断腸亭料理日記2009
今日はまたまた、下町関連なのだが、
ちょっと、考えてしまったことがあったので、
書いてみる。
過去、下町とはなにか、考えてみてきている。
「東京下町」とはなにか・・・歴史的、地理的、下町定義の的試み
《明日がわからないから、人に対しても、自分に対しても
正直に、一所懸命に今をすごす。
逆にいえば、それ以外に、人生で重要なことはない。
そこさえ押さえれば、後は自由にすればいいんじゃない?!、と。》
私の『東京下町』に関する考え方は、そんなこと、
なのだが、今日は、もう少し角度の違う話。
今は、下町ブーム、という。
私の住む浅草にも、地方から、海外からの、いわゆる
観光客以外にも、周辺も含めて東京に住んでいる人々
も多く訪れる。
これを、よく、下町ツアー、といっている。
下町の飾らない雰囲気に、癒しを求めて
くる、のであろう。
例えば、浅草、に、人が訪ねてくれるのは、
本来的には、いいこと、なのだと思う。
経済効果もあろう。さびれるよりも、むろん、いい。
こんなのも、あるらしい。
『北千住居酒屋ツアー』。
(ある種、サブカル(サブカルチャー)的視点、
あるいは、アド街(TV東京・アド街ック天国)的視点、
なのかもしれない。)
私は、いったことはないが、北千住には、
歴史があって、味のある呑みやが多い、というのは、
よく知られており、行列にもなっているらしい。
これは、地元、北千住の人々にとっては
どうなのであろうか。いいこと、なのか。
文字通り、その居酒屋をやっている方にとっては、
売り上げが伸びるので、よいこと、なのであろう。
しかし、一つ、引っ掛かることがあった。
それはなにかというと、
某グルメレビューサイトの、北千住の行列有名居酒屋の
書き込みである。
(これは、先日、千住ねぎ、を調べていて、
付随情報として見つけたのであった。)
そこにきていた、小さい子供を連れた客が
食べ終わっても、ちっとも席を開けないことを
非難するコメントがあった。
最終的には、その親子は、店の親爺(おやじ)さんに追い出された、
と、いうことなのである。
まず、マナーとして、いいことなのか、わるいことなのか、
と、いえば、間違いなくよくないこと、で、あると思う。
(誰がどう考えても、あたり前、で、ある。)
だが、私は、わざわざ、この店に遠くからきたらしい、
このコメントをした人の目線が少し気になったのである。
まず、前提として、この親子は、地元の親子、なのであろうか。
(この場合の地元は、北千住周辺を含んだ、北千住を
ローカルとする人、足立区民?と考えてもよいか。)
地元かそうでないかで随分と違ってくる。
1.地元の親子ではない場合。
これは、さらに二つに分かれる。
地元でなくとも、北千住でない東京下町なのか、
(近郊を含めた)山手なのか。
北千住をローカルとしない、下町人の親子は、
わざわざ、北千住の有名居酒屋へ、まず、いかない、で、あろう。
下町人が、わざわざ下町ツアーには、まあ、いかなかろうし、
おんなじような呑みやは、近所にいくらでもあろう。
(仮に、いったとすれば、それはやはり山手からの人と
考え方は、同じであろう。)
山手からわざわざ、子供を連れて、
北千住居酒屋ツアーにくる人?そんな人はいるのか?!
いくらなんでも、まず、いなかろう。
(もしいたとしたら、論外。)
と、すると、
2.地元の親子の場合。
に、なる。
下町は(いや、これはなにも下町に限らないとは思うが)
往々にして、こういうことをする人、はいなくはない。
ポイントは、これは店の親爺さんが、いうのは、正しいのだが、
わざわざ、遠くから“ツアー”で訪れた者が、
コメントするべき内容ではないのではないか、と、
思うのである。(仮に浅草に住んでいる私がいっても、
同じで、いうべきことではない。)
下町、と、いうのは、先に、山手の人は、
飾らないところに、ある種の“癒し”を求めてくる、
と、書いた。
しかし、下町とは、本来、そんなにきれいな所ばかりではない。
山手ではあり得ない(?)、マナー違反をする人も、
いなくは、ないのも事実であろう。
そういう人々を含めて、下町であり、北千住なのではなかろうか。
(私は、そういう下町が、善悪ではなく、好き嫌いでいえば、
嫌いではない。)
銀座のスノッブなバー、ではない。
同じようなものを、北千住の居酒屋と、その客に、
要求するのは、まあ、お門違い。
そういうお客がいて、それを追い出す店の親爺さんまで含めて、
北千住の居酒屋、と、見るべきだと思うのである。
毎度書いているが、私は民俗学という学問を学んだのだが、
(本当は、民俗学に限らず広く、社会科学全般にそうだと思うが)
そこでは、参与観察ということをする。
対象に入り込み、ただ見る、という姿勢である。
それで、論旨とすれば、その親子が北千住ローカルピープルなのか、
で、大きくかわってくるのである。
親子がローカルピープルであれば、年に一回しかこない
遠方からの客よりも、親子の方が、
その店の風景としては重要なのではないか。
外からいった者は、なにも民俗学者でなくとも、
対象から一歩引いた、目線を持つべきであると思うのである。
そういう視線を持つことが、下町を理解し、本当に下町を愉しむ、
ことではなかろうか。
アウトサイダーの勝手な価値観(山手的な上から目線?)を重ねて
押し付けるのは、相手の文化に対して、不遜の誹(そし)りを免れない。
たとえそれがその人の文化の中では正論であっても。
そして、これは実はこの件に限らない、のである。
もっと広く、下町はいいなあ、と、思って“ツアー”に下町にくる人々に、
こういう、引いた視点も持っていただきたい、ということなのである。
それで、生(ナマ)の下町を愉しんでいただきたい、
と、思うのである。
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