断腸亭料理日記2013

越前そばと室町砂場

10月23日(水)


福井県出張。

海辺のとある市。

昼すぎお客さんを終わり、駅前で昼飯。

越前そばとソースかつ丼のセット。


同じものを前にも書いているので、覚えておられる方も
あるかもしれない。

どちらもこのあたりを代表する大名物といってよいだろう。

ソースかつ丼というのは見た通り薄めに揚げたとんかつを
ご飯の上にのせて、ソースをかけたもの。

福井県に限らず、全国に点在している。

関東近県では、山梨の甲府。あるいは埼玉の秩父などは、
有名かもしれない。

これは関係しながら伝播した、というよりは、
各地ばらばら、独自に名物になっていったように思われる。

ソースがご飯にしみている。

ブルドックなどの普通のウスターソースであれば、味が濃すぎて
とても食べられなくなるだろうが、そうはならず、
べちゃっと、ご飯にソースがしみているが、問題なく
食べられる。

福井のものもそのようだが、
各地、専用の地ソースなるものが、存在している。

さっぱり、ちょっとスパイシーでうまいソース。

越前そばの方は、ぶっかけのおろし。

おろしの蕎麦というのは、福井県ではポピュラーなのであろう。
また、こちらでは、おろしをどれだけ辛くできるか、
なかなかのこだわりもあるよう。

麺はというと、黒く、手打ちのようで太いもの細いものあるが、
辛いおろしと、削り節との相性もよく、つゆ自体の味は
ちょいと薄く、東京者の私には、物足りぬが、全体としては
うまいそば、で、ある。

さて。

昼飯を食って、福井から、特急しらさぎで米原。
米原から新幹線。

5時すぎ東京駅まで帰ってきた。

途中、雨が降っているところもあったが、福井も東京も曇りで
肌寒いが雨には降られなかった。

東京駅を出て、どこへ寄ろうか、いろいろ考えたのだが、
蕎麦、蕎麦だが、[室町砂場]に、決めた。

温かい燗酒がよいかもしれない。

日本橋口から出て、線路沿いに北へ。
これは江戸通りといってよいのであろう。

新常盤橋を渡って、常盤小学校を左に見て、中央通りの一本前を
左に入って、ちょいといった左側が[室町砂場]。

二階もあって、ビルまではいかないが、なかなか立派な建物である。

格子を開けて入る。

入ると、

一斉に

「いらっしゃい〜〜〜〜〜」

のお姐さん方の声。

やはり東京の老舗蕎麦やはこの声に特徴がある。

これだけで、やはり、もはや節がつき、一つの芸になっている。

最近は池の端藪など、老舗でもこの声をやらなくなっているのは
残念である。
こういうことも含めて私は"食"文化であると思うのである。
これも無形民俗文化財であろう。
和食が世界遺産になったのである。是非伝え残してほしい。

ともあれ。

一人、と、いうと、右手奥のテーブルに案内される。

お酒お燗。


銘柄は知らないが、かなりの辛口。
肴は、焼鳥。


鶏もうまいが、なにしろ焼きねぎが、ばかうま。
ほかほかで、あまい。

もう一合。

さて、蕎麦は?。

温かい酒でだいぶ温まった。

入ってきたときにはかけそばにしようかと思っていたが、
冷たい蕎麦だ。

ただざる、というのも芸がない。

前にも食べているが「三味蕎麦」というのにする。

この三味、とは、おろしと、もみ海苔、茹でた三つ葉がのった
ぶっかけ。

奇しくも、昼の越前そばと似かよったものになってしまった。


大根おろしは、福井の方がやはり、辛い。

だがやはり、私には濃いつゆがよい。

するすると入る。

うまかった。

日に二杯。

バラエティーに富んだおろしのそばを食べられたのは
ちょいとその、うれしいものである。








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