断腸亭料理日記2013
1月3日(木)
3回に渡って書いてきてしまった、新橋演舞場の初芝居。
今日は最後の演目『釣女(つりおんな)』。
むろん、初めて観る。
太郎冠者 又五郎
大名某 橋之助
上ろう 七之助
醜女 三津五郎
これ、歌舞伎舞踊、というジャンルに入るらしい。
しかし、ただの踊りではない。
もとは狂言の『釣針』という演目とのこと。
ちなみに、演奏されるのは、常磐津で黙阿弥作詞。
作られたのは明治16年、歌舞伎としての初演は明治34年とのこと。
歌舞伎舞踊といっており、確かに所作事というのか、
役者の動きに踊りの要素がより濃いのだが、
元が狂言なのでセリフがあり、ちゃんとストーリーになっている。
能や狂言から歌舞伎になっているものも、少なからず、
あるのであろう。
かの『勧進帳』は有名で、能の『安宅』である。
ただ、書いたように、これは古いものではなく、浄瑠璃として、
掘り起こされたのは、明治になってから。
これが黙阿弥の作詞というのもおもしろいのだが、この『釣女』を含めて、
この時期、黙阿弥と常磐津の六代目岸澤式佐の組み合わせで
その後、『戻橋』『紅葉狩』など常磐津の代表曲といわれるようなものが
生まれているという。
そして、歌舞伎の舞台で演じられたのはさらに明治も深まった34年。
狂言なので、むろん喜劇。
笑いがあり、今風にいえば、コントのような感じのもの。
また、おもしろいので、定期的に演じられているもののよう。
今回は、お正月の趣向で、最後に軽いものを、というところか。
常磐津の世界(?)でも人気の演目のようで、
歌舞伎ではなく、日本舞踊になるのか、の、演目としても
演じられているようである。(むしろこちらの方が、先なのかもしれない。)
歌舞伎としては、ちょっと不思議なものではあるが、
義太夫、常磐津、清本などの浄瑠璃(三味線と唄)をバックに、
半分舞踊、半分芝居(あるいは、ほとんど舞踊に、ほんの少しセリフ)
というのは、喜劇でなくとも、意外に少なくないのかもしれない。
例えば、と、いって、適切な例なのかどうか、よくわからぬが、
先の『忠臣蔵』のおかる・関平の駆け落ちのシーンとなる
『道行(みちゆき)』などもそうなのであろう。
(さっそく買ったDVDで観てみた。)
ちゃんと観たことはないが有名な『娘道成寺』。
あるいは、昨年5月、平成中村座で観た『弥生の花浅草祭』
などもそれにあたる、のか。
ただし、この手のもの、今回の『釣女』のようにコミカルなものであれば、
まだよいのであるが、セリフはところどころで、あとは浄瑠璃と踊り。
私の場合、踊りもわからないし、浄瑠璃は聞き取れない。
となると、眠くなること必定で、苦手な幕なのである。
(まあ、これ、慣れであろうが、これも歌舞伎のハードルを高くしている
一つではあろう。)
ともあれ。
『釣女』は二人の主従が結婚相手を求めて、西宮の恵比須様へ
お参りにいって、夜、お籠りをしている間、夢のお告げで
釣をしろ、といわれる。
落ちていた釣竿で釣りをすると、主人の方は美女を釣って、
家来の方は、醜女(しこめ。いわゆるブス。)を釣る。
(まあ、こう書いてしまうと、たいしておもしろくもないのだが。)
趣向とすれば、最後に釣られる醜女を、有名な立役(たちやく=男役)が演る。
今回は三津五郎。
二枚目といってよいのだろう。
最近では、吉右衛門だったりが演っている。
こういう演目は、ほんとうに役者としての技量が問われるのであろう。
プログラム(筋書)の橋之助のコメントでは、前に大阪で上演した時には
場内爆笑であったというが、今回は、まあ、笑いはあったが、
爆笑にはなってはいなかった。
基本のお話は、狂言なので、古いものであろう。
書いたように、今の感覚ではたいしておもしろくもないもので
笑いになるかどうかは、演じ方次第、ということ。
(まあ、役者が、爆笑を目指していたかどうかは、別であるが。)
確かに、三津五郎のおてもやんのような化粧は
おかしかったが。
はねて、夜9時。
銀座まで出て、あいていたチェーンの安鮨やで、
燗酒で鮨をつまんで、銀座線で帰宅。
以上。
トウシロウの13年、新橋演舞場、寿新春大歌舞伎、夜の部、
観劇感、で、あった。
しかし、毎度のことだが、思うのは、
歌舞伎というのは奥が深く、幅も広い、ということ。
落語なんというものではない。落語はせいぜい200年。
歌舞伎は、300年、400年。
普通に観てわかるようになるのには、そうとう数の舞台を
観なければならなかろう。
思い出したように観にいっているくらいでは、だめかもしれぬ。
(が、それにしては、チケットは安くないが。)
ある程度わかるようにならなければ、また、おもしろくもない。
ちょっと、くじけそうになるが、
まあ、しばらくは修行と思って、観にいくしかなかろう。
そうだ。
今月の国立もいってみようかしら。
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