断腸亭料理日記2013

浅草寿町・とんかつ・すぎ田

9月8日(日)夜

さて。

日曜日。

雨。

今日も、昼間は落語の稽古。

雨でも外を歩く。

ビニール傘を差してやっぱり下駄履き。

雨の方が、逆に人通りが少なくて、落ち着いてできる、
というメリットはある。

夜は内儀(かみ)さんの希望で浅草寿のとんかつ[すぎ田]
というとんかつや。

一人で、会社帰りに寄るのであれば、
御徒町界隈の[井泉]が多い。

御徒町はとんかつ発祥の地で、[井泉]に限らず、
[ぽん多] 、 [蓬莱屋]と、[井泉]を入れて、三軒。
上野老舗とんかつ御三家。
(もう一軒[双葉]というのがあったのだが、
残念ながら、閉店してしまったよう。)

どこもそれぞれ個性があってよい。

しかし、内儀さんと二人でいくとんかつやは、
ほぼここ[すぎ田]に決まっている。

なにしろ、近いということ。

元浅草の拙亭から目と鼻の先。
10分はかからない。

値段もそれなりだが、我々にとってはご近所の名店というところであろう。

一応、内儀さんがTELを入れ、19時。

15分ほど前にやっぱり、下駄に短パンにTシャツという同じ格好で、
出る。

文字通り下駄履きで行ける。
近いからというのもあるが、別段気取らなくてもよい店だから、
ということである。

先年、名物親爺といってもよい、髭のご主人が亡くなり、
今は、若い二代目が継いでいる。

継いでから丸二年と、いうことか。

この日記を見返してみると、きているようで、
年に一回の割で、意外にきていない。

マンションの前から東に向かう通りを真っ直ぐに行って、
国際通りを渡り、国際通り沿いに右に行き、春日通りの
交差点の手前。

交差点そばに[寿三家]という横浜家系のラーメンやがあって、
その手前3〜4軒目。

いつも通り、夜は店前は煌々と、明るいライトで照らされている。
間口二間半ほどであろうか。

ドアを開けて入る。

手前から奥に白木のカウンター。

右側の厨房にいる若主人に名前をいって、正面に座る。

なんとなく名前と顔を憶えてくれていた雰囲気。

先客は奥の座敷に二組ほどと、カウンターに一人客が二組。

厨房にはお母さん(先代のお内儀さん)と、若主人の
お内儀さんらしい女性もいる。

お内儀さんはあまり店に出ていたことはなかったと思う。
(小さなお子さんらしき子供もちょろちょろしていた。
結婚されていたんだ。よかった。)

また、以前は若い衆も一人いたと思うが、今は完全に家族のみのよう。

ビールをもらって、
私はロースのとんかつと、内儀さんはロースソテー。
それから、海老フライ。

去年も書いたように思うが、先代の頃より気持ち切り方が
細い。


味は、かわってはいなかろう。
十分にうまいロースかつ、で、ある。

特大の海老フライ。


大きいが大味ではなく、プリプリでうまい。

内儀さんのロースソテー。


どうも内儀さんはこれが食べたくなると、
ここへきたいと言い出すようである。

毎度、濃厚な味で、うまい。

ご飯に豚汁。


ご飯はみずみずしく、シャキッと炊けて、
豚汁も濃厚で、うまい。


長年、存在感が絶大であった親爺さんを見てきただけに、
揚げ鍋の前にいるのが若主人一人だと、なんとなくさびしいような
気もするのだが、顔を見ていると、落ち着いて、すっきりした
表情なので、ちょいと安心をする。

髭の親爺さんはガタイもでかく、声もでかかった。
なにかタイミングがわるかったりすると、よくお母さんやら、
若主人やらに怒鳴っていたのを思い出す。

下町の頑固職人というのか、頑固親爺というのか、
まあ、絵に描いたような感じの人であった。

親爺さんが怒鳴るのは、いつものことなので、
別段どうということもないのだが、知らないお客さんであれば、
ちょっとビビッてしまうくらい。

ただ親爺さんもお客と世間話をするようなタイプではなく、
怒鳴る以外は、やはり職人らしく、至って無口であったかもしれない。

若主人はむしろ小柄な方。
親爺さんと比べれば、頼りなくも見えてしまうかもしれない。

愛想はわるいわけではないが、やはり如才なく無駄話をする
タイプではない。淡々とかつを揚げる。

味は、今日感じたのだが、ひょっとすると、
若い分、晩年の親爺さんよりもうまかったのではなかろうか。

きっと、このままでよいのだろう。

親爺さんと同じキャラクターを目指す必要もむろんなかろう。
うまいとんかつを揚げていれば、自然、若主人らしい[すぎ田]に
なってくることであろう。

 

 

すぎ田
TEL 03-3844-5529
台東区寿3丁目8−3

 

 




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