断腸亭料理日記2013
9月16日(月)第一食
昨日は雨の中、11:30から二日目の落語口演で
終わってから、聞きにきてくれた同期とともに、
昼から中野で呑んで帰ってきた。
思ったことは一昨日配信分に書いた。
(これを書くのに、けっこう消耗してしまったのだが。)
多少引いて考えると、私はいったいなにがしたいのか、
と、思わなくもない。
しかし、男もこの歳になってくると、私という人間はどうもこういう人間で、
こういう人生を歩んできて、きっとこれからもこの延長線上を
生きていくんだろう、と思う。
落語のこと、あるいはこの日記のこと。
(その他にも、これからなにかするのかもしれぬが。)
あまりまとまった男でもいないが、
まわりからある程度求めていただけることがあるのであれば、
落語というのは皆さんにわかりやすい形、なのであろうが、
それ以外のことも含めで、その時その時、できるだけの
努力をしよう、ということであろう。
ともあれ、我ながら、不思議な男ではある。
さて。あけて、月曜日。
敬老の日。
朝起きて、いよいよ台風である。
外の風も強いが、TVを視ていると、豊橋あたりに上陸した。
同時に京都の桂川、嵐山の渡月橋が濁流にのまれそうである。
(あのあたりの神社仏閣他、文化財には影響はなかったのであろうか。)
だが、なにを食べようか。このことである。
今日は簡単に、という頭から、ナポリタンを思い付いた。
ナポリタンとは、むろんスパゲティーナポリタンである。
スパゲティーナポリタンというのは、考えてみると、
不思議な食べ物である。
私くらいの世代を中心にして、であろうか、
嫌いな人はおそらくほとんどいなかろうし、
懐かしく、また、私などは時たま無性に食べたくなるメニューである。
スパゲティーナポリタンは、その昔の喫茶店スパゲティーの
大立者だが、外で食べるとすると有楽町の[ジャポネ]
を筆頭として今でも人気定番メニューで、同じく、ツートップであった
ミートソースよりも、逆に最近になってナポリタンはその座を
不動のものとしている、と、いってよかろう。
調べてみると引っ掛かるレシピがあるわあるわ。
こんなもの、どう作っても、食べられないものはできないが、
やはり、人気の証し、なのであろう。
先に、嫌いな人はいなかろう、と、書いたが、
それもどちらかといえば、好きなのは女性よりも男性、で、あろう。
私もチキンライスなどは大好物であるが、
同じく、ケチャップ味のナポリタン、やはり、
お子様ランチではないが、子供の味覚ということなのかもしれない。
(そういえば、我々の世代には、喫茶店のメニューでもあるが、
その前に、給食のメニューとしてその味が刷り込まれている
ようにも思われる。)
さて、ナポリタンにはどんなレシピがあるのか。
人それぞれ、隠し味のようなものがあるようだが、
ケチャップにウスターソースを加えるというのは一般的か。
あるいは、牛乳を加える、というのもあった。
その中で、NHK「今日の料理」で土井善晴氏(あの往年の料理研究家
土井勝の子息。)のレシピがちょっと気になったので、やってみた。
ナポリタンを作ったことがある方はおわかりであろうが、
ケチャップを入れて炒めると、スパゲティーが(フライパンも)
どうしてもベトベトになる。
チキンライスなどでもそうだが、このベトベトがフライパンに
くっつく原因になるのである。
土井氏のレシピでは、最初に玉ねぎやウインナーを炒める場合にも
箸などで混ぜて炒めるのではなく、しばらくそのまま置いて、
『焼く』という工程を取る。
ある程度しんなりしたら、ケチャップを合わせ、ある程度混ぜたら
また混ぜずに火をつけたまま『焼く』。
(ケチャップは、大切だというので、レシピ通り、きちんと量って入れた。)
この二度目に置くのは、ケチャップ水分を飛ばし、
煮詰めるようなことになり、ベトベト感が減って濃厚な味になる、
という効果のようである。
(最初の置く、の効果はよくわからぬ。)
ここに赤ワインを入れる。
一度水分が飛んでフライパンに付いたケチャップを一度、溶くという
格好になる。
ここにスパゲティーを加え、よく混ぜる。
胡椒をふって、仕上げにバター。
盛り付けて、お約束のパルメザンチーズを振る。
野菜は最初に、にんにく。時間差で玉ねぎ、ピーマン、
その後にウインナーを入れた。
ウインナーも焼き付けたので、焦げ目が付いているのが
わかるであろうか。
味はまあ、うまいナポリタンにはなってはいるが、
ただなにも考えずに普通に炒めてケチャップを和えたものと
どれだけ違うのか、といわれれば、大幅には違わないようにも
思える。
この焼き付ける、というのは、私は知らなかったが、
洋食か、フレンチのテクニックであろうか。
ウインナーに焦げ目が付いていると、うまそうに見えることは
確かではあろう。
また、もう少し細かく思い出してみると、ケチャップは
きちんと量るように指示されていたが、これがポイントだった
のかもしれぬ。
普通にナポリタンを作る場合、漫然とケチャップを入れて味見をすると、
足らなくて、後で加えることが多かったようにも思う。
ひょっとして、必要以上にケチャップを入れていて、
かつ、ベトベトの原因にもなっていた、ということなのかもしれない。
なるほど。
素人にはわかりずらいが、重要かつ、奥の深いプロの技、
なのかもしれぬ。
焼き付ける、と、いうのは、くっつくというのと、
紙一重である。
(テフロンのフライパンを使っているので、この心配は
多少少ないが。)
このあたりをコントロールするのが、プロ、と、いうことか。
たかがナポリタンであるが、意外に深い(の、かも)。
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