断腸亭料理日記2012

日本橋吉野鮨

3月16日(金)夜

金曜日。

一週間の終わり。

もういいか、今日は。
鮨だ!。

日本橋吉野にいこう。

ここ、値段もそうだが、気軽にいけるのがよい。

6時ちょい前、日本橋到着。

東西線から高島屋の中を抜けて1階にあがり、
高島屋の南側の通りに出る。

通りを渡り、真っ直ぐ、角を右に曲がり、吉野。

暖簾を分けて、入る。

早めの時間だが、カウンターは半分ほど埋まっている。

一人、と、指を出すと、金曜日だからか、
予約が入っていたようで、角に立った若親方、
微妙な対応ながら、う〜、ん、どうぞ、
ということで、座れた。

若親方の前に座る。

座ると、あ、大丈夫です、と、若親方。

よかった。

ビールをもらう。

瓶のキリン、中瓶。

さて。

もうそろそろ、春、で、ある。
いつものように、つまみに少し切ってもらおう。

光物はなにがあるか、若親方に聞いてみると、
鯵、鯖、小肌、小鯛、さより、鰹。

鰹?

鰹が光もの?

今は、初鰹ということになろう。
さっぱりしているので、光物に入れるのか。

じゃあ、さよりと、鰹を。

鰹。

これは、うまい。
生姜じょうゆをつけて、口に入れる。
さわやかなうまみにあふれている。

江戸っ子は、内儀(かみ)さんを質に置いても、
といわれた、初鰹。

また、

目には青葉 山不如帰(やまほととぎす) 初鰹

などと呼ばれたのは、今は昔。
3月には、鹿児島あたりからであろうか、初鰹が出回る。

しかし、子供の頃や、若い頃、初夏になると
家の食卓にも鰹は並んで、食べたものだが、
血の味ばかりで、たいしてうまいとも思わなかった。
なぜ、こんなものを騒ぐのであろうか、と。

やはり、自分で鮨やにいくようになり、初鰹を
食べるようになり、認識は大きく変わった。

やはり、一流の拵え、手当てをしたものは
まったく違う。

これならば、わかる。
うまいもの、で、ある。

さより。

さよりも、この時期、旬、である。

いつもは生、で、あるが、今日のものは〆てある。

ここの〆ものは味は濃いめ。
さよりは、〆ても、うまい。

ビールでひとしきり、つまむ。

さて。

にぎり。

お茶に。

白身はなにがあるかと聞いてみると、
鯛、平目昆布〆、ひらすずき、かんぱち、と。

ひらすずきは、先月食べたし、かんぱち。
それから、いか。

いかは、すみいか。
かんぱちも、うまい。

次は、光物。

鯵、小肌、さっき若親方が小鯛といっていた、
春子(かすご)。

鯵は生姜がのって、鯵らしい香りとうまみ。

小肌のにぎり、というのは、毎度書いているが、美しい。

銀色に濃い藍の点々が規則的に並んだ、皮目。
包丁目が三本入っている。
その上に、薄く、ニキリのしょうゆ色が塗られている。

手でつまんで、口に入れる。

きりっとした酢の味と小肌のうまみと香り。
これを、うまいといわずして、なんであろうか。
まさに、江戸前。
これが東京の味、で、ある。

この鮨が食える幸せ、と、いうものを、しみじみ思う。

春子。

小鯛の食い方とすれば、この酢〆のにぎりは、
最高なのではなかろうか。
うまい。

次は、海老とたこ。

たこは、甘いたれかけますか?と。

もちろん。
江戸前鮨のたこは、たれをかける。

これがうまい。

そして、海老。

茹でたてではないが、頭までついて、ぷりぷり。
十分に、うまい。

蛤を食べて、〆は巻物。

今日は、鉄火。

うまかった。

ご馳走様。

おしぼりがきて、6500円也。

十分に、安かろう。

座ってから、小一時間。
このくらいで帰るのが、よいだろう。

うまかた、うまかった。




中央区日本橋3-8-11
03-3274-3001





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