断腸亭料理日記2011
3月15日(火)
引続き、と、いうのも変であるが、
地震、津波で、混乱は続いている。
いや、原発は悪化しているし、被災地への救援は
ある程度、進んではいるので、あろうか。
(原発の報道が多く、このあたり、あまり出てこない。)
あんまり、暗い話ばかりでは、なんなので、
ちょっと、目先の違う話を今日は一つ。
今回の未曾有(みぞうう)の大震災は、
千年に一度のものであったと、報道されている。
なんでも貞観地震といって、西暦869年、貞観11年、
正確には、1142年前、に、今回とほぼ同じ場所で、
とてつもない大地震と津波が起きて、当時として1000人規模の人が
亡くなった、という。
千年に一度ならば、チリ津波の被害で10mの堤防を
作ったが、それをはるかに越える津波が押し寄せて、役に立たなかった、
と、いうのも、まあ、人知を超えたもの、といえるのかもしれない。
(だからといって、亡くなったり、家を流された方々の
心や魂がやすまるわけではないが。)
この貞観11年というのは、どんな頃なのか、
少し調べてみた。
平安時代の初期。
天皇は清和天皇。
清和源氏などというが、源頼光、鎌倉幕府を開いた、頼朝、
さらに、室町幕府の足利尊氏も、清和源氏で、
後の世に、大きな影響を与えた系統である。
清和天皇は、その始祖。
平安時代は、皆さんも憶えたと思うが、794年、桓武天皇が
奈良の都から、山城(京都)へ遷都。
桓武天皇から、平城、嵯峨、淳和、仁明、文武と5代後が、
清和天皇。
摂政、関白の、いわゆる摂関政治が始まったのもこの
清和天皇の頃。
清和天皇は父文武天皇の崩御にともない、幼くして即位し、
母方の祖父の藤原良房が実権を握り、臣下として初めて、
摂政という役割を正式に得た人物。
この、実権を握る過程で、言葉を覚えている方もあろうが、
応天門の変といって、古代からの名門大伴氏の伴善男を
失脚させている。
有名な「この世をばわが世とぞ思う」と詠んだ藤原氏全盛の頃の
藤原道長が生まれるのは、さらに百数十年後。
清和天皇のこの頃は、貴族が実権を持ち政治、文化の中心であった、
平安時代らしい時代が始まりかけた頃、といってもよいのかもしれぬ。
鎌倉時代は1192年なのでさらに二百年後。
この頃の、東北地方といえば、私もはっきりしたことは
わからないが、平安遷都後すぐに、坂上田村麻呂が
征夷大将軍に任命され、蝦夷征伐があったくらいで、まだまだ、
本格的に京都朝廷の統治が行き渡っていなかった頃
といってよいのだろう。
逆にいえば、まだまだ、彼らが独立した政治を行なっていた頃。
(日本史というのは、特に明治以降、天皇家の歴史、というのを
正統としてきたので、逆らった、いわゆる朝敵の歴史は、いまだに
あまり深掘りされていないのではなかろうか。)
ともあれ、そんな昔。
この頃の福島、宮城、岩手では、人々はどんな暮らしを
していたのであろうか。
その後の前九年、後三年の役で登場する、阿部氏などは、
東北地方で産出する黄金で豊かであったなんという話も
あり、また、青森の三内丸山遺跡をはじめ、東北地方には
今の北海道に残るアイヌの人々に近いのか、よくわからぬが、
倭人とは違う別の文化と歴史が、存在していたことは、
間違いなかろう。
ただし、彼らは文字を持たなかったので、残っていない、
ということか。
地球という惑星の歴史の中では、
人の歴史なぞ、まったくもって、ほんのわずかな、
瞬く間のことでしかないのは、間違いない。
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