断腸亭料理日記2013
1月16日(火)夜
市谷のオフィスからの帰り道、
なにを食べようか、今日は思い浮かばない。
牛込神楽坂駅のそばにあるスーパーに寄って、
売場で見て決めよう。
野菜売り場。
なんとなく、ピンとくるものがない。
豆腐。
湯豆腐をやったばかり。
肉は今日はやめよう。
軽く。
魚。
たらの白子が随分と安い。
ついでに、真子(たらこ)もある。
真鱈、で、ある。
(このため、たらこは、いわゆる塩漬けにする
たらこ、スケトウダラの子、助子ではなく、真鱈の子、
で、ある。)
たらは今、まさに季節、で、あろう。
白子、というのは、実は私、
食べられぬことはないが、ちょっと苦手、
なのである。
なにかというと、普通の人であれば、
問題なく食べられるものでも少しでも生ぐさいと
だめ、なのである。
ちょっと、近いものに、上海蟹というのがある。
蟹と白子とものはまるで違うのだが、あれも、
紹興酒に生を漬け込んだものがあり、
季節になれば、好きな人は、ご存じの通り、
待っていて食べるものである。
これが、生ぐさくて、だめ。
同じくさいものでも、くさやだったり、
鮒ずしだったり、醗酵系のくさいものは、
好物だし、あるいは、鯖だったり、光物も
好きである。(まあ、光物も古くなっていれば、
刺身では食べないが。)
ともあれ。
たら白子、1パック、200円ちょいと、安いので、
買ってみようか。
なにか、酒の肴のようなものばかりになるが、
酒盗があるので(いつも常備してある。)クリームチーズと
食べよう。
クリームチーズも購入。
帰宅。
白子というのは、普通は熱湯をかけるくらいの、
半生くらいで食べるもの、で、あろう。
だが、やはり、それでは生ぐさそうなので、
ちゃんと火を通そうか。
水洗いをして、一口に切る。
鍋に湯を沸かし、白子を入れる。
あっという間に、ギュッとちぢむ。
数分。
よく火を通す。
ざるにとって、水洗い。
皿にのせて、ぽん酢しょうゆ。
酒盗のクリームチーズはそのまま合わせるだけ。
白子はよく火を通したので、生ぐささはなく、
問題なく、食べられる。
まあ、うまいのだが、こういうものは、たくさん食べるもの
ではなかろう。
しかし、冷静に考えると、日本人というのは、
ヘンなものを喜んで食べるものである。
玉子であればまだしも、魚の白子を食べるという民族というのも
そうは多くはないのではなかろうか。
さて。
酒盗のクリームチーズ。
これは、ご存知であろうか。
いや、その前に、酒盗というのをご存知の方は
どれだけおられようか。
我が家の冷蔵庫には、いつも常備してあるが
この間切れたので、旧臘(きゅうろう)箱根へ行った際に
二瓶ほど買ってきておいたのである。
(小田原のしいの、というところのものがよく出回っている。)
酒盗とは、鰹の内臓の塩漬けのこと。
醗酵しているので、くさいことはくさいのだが、
これが滅法うまい。
子供のころからの、好物。
むろん、そのままでも酒の肴に、
あるいはお茶漬けに。
アンチョビの代わりにパスタの味付けに使ってもうまい。
酒の肴にする場合、そのままだと、塩気が強すぎるので、
こうしてクリームチーズと合わせるとちょうどよいし、
また、別ものになる。
(大根おろしと合わせてもよい。)
酒呑みには、堪えられないもの、で、ある。
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