断腸亭料理日記2013
さて。
パリ訪問の、まとめ。
もう少し続けたい。
やはり、なんといっても食いもののこと。
[Passage53]はいろいろ書いたが、
今回の滞在でここの料理を食べられたことは、
ラッキーな一大イベントであったし大きな収穫であった。
そして、もう一つ、大事なことは、パリ滞在中食べたもので、
まずかったものが皆無であったこと。
入ったところがたまたまよかったという可能性はなくはないが、
最もテキトウと思われる、ヴェルサイユのカフェのクロックムッシュ
も、まずくはなかった。
イタリア料理は日本で食べればフレンチよりも魚介類を
多く使うので、馴染みは深く、うまい、と思っていたが、
昨年のローマとシシリアは、うまいもの(店)ももちろんあったが、
やはり、それなりのものもあったのは事実である。
世界中、旧英領は食べるものに苦労するが、ニューカレドニア、
タヒチなど仏領及び、モロッコなど旧仏領は実際に行ったが
どこへいっても食事がうまい。その本家本国がまずいはずがないが、
どこへ入っても安心して食べられるのは、さすがである。
食い物の平均値が高いということであろう。
(フランス料理は2010年に世界遺産になっている。
このくらいはあたり前だ!ともいえようか。)
ともあれ、やっぱり食い物がうまい。
これもパリに住んでみたい理由の一つである。
さて、次に、食い物にちょっと関連するが
なん度か書いたが、日本食の店が驚くほど多かったこと。
これは食ということもあるが、フランス人の日本趣味、
という切り口でとらえたい。
思っていた以上に彼らに好かれている?。
北野武監督の映画が日本よりもフランスで評価され
勲章までもらっている。
さかのぼれば、ご存知の通り、印象派の多くが日本の浮世絵に大きな
影響を受けたということもあった。
これら、フランス人の日本趣味、日本(文化)好きというのは、
いったいどうとらえたらよいのだろうか。
そもそも、日本趣味といっているが、ヨーロッパには
東洋趣味というのもある。これと日本趣味は違うのか。
欧州の東洋趣味、シノワズリー(chinois=シノワが、中国のという
フランス語の形容詞、または中国語、中国人のこと。)は
17世紀には既に始まっているようである。
これは遥かエキゾチックな東洋への憧れという。
宮廷の貴婦人が扇子を使っていたり、あるいは
主として中国、日本の磁器のコレクションが
流行をしたという。
(日本は江戸時代で鎖国中にも関わらず、伊万里やら有田の
焼き物は、オランダや中国経由で輸出されていた。)
この頃は、中国も日本も大きく区別したものでは
なかったのかもしれない。
やはり日本に限定して、大きな影響を与えたのは幕末以降
大量に日本から流出した、浮世絵。
これはなにもフランスに限らず、絵画にとどまらず、学問の世界でも
日本にフォーカスをする動きが現れ、アメリカの駐日大使も
勤められたライシャワー氏(氏は日本史が専門)あるいは、
先の震災を機に我が国に帰化までされた、ドナルド・キーン氏あたりが
そうした系譜にあたるのであろう。
ただ、こういう世界全体の動きの中でも、フランス人の
日本趣味というのは、頭一つ出ているように思われる。
ある程度多数のフランス人が日本の、特に文化について、
好ましく思っているのは間違いなかろう。(アメリカ人などでは
眼中にない人というのも少なくなかろうが。)
先に、今回、パリへいって東京に似ていると書いたのだが、
どうも彼らの好きなテイストと日本人の好きなテイストがひょっとして
似ているからなのではないか、と、思ったのである。
むろん違うところもたくさんある。
例えば、前に書いた、ルーブル宮からコンコルド広場、シャンゼリゼ、
凱旋門、さらに現代の新凱旋門と一直線に並べてしまう感覚というのは、
あまり日本人にはわからないことではなかろうか。
(これはいかにも世界の中心は、われらである、とでも言いたいように
感じられるのである。)
なんとも表現しがたいので、テイストなどと書いたのだが、
パリの街を歩いていて、これを感じたのである。
それも特に、ルーブルやらエッフェル塔でもなくヴェルサイユでも
当然なく、有名な観光地ではない、マレ地区の細い通りであった。
日本の[無印良品]の店舗があって妙に溶け込んで見えて
それに気が付いたのである。
前にも書いた通り、マレ地区は東京の青山や原宿の裏通り、あるいは
代官山あたりにありそうなテイストにそっくりで、まったく違和感がなかった。
この街が、ファッションや流行の先端という意味で、
似たようなものになるという側面もあろうが、それだけ
ではない共通点があるように思うのである。
日本人は工業製品を作るにも浮世絵から始まる芸術品、あるいは
現代のアニメまで含めて、ものを作る場合、基本、細かい仕事を好む。
彼らフランス人も細かいものを好むのではなかろうか。
ただ細かいだけなら、ドイツ人だって時間は守るし、
細かい仕事が好きじゃないか。
そう。そういう要素、機能美などというが、も、日本人にはあって、
日本人はそれも作らないことはないが、細かいがもう少し柔らかい、
あるいは、斬新でおもしろいもの、も作るように思われる。
(アニメにしても、浮世絵もそうであろう。)
この『細かい上に、柔らかく、斬新でおもしろい感じ』の本体は、
彼らには発想できない、日本人に共通するなにかがあって、
このあたりのものが彼らのお好みにはまるのではなかろうか。
ここに現代でも、以前から彼らにある、エキゾチシズム好みの
日本趣味も加わっているのは間違いなかろうが。
ともあれ。
マレ地区も、泊まっていたオペラ座界隈のデパートの売場なども
そうであったがやはり「細かく、美しく、柔らかい」。
そう、これが先に述べた、フランス人と日本人の共通する
好ましいテイスト、なのではなかろうか。
特に、現代においては、これが表現としても大分近くなっていると思われる。
(日本がフランスに追いついたのかもしれぬ。)
それで、特に流行の先端の街を歩くと、違和感が少ない、
という印象になるのではなかろうか。
例えば、ベルリン、ロンドンは行ったことがなくわからないが、
ニューヨークやロスなどはやはり、この“柔らかい”という
部分が目に見えて少ないように思われるのだが、、。
(アメリカは細かさでも劣るかも。)
さらにちょっと補足すると“柔らかい”には先に書いたように
色々なものが含まれている。
おもしろさ、だったり、斬新さだったり、遊びのようなもの
だったり、それもどちらかといえば、ロジカルなものではなく、
直感的なもの。
このあたりが、アングロサクソンだったり、ゲルマン民族には
ないものなのかもしれない。(英国人のユーモア、フランス人の
エスプリなどと昔からいうが、英国人のユーモアも、我々からすれば
十分ロジカルで、理屈っぽい。)
私がパリの街を歩いて、直感的に感じたことを少し分解して
説明を加えてみたというところである。
当たっているかどうか、まったくわからぬし、分解も足りていないのだが、
意外に、近い感じの人々で、街であったというのは間違いない。
さて、「断腸亭パリへいく。」長々、書いてきてしまったが、
やはり、もう一度といわず、もう何回か、あるいは、1か月くらいの長期、
パリにはいってみたい。
今度はオルセーなどの絵画、あるいは、少し勉強して、
オペラ(これは無理かな?。)など、エンターテイメントも
観てみたい。
食い物もうまいしなぁ〜。
ともあれ、おつきあいいただきました皆様へ
感謝、で、ある。
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