断腸亭料理日記2010
4月25日(日)第一食
さて。
日曜日、第一食。
昨晩作った、酢飯が余っていたので、
これをなんとかしようか、と考えた。
まあ、レンジで温めれば、食べられるであろう。
で、簡単に、できるもの?
お稲荷さん!。
油揚げを煮れば、すぐできよう。
薄切りの酢蓮でも入れれば、乙なものだが、
今日は、面倒なのでやめる。
油揚げだけをハナマサに買いに出る。
徳用の6〜7枚入っているものを買ってくる。
3枚、6個分ぐらいはできそうである。
やはり、一度湯で、油を抜いた方がよいだろう。
鍋に湯を沸かし、半分に切った3枚(×2枚)を入れ、
数分煮出す。
いいかな。
水にさらし、破けぬように、軽く絞り、
再度鍋に入れ、水はなしで、酒、しょうゆ、砂糖、
みりん、といったあたりを入れ、煮立て、煮込む。
濃い味にすれば、すぐに味が付くであろう。
3〜4分。
色が付いてきた。
煮汁の味見。
よさそうである。
すぐに食べたいので、鍋ごと冷水で冷やす。
同時に、冷蔵庫に入れてあった酢飯に
軽く酢をふり、ラップをして加熱。
切れてから、1〜2分置いて、蒸らす。
OK。
冷えた油揚げを煮汁から上げ、絞り、
酢飯を詰める。
よい見当であった。
6個、できた。
別段、どうということはないが、お稲荷さん、
うまいもの、で、ある。
6個、全部食べてしまった。
さてさて。
お稲荷さん、稲荷寿司、と、いうもの。
これはなんであろうか。
ウィキペディアによれば、江戸、天保の頃、
と、いうから、にぎりずしの発祥が文化文政であるから、
すぐ後、ということになる。
お稲荷さんは、売り歩くもので、
売り声は、落語にも出てくる。
多くは、夜、というような場面で、
「おいなぁ〜りさん!」と、売って歩いた、という。
なぜ、甘辛く煮た油揚げに酢飯を入れた
ものが、お稲荷さんなのか?
これは、誰もが、即座に答えられよう。
油揚げは狐の好物だから。
狐といえば、神社の、お稲荷さん。
それで、酢飯を詰めたものも、お稲荷さん、
稲荷寿司、と、いう。
(油揚げの別名を信田(しのだ)、というので信田寿司、と
いう言い方もある。)
まあ、簡単なことである。
で、さらに、疑問が生まれた。
じゃあ、なぜ、油揚げは狐の好物なのか?
ネットを捜してみると、いくつか説があるらしいこと。
ただし、どれも、言い伝えの域を出ていなであろうこと
もわかった。
だいたいにおいて、こうした神や仏に供えるものは、
いわれ、は、あるが、そうそう、意味のないものも
多いといえよう。
先日の『町歩き』の時、合羽橋の河童寺へ立ち寄った際に
河童の好物は、なぜ、きゅうり?という質問をいただいた。
これも同様のもの、で、あろう。
調べると、水に縁のある河童は、同じく水に縁のある
牛頭天王(祇園様)と習合し、牛頭天王にはキュウリ
(だけではないようだが)を供える、ものであったから、らしい。
で、ちょとはずれるのだが、神様として、
稲荷のことを調べていると、おもしろいことが分かった。
『町歩き』の集合場所にした、下谷神社もお稲荷さんだが、
お稲荷さんというのは、我国でもっとも数の多い
神社であるという。
ご存じの通り、今でもそうだが、ちょっと大きな家、
あるいは、現代では、会社の中、ビルの上などに
お稲荷さんを祭っているところも多い。
(かくいう、私の勤める会社にもビルの上に
弊社の明治創業時代の旧社名を付けたお稲荷さんが鎮座している。)
これは、家屋敷の神様、屋敷神。
あるいは、一族、一家の守り神として、産土神(うぶすながみ)、
という言い方をするものになる。
江戸の名物は、伊勢屋稲荷に、犬の糞、なんという
言い方もあった。
そんなとっても馴染みの深いお稲荷さん。
お稲荷さん、稲荷神社の総本社はどこか。
ご存じの京都伏見の伏見稲荷。
お稲荷さんは、実のところは、狐が神様ではなく、
文字通り、稲、が、神様。
「稲生(な)り」、なのだそうである。
そういう意味では、稲作を主産業とする我国の
信仰とすれば、もっとも一般的で
馴染みの深い神様。そして、全国津々浦々、
街角、家の中にまで、広まっていったのであろう。
狐は、なにかというと稲荷神のお使い。
(このお使い、というのはいろいろな神様で
決まっているのがおもしろい。
よく、神社ではシンボルのように、書かれているので
わかったりする。例えば、八幡様は鳩。
深川の八幡様のお祭りの手拭いには、鳩がモチーフに
なっているのを見たことがある。)
王子の回に、大晦日には関東中の狐が、王子稲荷に集まる、という
話を書いたが、これはむろん伝説である。その上、そもそも、
この伝説は、稲荷神=狐、という誤解が定着してしまっている
ともいえようか。(お使いが、集まるのも妙な話である。)
(もう一つ、稲荷では、おもしろいことを見つけた。
豊川稲荷というのも伏見稲荷と同様によく知られているが、
ここは神社ではなく、お寺であるということ。
詳細に書くと長いので、やめるが、荼枳尼天(だきにてん)という
そもそもはインド、ヒンドゥー教の神様で、それが仏教に入り、
さらに日本にきて、稲荷信仰と習合したということである。)
さてさて、お稲荷さん、稲荷寿司から、
そうとう、離れてしまったが、
ま、ま、そんな稲荷寿司周辺のお噂、であった。
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