断腸亭料理日記2014
1月15日(水)昼
午後から外出。
東京駅方面を行くので、飯田橋駅までタクシー。
神楽坂下でタクシーを降りて、昼飯。
神楽坂で昼飯というと、坂下の神楽小路にある、
カウンターだけの洋食やというのか、スタンドカレーというのか
[めとろ]のカツカレーが好きでよく寄るのだが、やっぱり寒いので、
久々に蕎麦やの[翁庵]にしてみようと思い立った。
坂下の交差点から神楽坂を登る方向に行って、すぐに左。
うなぎの[志満金]の手前。
[翁庵]という屋号の蕎麦やは鬼平だったり剣客商売だったり
池波作品にはよく登場する。
藪や砂場などの有名な屋号ではなく、あたり障りがないような気もするし、
それでいていかにも江戸の蕎麦やらしい味のある雰囲気も出る。
うちの近所、上野警察の前、浅草通り沿いにもつけ汁に小さな
いかのかき揚げが入ったねぎせいろが名物の[翁庵]がある。
ここ、神楽坂の[翁庵]の創業は明治17年という。
蕎麦やというのは、老舗でも意外に江戸創業の店というのは
うなぎやなどと比べると、東京下町でもそう多くはない。
麻布[永坂更科](現、更科堀井)が寛政元年(1789年)で別格だが
次が巴町[砂場]で現在の場所で創業したのが天保10年(1839年)、
上野池之端の[蓮玉庵]が安政6年(1859年)。このくらいであろうか。
あとは[室町砂場]が明治2年、[虎の門砂場]明治3年。
今ある藪では(火事改築中の)[かんだやぶ]が最も古く、明治13年。
(藪の系統自身は江戸にさかのぼるようだが。)
やはり蕎麦やは、うなぎやなどに比べると商いとして(客単価)
規模が小さいせいであろうか。
同じ暖簾を引き継いでいく、というのはやさしいことではない
のかもしれない。
江戸の地図
神楽坂というと今、どんなイメージであろうか。
坂があって、細い路地があって、料亭なども残っている旧花街。
お洒落な(ミシュラン星付き?)和食やさんや、フレンチ、
イタリアン、ワインバーetc.、で、あろうか。
歴史的には江戸期には基本、中小の武家屋敷が主で、
毘沙門様や(この地図の北側だが)牛込総鎮守の赤城神社門前に
岡場所(私娼)もあったちょっとした盛り場。
明治以降にこういったものを母体にした三業地になっていった
と思われる。そして神楽坂花柳界の最盛期は意外にも戦後、昭和30年代。
文化人(映画、TV人が多いか)に贔屓にされたことも特徴であろう。
サラリーマンになってから20有余年、この隣町の市谷で仕事をしているのだが、
正直に書くと、どうも心情的に深入りしたくない、というのもへんだが、
馴染めないというのか、親近感がわかない街、なのである。
神楽坂であれば、今の地元である上野、浅草の方がよほど
親しみがわく。
むろん、20数年ブラブラしているので街自体は知っているのだが、
入ったことのある店は、実のところ数えるほど。
会社の宴会などでもよく使うのだが個人的にまたきたいと思う
ところは、ほとんどない。
やはり、神楽坂は山手なのであろう。
そして、私は血統的にも心情的にも、下町なのであろう。
そんなことで、神楽坂でよく行く店は、スタンドカレーの[めとろ]と
うなぎの[志満金]そして、この[翁庵]ということになる。
( [志満金]は味もよいが、なかなか行き届いたうなぎや、で、ある。)
ともあれ[翁庵]。
細長いビルの1階。
店は奥に長い。
テーブル席と小上がりの座敷の席。
どこも昼時で一杯。大賑わい。
相席で座敷の一番奥に座る。
決めてきたが、迷わず、かつそばを注文。
かつそば、というのは、この店の看板。
温かいそばの上に、薄めに揚げたとんかつが載っている。
おそらく、ここにしかないそば、であろう。
驚くことなかれ、このかつそばにはさらに冷やしがあるのである。
最初は、かつを冷やすのか?!と驚愕したが、これがその、
どうしてどうして、なかなかに食わせる、のである。
ここへ昼時にきたのは初めてかもしれない。
いつもは夜。仕事帰りに焼酎のそば湯割で呑む。
お昼だが、隣のテーブル席で小父さんが一人呑んでいる。
こういうところが、山手の下町か。
座ると、小さな冷奴が出てくくる。
ここはそばやだが、定食ものも充実している。
これも昼時人気の理由であろう。
待っている間にも、どんどんと、かつそばの注文が入る。
やはり、人気か。
待つほどもなく、きた。
これがかつそば。
見た通りであるが、甘目のつゆと、かつがまたよく合う。
また、この寒い昼、つゆが熱いのもよい。
うまい、うまい。
食べ終わり、お勘定。
500円でぇ〜す。
え?!、500円。
後から分かったが、毎月5日の昼はかつそばが普段は750円だが、
500円。
この日は15日で正月5日は正月休みで代わりに15日を
この日にしたのか。
どおりで、来る人来る人、かつそばであったのか。
ご馳走様でした。
「ありがとうございまぁ〜〜す。」
正しい東京のそばやの挨拶に送られて、店を出る。
翁庵
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