かれている。
「あつさ体感40.9度の麦畑」というのは、意味が分からぬが、
ちょっと惹かれるものがある。
入ってみようか。
店の名前は[熊たまや]というよう。
券売機が外にある。
いろいろあるが、全部のせ、のようなもの
名前は「ぶっかけ」で、あったかを、選択。
連れの同僚とともに入ってみる。
間口一間ほどか。
奥に向かって細長い店内で、カウンターのみ。
食券を出してカウンターに座る。
座ると、目の前にこんなものがあり、
小さなあたり鉢が出される。
ほう。
なるほど。
七味が別々の小さな瓶に入れられており、
好みの割合で、マイ七味が作れる、という
わけである。
夜店などで、好みの割合をいって作ってもらえる
七味があるが、あれを自分で作れる、ということ。
これは思い付きである。
けしの実をちょっと多く入れてみたり。
店内には様々なビラが貼られている。
ここはどうも、熊谷の地(じ)で採れた小麦粉、地粉(じこな)の
業者が直営しているうどん店のようである。
小麦というのは冬に種を撒き、初夏前後、梅雨前に刈り取るはずで、
「40.9℃のあつさ」の頃には、麦畑はおそらくないのであろうが
説明によれば、熊谷は全国でもトップクラスの
小麦の生産量とのことで、それも江戸の頃から小麦の産地で
有名であったようである。
きた。
のっているのは、おろし、温泉玉子、花かつお、とろろ、海苔、
きのこ。(さらに生玉子1個サービス。)
むろん、ぶっかけ式。
うどんは、細め。(手打ちではなさそうか。)
「熊谷うどん」がみな、細いのかは不明。
だが、暑い時には、なにより。
うまい、のであるが、私にはちょっとつゆが薄い。
これ、私の東京下町の(そば)つゆの濃さに慣れている味覚では、
日本全国ほぼどこへ行っても、うどんそばのつゆはまず、
薄く感じてしまう。品のある味覚とは思えぬがご勘弁を。
しょうゆを足し、調整。
きのこやらが入るのは、埼玉というのか、武蔵のうどんの特徴か。
元来、小麦は武蔵野台地では多く作られてきた。
(武蔵野台地というと普通は、東京多摩地区から、所沢、狭山、
川越、、なんというあたりをいっているようだが、この熊谷あたりも、
武蔵野台地といってよいのか、、、。)
ご存知の関東ローム層、赤土で、水田は限られた川沿いにしか作れず、
代わりに小麦の栽培が盛んであった。
江戸は蕎麦だが、武州はうどん。昔からのことである。
ともあれ。
ぶっかけの「熊谷うどん」ご馳走様でした。
おいしかった。
しかし、熊谷うどん「あつさ体感40.9度の麦畑」とは
なかなかよく考えたものである。
村おこし、町おこし。
各地でいろいろな取り組みがされているが、
熊谷市が始めた「あついぞ!熊谷」PR活動とともに
40.9度の麦畑の「熊谷うどん」も、ちょっとナイスではないか。
土地のオリジナリティーというのか、歴史を含めてその土地らしさは、
マイナスのものであっても考えようによっては、プラスにいくらでも
転換できる。そこに住んでいる人々を前向きにさせられれば、
外からも人は集まってくる。そして、プラスへ持っていくセンス。
なんだか熊谷って、楽しそうだぞ、と。
東京一極集中について先日考えたが
こういうことがヒントになりそうではないか。
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