断腸亭料理日記2011
7月21日(木)夜
今日は、仕事に区切りが付いたので、
少し早いが、5時すぎ仕事終了。
このくらいの、息抜きをしても、
まあ、たまにはよいであろう。
こういう時は、池の端の藪蕎麦、であろう。
この店は、8時までなので、そう遅くは入れないが、
やはり、池波先生ではないが、客の多い時間よりは、
少し早めの時間というのが、贅沢、であるように
思う。
大江戸線を上野御徒町で降り、上がる。
むろん、まだまだ、明るい。
路地を抜ける。
人通りはそれほど多くはなく、
風俗の呼び込みのお兄さんも声を掛けてくる。
(多くなると、そう全員には、声を掛けていられないのである。
私のようにスタスタと歩いていると、掛けられずに済むことも
多いのである。)
店の前。
格子を開ける。
案の定、お客は一組、二組で、
お好きなところへどうぞ〜〜、
とお姐さん。
上がって、私が気に入っている、窓のそばに座る。
なぜここがよいのかといえば、
硝子(がらす)越しに見える、店の前に設(しつら)えられた
小さな苔やら水の流れの眺めが、気に入っているから
なのである。
さて。
やっぱり、ビール。
肴は、なににしようか。
すいとろ、に、しようか。
それから、蕎麦は、今日は、鴨せいろ、だ。
すいとろというのは、山かけそばの、つけ汁、
というのか、山芋をそばつゆで伸ばしたもの。
これで呑むのが、私は好き、で、ある。
ビールを呑み終わり、
鴨せいろを出してもらう。
すいとろも、に、鴨せいろ、というのは、
自分でも、とても、贅沢な、感じ。
どちらも、酒の肴にもなるし、
せいろ蕎麦のつけ汁にもなる。
これに、天ぬきでももらえば、
なんたる、お大尽か、と、思ってしまう。
(まあ、根っから、貧乏性なのであろう。)
鴨せいろは、、、、。
どこがどう、と、ポイントを指摘できないのだが、
うまくなっている。
いや、もともとここは、丹念に料理をされているのだが、
より、洗練されたというのか、より、丁寧に作られている
というのか、、。
わからぬが、気のせいかも知れぬが、そんな印象。
随分前、鴨せいろをはじめて食べた頃であろう、
なんとうまいものか、と、感動し、死ぬ前に
なにを食べたいか、という質問には、鴨せいろ、
と、答えよう、とまで考えていた。
むろん、今でも鴨せいろは好物だが、そこまででは、
ない。
が、やはり、これは、うまいし、
そうとうに完成されている。最初の感動が蘇ったよう、
で、ある。
うまかった。
座敷で勘定をし、まだ明るい池之端の通りに出る。
右へ行って、四つ角から左の不忍池を眺める。
夕焼けにもまだ少し間がある空が向こうに見え、
その下に、青々とした蓮の葉が広がり、ところどころに
ピンクの花が見え、気持ちがよい。
思わず、池の方に歩き出し、不忍通りを渡り、
池の畔まできた。
この写真は明るく撮れているが、実際には、もう少し、
夕暮れの雰囲気ではある。
やはり、真夏のこの時期の不忍池は、蓮一色、で、ある。
その昔、江戸の頃、蓮飯なんぞが名物であったと、
太田南畝先生の書かれたものにあったっけ。
ついでに、ここの蓮は、レンコンとしても、江戸人の
口に入っていたんだっけな。
そんなことも、思い出される、不忍池の真夏の名物、
一面の蓮、で、ある。。
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