断腸亭料理日記2013

浅草観音裏・鮨・

久いち その2

2月23日(土)夜

引き続き、浅草観音裏の鮨や[久いち]。

春子と鯖を刺身でもらったところまで。

ここから、燗酒、菊正宗にしてもらう。

もう一つ、刺身、鰹。

鰹は、まず、にぎりではなく、刺身の方がうまい。

この時期だと、脂があるのかないのか、どんなものか、
出てくる前に聞いてみると、やはり、初鰹に近いですね、
とのこと。

炙ってあって叩き。

これは、上物。

よい初鰹は、最近になってそのうまさがわかってきたが、
みずみずしくてあまみがある。
まぐろのトロが口の中で溶けるのとはまた違うが、
フレッシュで柔らかく、ほのかなあまみのある身が、
口の中で溶けていくよう。

また、炙ったところも香ばしくて、ばかうま。

ここから、にぎり。

池波先生の教え通り、お茶にかえる。

白身はなにがあるか聞くと、平目、平目昆布〆、鯛、かわはぎ、金目と。

珍しいので、かわはぎと金目をもらう。

[久兵衛]譲り、なのか、ここのにぎりは、そうとうに、小さい。
ただ、やはり、酢飯と魚のバランスは正しい江戸前流。
(つまり、酢飯が小さい分たねも薄く、小さい。)

かわはぎは、もみじおろしをのせて、肝もはさんでいる。

かわはぎなどは、江戸前正統派のねた、ではないかもしれぬが、
やはり、うまい。

最近は回転寿司あたりでもあるかもしれない。

にぎりの鮨、というもの、私は必ずしも江戸前至上主義ではない。

最もうまいにぎり鮨を目指すのが、鮨職人。
これは誰も、異論はなかろう。
これに古いも新しいもない。
江戸前ではにぎらない魚、新しい拵え方をどんどん工夫して
しかるべきである。
カリフォリニアロールはともかく、新しいにぎりは大歓迎である。

ただ、毎度書いているが、江戸で鮨が生まれて冷蔵設備が
普及する戦後まで、100年程度かかって“仕事をした”
江戸前のにぎり鮨は、代々の鮨職人達が工夫を重ね、進化をし、
練り上げられてきたものである。この時間の厚みもまた重く見るべき
で、ある。
新しいものを出すのであれば、その江戸前仕事と比べて、
うまいものでなければ、意味がないとも思う。
ただ奇を衒ったものは論外である。

金目。

これももう最近は東京の鮨やでも、定番であろう。

今日のものは違うが、皮目を炙ったりもする。
脂ののった金目。
にぎりで食べると、また別の味。

光物。
先ほど、春子、鯖、とつまみで食べたので、小肌。

小肌は、まあ、つまみで食べるものではなかろう。
にぎりにして初めてうまくなるもの。

にぎりが小さいので小さいものの半身。

小肌というのは、銀色に輝いているところに、黒い点々という、
粋な姿形(すがたかたち)。そして、味ももちろん、よい。
これぞ江戸前にぎりの中の江戸前にぎり、
花形役者といえるものだと思っている。

さて、次は、いか。

いかは、江戸前の基本、すみいかだが、時期の問題か
比較的大きくいもののよう。
厚みもあり、江戸前鮨のすみいかでは普通はあまりやらないが、
包丁目を表側に入れてある。

この、いかへの包丁目、というのは、おもしろい。
京料理など関西では包丁目を入れるのが逆に普通のようである。
包丁目を細かく入れれば入れるほど、うまくなる、などと、
向こうの料理人がいうのを聞いたことがある。
包丁目の効果は、歯応えを柔らかくし、あまみが増す。

次。

海老とまぐろヅケを頼んでおく。
海老は茹でる。
ヅケの方は、即席に漬けるので、どちらもちょいと時間が掛かる。

その間に、内儀(かみ)さんの希望で貝類。
貝は、赤貝、みる貝、ほたて、蛤。

内儀さんは、赤貝を選択。

そして、海老もヅケも格別の味。

今日は、こんなところで、終了。


最後は、海苔巻。
わさび入り、かんぴょう巻。

やはり、大きな四つ切。


うまかった。
ご馳走様でした。

勘定は二人で酒込み、17000円。
にぎりの数もさほど食べなかったが、
まあ、このクオリティーでこの値段はリーズナブル、
で、あろう。

 

 

TEL 03-3874-2921
住所 台東区浅草3丁目18−8

 




   


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