断腸亭料理日記2013
5月19日(日)
さて。
毎年、連休前後から、6月頭まで、東京下町は祭の季節。
神田が、11、12日、震災などあり、今年は4年ぶり。
下谷も重なって、11、12日。
そして、浅草の三社祭が18、19日。
神田は久しぶりに町内神輿も出たようだが、今年は忘れてしまって
見にいかなけった。
私の住んでいる元浅草付近は鳥越神社の氏子で
鳥越は、6月に入って8、9日、最初の土日。
界隈では最も遅い。
17日金曜の夜8時頃、例によって栃木の工場から東武線で
東武浅草駅まで戻ってくると、浅草の街は既に祭空間と
なっていた。
やはり浅草の中心部が氏子町内の三社祭は下町の中でも別格である。
他の祭ではやらないが、祭の随分前から、町内毎に店の名前などが入った
高張提灯を並べたものを道に掲げていたりし、盛り上げていた。
雷門から雷門通りを歩くと、既に神輿を担いできたのか、
町内の半纏を着てきっちりと帯を締めた人々も歩いている。
北へ向かって路地の奥を覗くと、この時刻でも担いでいる神輿が見える。
我々の鳥越祭などでは、神輿や神酒所は金曜日に出来上がるが、
やはり土曜日になってからが、お祭り気分になってくる。
三社を見にいったのは、本社神輿が出る日曜。
元浅草から最も近いのは、真っ直ぐ東へいった、寿。
このあたりは、一之宮。
毎年、渡御の順路は多少違っているのだが、確かめもせず、
昼すぎ、自転車で出掛けた。
新堀通りを渡って路地数本向こうに、もう大勢の人垣がある。
神輿が来ているよう。
自転車を置いて、少し見物。
寿二丁目町会から、三丁目への受け渡し。
神輿渡御のやり方は、祭々で微妙に異なっているのが
おもしろい。
前の町内が終わり神輿が置かれ、手締めをして、後方へ下がる。
(まず、この手締めの仕方も、例えば鳥越と三社では違っているのだが。)
すると、次の町内の差配をする人々が台に乗って神輿の前につき、
簡単なセレモニー、が、あって、次の町内が担ぎ始める。
人々と書いたが、我々の鳥越では、立つのは町内の
『睦(むつみ』という祭組織の代表の方一人だけ。
三社では上の写真のように三人。
これは担ぎ終わりの場面だが、
右から、カンカン帽を被って、紫の三社様の印の入った羽織(半纏)
を着て白い片襷(たすき)をし、着物に袴姿の町内の氏子代表
(祭礼担当の役員さんであろう)の方。
カンカン帽に着物、袴というのは明治頃の姿なのであろうか。
今でもこの姿である。
左側、赤い太い筋が肩から袖に入り、背中には丸に、
三番、と書いた半纏を着た、ごま塩頭の貫録があるお爺さん。
この人は、鳶頭(かしら)。
浅草でも浅草寺や三社様を仕切る鳶(とび)は、
幕末の新門辰五郎で有名だが、今もその流れを汲む人々。
(この三番、というのは、明治以降の呼び名。江戸期の鳶=火消しは、
浅草は、十番組下で、を組などであったが、明治になって、
消防所のできるまで、江戸の火消組織がそのまま使われ、
その時の名前が浅草は三番組であった。)
鳥越祭ではむろん鳶頭をはじめ鳶の衆は神輿の組み立てから、
神酒所の設営その他色々、大活躍なのだが、こうして表に出ることは
まったくなく、あくまで裏方として働く。
そして、その向こう側の町内の半纏を着ている人、
この人が、町内の実際に担ぎ手の取り纏めをしている代表の方
なのであろう。
三社はこうして鳶がより全面に出るのが特徴といってもよかろう。
なぜであろうか。おそらく歴史的なものがあるのであろう。
浅草という土地柄、彼らがより力を持っていた。彼ら抜きには
盛り場浅草は仕切れなかったということではなかろうか。
担ぎ手が替わり、担ぎ始める。
この日は靴を買う、というついでもあり、花川戸へ。
ご存知かどうかわからぬが、靴は浅草の伝統産業で、
今でも靴やは多くある。(それも安い。)
靴を買って、雷門までくる。
雷門の提灯は神輿が通るので、畳まれている。
これは本社神輿ではなく、どこかの町内神輿。
三基の本社神輿が浅草神社に戻ってくるのは暗くなってから。
本社神輿の渡御以外にも、各町内神輿はそれぞれこうして
界隈を担いで歩く。
仲見世を担いだりする三社は、やはり派手である。
新築した並木藪も三社祭。
さて。
三社祭とは特段の関係はないのだが、夜は、天ぷらを揚げる。
昨日、御徒町の吉池から仕入れてきた。
めごちと若鮎。
天ぷらが一番うまいのは、やはりこの時期では
なかろうか。
天ぷらによい種も多く魚やに並ぶ。
若鮎。
めごち。
めごちというのは、小さいし、鰭(ひれ)に棘(とげ)もあり、
さばくのが骨。やはり、さばいたものを買ってくる。
今日は下地が薄力粉で、衣は天ぷら粉。
このあたりの種であれば、揚げるのには、
さほど気を付けなくともよい。
比較的薄衣で、よく揚げる。
若鮎はちょっとほろ苦いが、そこがまた、うまい。
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