断腸亭料理日記2010

浅草・うなぎ・小柳

7月25日(日)夜

さて。

夜。

明日、丑の日なので、内儀(かみ)さんが、
うなぎが食いたいと言い出した。

私は、なんだかんだ、定期的にうなぎは食べているので、
なにも、猫も杓子も食べるこの時期食べようとは思わない。
しかし、内儀さんはさほど食べる機会も多くないようで、
是非とも、と、いう。

どこがよかろうか。

日曜日というと選択肢は多少狭まるが、
久しぶりに小柳はどうだろうか。

一応、TELを入れさせてみると、こんな丑の日の前の日曜には
予約もヘチマもないようで、きて下さい、とのこと。

おそらく並ぶのであろう。

21時までやっているので、遅くてもよいだろう。
19時すぎに出ることにする。

私は浴衣でも着ていこうか。
この前の『講座』でも着たが“かまわぬ”柄のもの。

下駄を履いて、内儀さんと出る。
面倒なので、タクシー。

オレンジ通りあたりでタクシーはおりる。
小柳は、オレンジ通りよりも西かと思っていたが、
一本東であった。
ちょっと、うろうろしてしまった。

日曜のこんな時間であるが、浅草もこの界隈はまだ人が出ている。

小柳の前にきてみるとやはり、列。

と、雨がポツポツと落ちてきた。

並びながら、雨にふられるのは、あまりいいものではない。
内儀さんに傘を買いにいかせる。

待ち時間とすれば、15分程度であったろうか、入れた。
ここは回転が速い。

入り、一階のテーブル席、相席で座る。

店は、てんてこ舞いの様子。

ビールをもらい、つまみは、水茄子があるので、それと、
白焼き、うな重を頼む。

小柳の客層というのは、浅草のうなぎやでも
少し他とは違うのではなかろうか。

前川、やっこ、初小川、色川、老舗といえば、浅草ではこのあたりか。
やっこ以外は、どちらかといえば、地元の客が多いのでは
なかろうか。

これに対して、小柳は、浅草観光のついでに、というような
地元ではないと思われるお客の方が多そうである。

これは、観音様に近いところにある、
あるいは、老舗ではあるが、気軽に入れる雰囲気
から、であろうか。
(まあ、初小川、色川などは、地元以外、行き着け以外の
人は、なかなかこれる雰囲気ではないかも知れぬが。)

あるいは、小柳はガイドブックの類にもよく載っている、
のかもしれぬ。

水茄子。


なぜだか、今年は水茄子をよく食べている。
少し前に池の端藪蕎麦で初めて食べてから、
大阪泉州の名物で、アクが少なく、生でも食べられる
茄子であることを知った。

そして、その直後にスーパーでも売っているのを
発見し、買ってみたりもしている。

存在を知って立て続けになん度も食べる、というのも
不思議な話ではある。もしやすると、少し前から、
東京にも随分と出回っていたのに、私が気がついていなかった
というだけのことだったのかも知れぬ。

白焼きもきた。


わさびじょうゆで、つまむ。

ここで白焼きを食べるのは初めてだが、
こうした塗りのお皿で出てくるのは、珍しいかもしれぬ。

蒲焼もむろんいいが、うまい白焼きが食べられるのは、
やはり、東京ならではの幸せ、であろう。
東京、特に下町のうなぎやであれば、白焼きを
やっていないところは、おそらくない。
濃い味も好きな東京人だが、さっぱりした味も、
やはり、江戸前の味、で、ある。

と、すぐに、お重も。


ここの蒲焼の味は、さっぱりめ、で、はなかろうか。
さっぱりめ、と、いえば、初小川がすぐに思い浮かぶ。
前川、色川などは、濃い目、で、あろうか。

同じ浅草でも違うもの、で、ある。

食べ終わり、勘定をして、出る。

うまかった。

やはり、小柳、特別な客扱いや、雰囲気はないが、
気軽で、気安いうなぎや。

うなぎやだけでも、味、雰囲気その他、
実に様々なうなぎやの老舗が軒を連ねている。
東京下町、盛り場でも、めずらしい、浅草らしいところ、
かもしれぬ。



小柳




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