断腸亭料理日記2009
9月4日(金)夜
さて。
金曜日。
今日は、午後、柏で、直帰。
前にも書いているが、柏といっても、最寄りは、
TXの柏の葉キャンパス。
と、くると、なんであろうか。
私には、決まっている。
南千住で降りて、いわずと知れた、うなぎ、尾花。
今年は、5月にもきている。
TXで柏やつくばへ、事業所があり、仕事で
割によくいくのだが、今まで、直帰、南千住で途中下車
というのをあまりしていなかった。
なぜなのだろうか。
TX、つくばエクスプレスというのは、
ご存じのように、秋葉原を起点に、浅草、南千住、北千住、
三郷、柏西部、から、守屋、つくばへいっている。
なんとなく、電脳の街、秋葉原から、
研究学園や、東大のある柏の葉キャンパスなど、
ハイテク、先端研究を結んでいるようなイメージがある。
それで、沿線も人気になっているやにも、聞く。
なんとなく、自分自身も仕事の途中で往復していると、
そんな気分になっていたのかもしれない。
しかし、つくばや、柏はともかく、
浅草、南千住、北千住は、まぎれもなく、下町。
TXの中で、ここだけ、そぐわない、
浮いている(沈んでいる?)という気もする。
おそらく、利用をしている人々も、そうなのではなかろうか。
(よくいわれるが、やっぱり、沿線に抱える駅によって、
その路線のイメージだったり、格、のようなものが、決まるのも
おもしろい。
都心から、西に向かう私鉄も南へ行くほど、格が上がる。
東武東上線よりは、西武池袋線、それよりは、新宿線、
京王線、小田急線、東急田園都市線、東横線と、上がっていくような。
地下鉄でも都営浅草線などは、京成と京急が両端で、
押上、浅草、東日本橋、人形町、東銀座、、、と、
都心でも、ちょっと、東にずれて、あかぬけない、
イメージか。)
まあ、そんなことは置いておいて。
尾花、で、あった。
自分では、TX直帰の場合は、南千住で途中下車と、
これからは、決めようか。
5時半、南千住駅に到着。
スタスタ歩いて、回向院の脇を入り、
常磐線土手下の尾花へ。
門を入る。
ウイークデーのこの時間であれば、
間違いなく、並ばずに、と、思ってきたら、
玄関脇の毛氈のかかった縁台に座っている人が
二人ほど。
下足のおかあさんに、一人、というと、
どうぞ、と、入れてくれた。
先の二人は、待ち合わせかなにかであったのか。
それはそうであろう。
まだ、この時間である、、。
靴を脱いで、札をもらい、座敷に上がると、、、
まだあいているお膳はある。
とはいえ、8割方、埋まっているのは、
流石である。
正面の神棚手前のお膳に、案内され、
一人でどっかりと、胡坐をかいて、座る。
ここから、いや、もう少し前、南千住に降りて、あたりから、
で、あろうか、、例の、『尾花の時間』が、始まる。
昔の、注文が入ってから調理をする、
東京のうなぎやの、時間、で、ある。
ビールをもらい、
今日も、やっぱり、鯉の洗いを頼む。
うなぎも、ここで一緒に。
うな重と肝吸い。
ビールがきて、お新香がくる。
新聞を広げ、ゆっくりと、ビールを呑む。
そうである。
ここでは、読むものも、文庫本だったり、小説でもないし、
(詩集、、? でもない、、いや、私は詩集などは読まないか。)
学術書でも、むろんないし、、、。
週刊誌、などでもよいかもしれぬが、
やっぱり、新聞が合っているように思う。
新聞でもなんでもよいかというと、
どうであろうか。
これは、その人それぞれ、キャラクターなのかもしれぬ。
スポーツ新聞でもよいように思うが、
私は、日経新聞である。
なぜ新聞なのか。
基本は、時間つぶし、だからであろう。
時間つぶしだが、尾花では、間違っても、ケータイ、
で、はなかろう。
ケータイ、かちゃかちゃ、では、
せっかくの、尾花の時間、が、だいなしであることは、
議論の余地はない。
洗い。
ぽつぽつと、つまみながら。
ビールをなめ。
新聞を読む。
煙草を吸いに、玄関脇まで出たり。
ゆっくりと、時間がすぎる。
そうである。
ここは、お客も、皆、そのつもりだから、
店全体が、ゆっくりしているのである。
これは大きなポイント、で、ある。
今時、こんな空間は、なかなか、あるまい。
やっぱり、ここ、尾花こそ、東京の無形遺産、に指定すべき
で、ある。
なんとしてもこの時間はなくしてはいけない。
見ていなくとも、隣の隣がきて、隣がきて、さー。
次は、と、期待はふくらむ。
きた。
わくわく。
どきどき、お重のふたを開け。
蒲焼に、対面。
目にも鮮やかな蒲焼の色。
ふわっと広がる、香り。
サンショ、サンショ、、っと。
ぱっ、ぱっ。
お重に箸を入れ、口に頬張る。
幸せ、で、ある。
これほど、幸せをわかりやすく感じられる
食いもの、というのも、なかなか、なかろう。
鮨、なんぞは、わくわく、どきどきは、なくはないが、
やっぱり、ばらばら食べるので、
うな重のような、ふたを開けた時の、劇的な対面と、
いうものがない。
偉大、で、あるかな、うな重。
かっこみ、運ばれたお茶を飲んで。
おもむろに、立ち上がる。
充実感がみなぎっている。
帳場で勘定をし、出してもらった、下足を履いて、
暖簾を分けて、出る。
さっきの門口で、もう一度、一服。
これも、充実感には、欠かせなかろう。
吸い終わり、門を出、宵闇の降りた
常磐線土手下へ。
と、ここまでか。
充実の、尾花の時間、終了、で、ある。
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