断腸亭料理日記2013

鰯〜13年鳥越祭その1

6月7日(金)〜8日(土)

さて。

引き続き、休みを取った金曜日。

池袋から御徒町まで戻って、アメ横でいつもの魚やをのぞく。

鰹が目立つ。

むろん、さばいていない一本もの。
小型のものが¥800。
少し大きいものが¥1000。

鰹は難しいので今日はやめよう。

なにが難しいのかというと、さばくことではなく、
当たり外れが大きいから。
最近も、スーパーでサクを買って、ちょっと失望したことがあった。

鰹というのは、鮨やで食べればむろん鮮度のよいもの
なのであろう、生ぐさみなどは無縁で、あまみすら感じる。
これがほんとうの、女房を質においても、と昔の江戸子がいった
初鰹、なのであろうと、思っている。

血なまぐさい鰹はやはり、いただけない。

ということで、鰹はパスして、、、。

鯖、これも今はおおかた、子持ち。

鯵もあるが、無難なところで、鰯にしようか。
格段に安く、一盛り10匹程度はあろうか、¥300。

購入。

さらに、佐竹商店街のスーパーみかわやに寄って、
大根と谷中を購入。

帰宅。

夕方まで、家で事務作業。

夜。

鰯を料理する。

まずは、刺身にしよう。

二匹。頭を落として腹を開き、三枚におろす。

ちょっと柔らか目だが、そこそこの鮮度のよう。
これならば大丈夫であろう。

生姜もおろす。



生姜が重なっているが、谷中も出す。

思った以上に、脂もある。
ただ、鮮度がそこそこよいのか、生ぐさくはない。

あとは、なめろう、あるいは、酢〆にしてもよいのだが、
今日は、大根も買っておいたので塩焼にしよう。
脂もあるし、うまそうである。

二匹、塩をして、ガスコンロのグリルで焼き、
大根もおろす。


鰯もうまいのだが、大根おろしがまた、うまい。

最近、大根おろしがよく食べたくなる。

よくよく考えてみると、子供の頃は、親父や爺さんが、
好んで食べていたが、こんな辛い物がうまいのか、と思っていたが、
この歳になってみるとよくわかる。

おろしに梅肉と鰹節を入れて、もみ海苔、しょうゆをかけ回す。
これは池波レシピだが、浦里、という。よく作る。

大根おろしは、酒の肴によくて、飯にもよい。

白い飯におろしをのせて、しょうゆを掛け回しただけで、
べら棒にうまいものになる。

また、こうして焼魚には欠かせないし、
蕎麦、焼いた餅にもよい。

料理と呼べるようなものではないが、大根の食べ方として、
私は1、2を争うものではないかと思っている。

さて。

翌、土曜日。

この土日は、いよいよ、われわれの鳥越祭。

台東区鳥越にある鳥越神社の例大祭。

東京下町の初夏の祭では、毎年、一番最後になる。

昨日の夕方には、町内のいつもの場所に、神酒所(みきしょ)もでき、
町内神輿は朝から組み立てが始まり、夕方には御霊(みたま)入れといって、
神様を神輿に分ける神事も終わっていた。

鳥越祭は、土曜は各町内神輿の連合渡御。
日曜が、本社神輿などと呼んでいるが、鳥越神社の宮神輿(みやみこし)の
氏子町内渡御ということになっている。

鳥越は、以前はあったようだが、今は本祭り、陰祭のような
年による違いはなく、毎年だいたい同じように行なわれている。

鳥越神社の氏子町内は南北に長く、北は浅草通りを越えた松が谷の一部から、
南は秋葉原そばの台東一丁目、あるいは、浅草橋駅近い柳橋あたりまで入る。

鳥越祭は、夜祭、などといって、土曜も日曜も
見どころは夜。

土曜も、連合渡御は夕方から。
空梅雨(からつゆ)で、今日も天気はよい。

昼。

昨日の鰯の残りは6匹開いて、全部、フライにする。


内儀(かみ)さんがキャベツを買ってきていたので
ちょうどよかった。

鰯フライには、ソースにケチャップ、マヨネーズを混ぜた
オーロラソース。
お祭りだし、やっぱりビール。

昼間っからだが、最高である。

外からは、子供神輿やら、お囃子、子供が叩く太鼓の音も聞こえてくる。

窓から入る初夏の風が心地よい。
5時の連合渡御まで、うたた寝。

4時すぎに威勢のよい太鼓の音が聞こえてきて、目を覚ます。

これは、毎年の恒例で、町内にある都立高校の太鼓部の生徒達が
連合渡御の担ぎ出しの前に、町内の神酒所前で太鼓の演奏をしているのである。
高校も我々の町内の立派な構成員で、土曜日は高校生も町内神輿を担ぐ。

あわてて起きて、シャワーを浴び、町内揃いの半纏をきっちりと着て、
型通り細い角帯を〆、素足に雪駄を突っかけて、内儀さんと、出る。


路面に貼られている「おみこしとおりますので」の貼り紙。
毎年のことだが、これを見ると、うれしくなってくる。

車よりも、神輿優先。

この二日間だけは、町内と祭に関わる人々が道路を占有できる
唯一の時間なのである。









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