断腸亭料理日記2011
4月10日(日)夜
引き続き、日曜日。
かつ丼を食べて、家で仕事。
昼過ぎ、近くへ用足しに出て、都知事選の投票をし、
戻って仕事の続き。
4時半頃まで、仕事を続け、
きりがないないので、今日は終了。
朝、といっても、10時前だが、に食べてから、
量も多かったせいか、なにも食べていなかった。
夜、なにを食べようか、考える。
面倒なので、外食か。
鮨、中華、洋食?
蕎麦でもないし、、。
久しぶりに、天ぷらはどうか。
天ぷらといえば、ご近所、三筋のみやこし。
駅からも遠く、表通りでもないところに店はあるが
立派な江戸前天ぷらを揚げる店、で、ある。
隅田川の方に桜花(はな)を見に行くといって
出ている内儀(かみ)さんにTELを入れ、5時半に決め、
店にもTELを入れる。
元浅草の拙亭からは、5分。
左衛門橋通りから春日通りを小島町の交番前で渡り、
厩橋方向に歩き、三筋の路地を入り、三筋湯の先、
右側。
格子を開けて入る。
名前をいって、どちらでも、というので、
コの字になったカウンター、一番手前、
壁側に二人で座る。
瓶ビール、サントリープレミアムをもらう。
お通しは、ちょいとした、毛蟹の酢の物。
注文は、いつものように、5000円(弱)の
梅の定食。
我々が口開けのお客のため、
店に入った時には、ご主人はまだ、玉子水の
準備やらをしていた。
今日座ったのは、ご主人のちょうど直角の位置で
揚げている手元がよく見える。
海老から。
才巻海老。小型の車海老、で、ある。
二匹。
最初は、塩で。
二匹目は、天つゆで。
いい鮨やの海老もむろんうまいが、
天ぷらのカラッと揚がった衣に、ぷりぷり、
ほかほかで、あまい海老もまた、うまい。
続けて、海老の頭。
これは塩。
次は、すみいか。
この季節だからか、大き目。
いか好きの内儀さんが、おいしい〜、と、声に出して、喜んでいる。
きす。
季節のもの、白魚。
一匹、一匹で、揚げてある。
いつもそうだったのか、忘れてしまった。
江戸前では、かき揚げにはしなかったであろうか。
たっぷりと、食べてみたい気がしてくる。
穴子。
ご主人の手元を見ていると、やはり、穴子は、
他のものに比べても、長めに揚げているよう。
ほかほかで、うまい。
野菜天。
アスパラ、椎茸、蓮根、青唐辛子、小玉ねぎ。
野菜天も、ほかほかで、どれもあまく、うまみが
凝縮されて、揚げられている。
これで一通り。
ここで、気が付いたのだが、壁に貼られている種を見ると、
銀方、と、ある。これは、ギンポ、で、ある。
追加で、揚げてもらおう。
ギンポというのは、自分でも揚げたことがある。
初夏のもの。
むろん、どこの魚やにもある、というものではなく、
御徒町の吉池だが、やはり、今頃に店頭に置かれる
ことがあるのである。
江戸前の天ぷら種としては、昔は定番のもので、
東京湾で獲れ、希少価値のあるような高価なもの、
ではなかったが、今はほとんど見かけない。
いわゆる、雑魚(ざこ)にあたる魚なのだろう、
量もまとまってとれず、その上、さばくのが手間なので、
プロの職人も敬遠して出回らなくなった、と、いう。
小さ目に切ってある。
いや、ご主人は、小さいのを使っている、という。
こうして、プロが揚げてしまうと、
見た目も、味も、まずほとんど、穴子とかわらない。
このギンポという魚は、はらわたが、匂うのである。
あがって、そのまま置くと、この魚ははらわたが
くさくなるという。
このため、ご主人がいうには、うちでは、活き〆、
したものしか使わないという。
なるほど。
(過去、いつも、ではないが、
くさくて閉口したものもあった。)
最後。
天茶か、天丼。
私は、天丼。
やはり手元を見ていたが、かき揚げは、
一つについて、大きな匙のようなもので、
2回ほどに分けて、油に投入していた。
その手際の鮮やかなこと。
ピシッ、ピシッと、なにかを『決める』ように
入れていた。
時間も私の感覚では、比較的、長めであろう。
そして、衣も堅め、か。
なるほど。
できあがった。
かき揚げは、小柱。
赤だしは蜆(しじみ)。
まったく、申し分のない、天ぷらであった。
こういう目の前で揚げてくれて、
食べさせる、江戸前天ぷらというのは、
どうであろうか、やはり、東京固有のもの
で、地方へ行けば、あまりないスタイル、
で、あろう。
これぞ、江戸から伝わる、東京の味。
よいものだし、
こうして、ご近所、歩いて5分のところで、
氏素性正しき、江戸前天ぷらが食べられるのは
幸せなこと、で、ある。
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