断腸亭料理日記2013
5月1日(水)
引き続き、パリの二つ星日本人シェフのPassage53。
いかとカリフラワーのスペシャリテが出て、次。
もう一皿、魚。
これも不覚ながら忘れてしまった。
白身で平目だった、ような、、、。
ただ、やはりセンスは日本人。
菜の花を愛でたり、食べたり、というのは、日本人の習慣であろう。
もう一つ、野菜。
先ほどは、グリーンアスパラであったが、今度は、ホワイトアスパラ。
ソースもアスパラのソース。
いずれにしても、ソースはバターなども入らず、強い味はなく、
そのものから作ったものか、あるいは、いかとカリフラワーのように、
同じ風味を合わせ、限りなく素材の味を感じるように組み立てられている。
ここから、肉。
赤ワインにかえてもらう。
同じく、おまかせ。
ほろほろ鳥。
味は淡泊。とても柔らかく仕上げられている。
皿数は多いが、一品一品が少量でかつ、淡泊、繊細。
いかにもフレンチ、なものではないので、食べられる。
もう一皿、肉。
これは羊、ラム。
緑のソースは空豆。
空豆とラムを合わせる、というのも、フレンチでは
既にある組み合わせのよう。
むろん、羊くささのようなものはまったくない。
これで料理は終了。
Dessert(デセール=デザート)。
右がタルトをイメージしたものでレモンの風味。
左がフルーツ。
最後。
左、チョコのタルト、中、ティラミス、右、、、、
忘れた。
カフェとマドレーヌ。
だが、もう食べられない、、、。
量が少ないとはいえ、さすがにフルコースで腹一杯。
ご馳走様でした。
まさしく、堪能、という言葉が適切であろう。
お会計は、飲み物込みで二人で500ユーロ見当。
内訳は、ワイン代が結構な割合を占めていたと思われる。
帰りは、タクシーをひろって、ホテルまで。
8時スタートで、戻ったのが11時すぎ。
ワインの酔いもあったが、あっという間であった。
さて。
シェフ佐藤伸一氏の料理、全体を通して、どうだったか。
細かいところの多くを、忘れてしまったのは、申し訳ない。
ただ、印象に残ったのは、とにかく繊細な料理であった
ということ。
普段、東京でもちゃんとしたところのフレンチなど
滅多に食べないので、現代のフランス料理界での、
的を射た比較のようなものはできないかもしれぬが
私なりの解釈のようなものをしてみたい。
素材を生かすというのは現代のフランス料理の
ある程度一般的な潮流なのであろう。
一般的には日本の料理は素材を極めること、といわれ、
その素材を最もいい状態で用意し、その味を存分に引き出す。
そうすると、過度の味付けは無用のこととなる。
フランス料理のいわゆるヌーベル・キュイジーヌといわれた、
バターやらベシャメルやら濃い味付けは廃する、というもの。
(一方で、現代ではさらにそこから古典回帰という流れもあるよう。)
そして、さらに、今回私が印象付けられたのは、
日本料理では伝統的にはあまりやらないと思うが、
新しく、ある素材とある素材を、組み合わせ、合わせる、ということ。
佐藤シェフは、例えば、焼きいかとカリフラワーを合わせたのだが、
これは意外性があって、新しかった。
フランス料理にも伝統的な組み合わせ、あるいは
一般的になっている、組み合わせというのはあるのだろう。
例えば、今回の料理の、牡蠣と青りんご、ラムと空豆、、(?)。
こういう組み合わせに対して、佐藤シェフは、
それぞれの素材を丹念に磨き、とても繊細に組み合わせている、
というのが食べる側に伝わってくるすばらしい料理である、
と感じられた。
そして、これがおそらく、佐藤シェフの料理がパリにおいて
高く評価されている理由の一つなのだろう。
やはり、これからどんな歴史を積み重ねられていくのか
楽しみである。
さて、それはそれとして、ちょっと佐藤シェフの料理からから離れるのだが、
この料理から考えたことを少し書いてみたい。
今回印象に残った、組み合わせを考えたり、組合せ自体を突き詰めたりというのは、
先に書いたように、日本料理ではあまりやらない。
鴨にねぎ、ではないが、ある程度、素材、素材によって
決まった組み合わせというものがある。
そして、むしろ奇を衒(てら)うような新しい組合せは
避けるのが普通で、やるとしてもこっそり、ではないだろうか。
それよりは素材を磨くことに力を入れる。
フランス料理ではむしろ組み合わせで競っているといってもよいように
思われる。(むろん競うポイントは他にもあろうが。)
よく、ワインの世界では、あるワインの味を描写するのに、
ワインとはおよそ関係のない○○の香り、というようなことを、
ソムリエがいうのを聞かれたことがある方も多かろう。
かの田崎真也氏が以前にいっていたのだが、
白ワインのシャブリと、いかの塩辛は、合う、と。
これ試してみたが、なるほど、よく合う。
佐藤シェフの、焼いかとカリフラワーのように、
同じ味、同じ香りが、いかの塩辛とシャブリ双方にあるのであろう。
ワイン文化を育んだフランス料理にはこのように、
味を分解して組み合わせを楽しむ、という伝統がある
ということなのであろう。
そしてそこから新しい組み合わせが生まれ、新しい料理になる。
また、それがシェフ達のオリジナリティーを発揮する創作の場
になっている、ということなのであろう。
再三書いている通り、日本ではこういうことは
あまりしない。なぜであろうか。疑問に思ったのである。
といったところで、長くなった。今日はここまで。
明日につづく。
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