断腸亭料理日記2012

鯵 その2

7月8日(日)

さて。

引き続き、鯵。

刺身とたたき、なめろう、と、片付けた。

内儀(かみ)さんが鮨にしてほしい、というので
米を研がせ、浸水させておく。


酢〆にしようと、塩をしておいたもの。

酢〆、と、いうのは、塩をして置いた時間に比例して
水が抜け、その抜けた分だけ酢が入る。

つまり、酢に漬ける時間よりは、塩をして置いておいた
時間が重要で、酢に漬ける時間だけ長くても、酢は入らない。

浅く〆るのであれば、置く時間は2時間程度。

今日は13時に塩をし、17時まで4時間。
少し長め。

一度洗って、さらに酢洗い。

これも鮨やでやっているやり方。
なまぐさくならないという。
メカニズムはよくわからないが、具合がよいようなので
やっている。

酢に漬ける。


30分以上漬ければよい。

飯を炊き始める。

いつものように、ガラスのふたのホーロー鍋。

まだまだある鯵は、二匹塩焼き。
飯と同時進行で、塩をして焼き始める。

飯は炊き上がって、7分の蒸らし。

ボールに一合分出して、鮨酢を混ぜ入れ、
ご飯とよく合わせる。

暖かい季節だと冷めるのに時間がかかる。
以前からの自分の反省だが、酢を混ぜ込んだら、
水分が飛んで、飯粒の表面がしっかりする程度まで
触らずにじっくり冷まさなくてはいけない。

OK。

鮨は、押し寿司にしようと思っていたが、
少し、にぎりにもしよう。

酢に漬けた鯵にはきっちり酢が入っている。


二個ほど握って、おろししょうがものせる。

先ににぎりだけ、つまむ。

今、東京の鮨やでは生でにぎるのが普通。
江戸前仕事では、酢洗いしたものをにぎっていた。
今でもこれをにぎる店もある。
こうしてきちんと〆たものは東海道線大船駅の駅弁を思い出す。
これはこれでうまいもの、で、ある。

あとは、押し寿司。
木製の押し寿司の型にラップを敷いて、
下に酢〆の鯵を入れ、その上から酢飯を詰める。

詰まったら、押しておく。

塩焼きも焼けた。


座って、塩焼きを食べる。

塩焼きというのは、鯵の食べ方とすればとても一般的で、
むろんわるくはないが、同じ焼くなら、煮びたしの方が、うまい。

一度立って、押し寿司を切る。

巻き寿司もそうだが、鮨を切るのはほんとうに
むずかしい。
(NHKのためしてガッテンでやっていたが、
包丁が切れる切れないではなく、切り方なのだ、
というが、そう簡単なものではない。)

その都度水で湿らせて切ったが、こんな感じ。


盛り付け。


見栄えはともかく、味は問題ない。
うまくできた。

さて、最後。

煮びたし。

これは、腹を抜いて、塩をせず素焼き。

焼けたらしょうゆと酒で、軽く煮立てて終了。


冷まして、煮汁のまま冷蔵庫へ。

食べたのは翌日。


実はこれ、池波レシピ。

************

おまさが、本所・相生町の家へ帰ったのは夕暮れになってからである。

大滝の五郎蔵は、夜になってから帰って来た。

今日も五郎蔵は、暑熱の日中を変装して江戸中を歩きまわり、

「怪しい奴・・・・・・」

に目をつけていたのであろう。

おまさは、五郎蔵が好物の紫蘇の葉をきざみこんだ瓜揉みと、白焼きにした

鯵を煮びたしにしたものを膳に乗せ、これも五郎蔵の好みで、冷酒を茶わんに

酌(く)んで出した。

(池波正太郎・鬼平犯科帳10巻「むかしなじみ」文春文庫)

************

ここでもやっぱり夏のもの。

塩焼きよりも数段うまい。

以上、鯵、堪能、で、ある。








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