断腸亭料理日記2012
さて。
引き続き、出張日記。
次は、9日金曜。
5日、6日の北陸から、一度東京へ戻って、
もう一度、北陸。
福井県の芦原温泉駅前の食堂での昼飯。
越前そばとソースかつ丼のセット。
これ、福井の二大名物といってよかろう。
どちらも食べたのは今回が、初めて。
(名物なので、セットにする意味は十分にわかり、
それに乗って、私も頼んだのだが、この組み合わせ、
冷静に考えると、メチャクチャである。
ソースとかつ、それに和風のさっぱり味のおろしそば。
この二つは、合うわけがない。私は先にそばを平らげてから
ソースかつ丼に手を付けたが、交互には食べられないもの
で、ある。)
ともあれ、まず、そば。
これはうまかった。
見た通り、おろしのぶっかけ。
そばは手打ち。
つゆは澄んでいるが、味はしっかり、濃い。
おろしがまた秀逸。
辛味が東京のそばやのおろしよりも、断然、強い。
以前、NHKの「ためしてガッテン」でやっていたが
大根おろしというのは、おろしたてから6分後が最も
辛味が強い、と、いう。(その後辛味は落ちていく。)
おろしそばは、越前そばが元祖ともいうらしい。
この番組で、福井の人が取り上げられていたと思う。
東京なんぞでは、どうしているかわからぬが、
ここまで気を使ってはいなかろう。
さて、ソースかつ丼の方。
これは、やっぱり、B級。(いや、いい意味で。)
薄切りのヒレかつに、ソースがどばどば。
したがって、ご飯はソースまみれ。
おそらく、東京のブルドッグソースのようなものではなく、
地ソースと、いうのか、ソースかつ丼用に多少薄味にしている
のではあろうが、やっぱり、B級感たっぷり。
むろん、それなりに、うまい。
帰ってきて、やはり、ソースかつ丼なるもの、
気になって、ちょっと調べてみたのである。
福井のソースかつ丼、というものは
随分と歴史があるよう。
なんでも、明治末頃から大正の初め頃、
福井市のヨーロッパ軒という洋食店が始めた、と、
福井ではいわれているらしい。
しかし、考えてみると、ソースかつ丼、と、いうのは、
福井県以外にも、全国にある。
さらに、ちょっと調べてみたら、長野県駒ケ根市、同伊那市、
群馬県前橋市、同桐生市、福島県会津若松市、など出てくる。
あるいは、埼玉県小鹿野町の特大わらじソースかつ丼、
なんというのも、有名である。
(この分布が、なんの脈絡もないように見えるが、
なんとなく、おもしろい。)
ソースかつ丼というものの発祥には、
諸説あるようだが、明治末から大正の頃、
今ある玉子とじのかつ丼より先に
ソースぶっかけのかつ丼が生まれていたのは、
どうやらほんとのようである。
以前に、東京人形町の老舗洋食や、小春軒で
復刻されたその頃(明治末)の、という、かつ丼を食べたことがある。
野菜なども入っているが、この頃、東京にもソースかつ丼は
確かにあった、のである。
元祖を名乗っているところは多く、この種のものの、
史実を追求するのは、あまり意味はなかろう。
とにもかくにも、明治の終わり頃、どこかの洋食やで
カツレツを丼飯の上に載せて、ソースをかけた
食べ方が出てきた。それが、これが瞬く間に、全国に広まった。
こういうことであろう。
しかし、その後すぐに、玉子とじかつ丼に駆逐された。
その理由は、玉子とじかつ丼の方が、うまかったから、
であろうと、思う。
(余談だが、ここで注意したいのは、前にも書いたが、
玉子とじのかつ丼はおそらく、洋食やで生まれたのではないだろう、
ということ。なぜなら、洋食やにも、同じ大正期に洋食やから
独立した今のとんかつやにも、玉子とじのかつ丼はないから。
一般には、玉子とじかつ丼は、そばやで開発された、という
説が有力で、私は、親子丼が先にあり、この鶏をカツレツに
変えたものと考えている。)
しかし、不思議といえば、不思議、で、ある。
全国的には、玉子とじかつ丼に駆逐されたはずなのに、
なぜ、全国のこれらの不思議な地域で、ポツポツと、
離れ小島のように残っているのか。
これだけバラバラしていると、
この分布の地域的な意味はないのだろう。
そして、これらソースかつ丼文化区域の人々は、
決まって、うちの街では、かつ丼といえば、玉子とじ
ではなく、ソースだという。
おそらく、玉子とじかつ丼は同時に存在していないのであろう。
うまい、のであるから、別のものとして、食べてもよさそうなのだが、
そうはならない、というのも、おもしろい。
この件、別段、結論はないのだが、なんとなく、おもしろいではないか。
[出張食い倒れ]のはずが、いつもの与太話になってしまった。
さて。
もう一つ、いや、二つ、ネタがあったはずなのだが、
これは、帰りの車中に忘れてきてしまった、、。
なにかといえば、富山からの帰り、
富山駅の水産物土産物やで買った、もの。
一つは、ぶりのかぶら寿司。
もう一つは、かじきの昆布〆。
どちらも、富山の名物だが、まったく食べた経験はない。
かぶら寿司はぶりを蕪にはさみ、麹を入れて漬け込んだ、いずしの一種。
かじきの昆布〆は、生のかじきの切り身を、昆布ではさんで〆た、
文字通り昆布〆だが、比較的時間をかけて置いておくようで、
だいぶ熟(な)れていそうなもの。
値段的にはそうそう高いものではないが、
いかにも残念。
富山から北陸線、ほくほく線経由で越後湯沢。
越後湯沢から、上越新幹線で帰ってきたが、
このどちらか。
あのかわいそうな、かぶら寿司とかじきの昆布〆の
入った包みは、、どこへいったろうか。
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