断腸亭料理日記2010
5月8日(土)第一食
さて。
土曜日。
来週末は『町歩き講座』の二回目。
この週末は、今回の最終の準備と、さらに6月分の
場所を決めておかなければいけない。
ちょっと、忙しい。
と、その前に、第一食。
天気もいいし、さわやかで、ある。
思い付いたのは、千束の路麺、ねぎどん。
このところ、そうとうにご無沙汰、で、
あったろうか。
『路麺』とはなにか。
以前から、この日記を読んでいただいている方には、
今さら説明の必要はないと思われるが、
『路麺』という言葉自身、今もって一般的なものではないので、
今一度、説明をしてみよう。
『路麺』は私が作った言葉ではないが、
立ち喰そばやの中でも、チェーンではなく、主に個人営業で
駅などにも入っておらず、町中にあるもの、と、私は
定義をしている。
(『路麺』まとめたページがある。)
東京にも、駅の立ち喰い以外にも、富士そばだったり、
せんねんそば、だったり、様々なチェーンがある。
こうしたチェーンもよいのだが、やはり、個人経営の
立ち喰いそばやは、よりよい。
個人営業なので、個性があるし、経営努力というのか
様々に秀でているところがある。
例えば、とても、立ち喰いとは思えない、
天ぷらは注文が入ってから揚げる、
そばは自家製麺、というようなところも
決して珍しくないのである。
(詳しくは、上のまとめたページをご参照下さりたい。
東京にも、路麺は意外にたくさんあるのだが、
挙げているところは、むろん、私、断腸亭の尺度だが、
近くへいったら寄ってみるべきという店ばかりである。)
こうした路麺、歴史的には、戦後、まあ、闇市の
延長なのか、そんなところにさかのぼれるようである。
立地には、あまり規則性はないようである。
駅のそばだったり、人通りの多いところは、
逆に、もっと儲かりそうな店になるのだろうし、
なんでこんなところに、というような場所にある
ところも、少なくない。
また、拙亭近所、台東区、浅草、下谷地区には、
比較的多いように思われる。下町で、盛り場のそば、
そんなところであろうか。
また、いわゆるそばやうどんの麺を作っている、
小さな製麺所というようなものが台東区には何軒か
あるのだが、こういうところが自家販売というのか、
路麺もやっている、というところも、ある。
そんな中で、このねぎどん、も、今は
やめているが、もともとは、製麺所が
自家営業している路麺であった。
場所は、言問通りの北。
吉原の方へ曲がっていく道がある、千束五差路、の
すぐ先を左に入ったところ。
10時前、自転車で出る。
足元は、履きふるした、雪駄。
まっすぐ東へいって、寿から北へ上がり、
赤札堂の脇の路地をさらに北上。
言問通りを渡って、このあたり路地が斜めに
交錯しているが、右の方。
店の前に自転車をとめて、サッシの戸を
開けて入る。
券売機があり、食券を買う。
ここでは、以前からの私の定番。
冷やしのおろし、ざるではなく、ぶっかけそばに、
桜海老のかき揚げ。
カウンターに座る。
カウンターがくの字あり、向う側が
厨房で、だいたいは、女性が二人。
(女主人のおかあさんと、手伝いの女性。)
路麺というのは、だいたいにおいて、
大きな店というのは、ないのだが、ここは
それでも大き目かもしれない。
路麺というが、カウンターに一応、腰かけはある。
遮るものがなにもないので、作っている
作業はよく見える。
先客は、タクシーの運ちゃん一人と、
女性(おばちゃん)二人。
ここは、そばは生蕎麦から茹でるし、天ぷらは、
注文が入ってから、その場で揚げる。
できた。
桜海老かき揚げ、というのも、
ありそうだが、他には意外にない。
おろしそばには、揚げ玉が、標準仕様で載っている。
これに加えて、別皿できたかき揚げを崩しながら、
そばの上にのせて、混ぜながら、食べる。
最近は、立ち喰いに近いイメージだが、
小ぎれいにし、ちょっと、価格を上げているようなチェーンも
出ているようだが、ここは、むろん、立ち喰いそばの、価格。
で、生そば茹で立て、天ぷら揚げ立て。
これ以上の路麺はなかなか、あるまい。
うまい、うまい。
久しぶりにきたが、働いているおかあさん、お姐さんも
かわらず、味もかわらず。
いつものねぎどん、で、あった。
ご馳走様でした。
TEL 03-3873-0738
台東区千束1丁目17−9
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