浅草・そば・尾張屋断腸亭料理日記２００９
浅草・そば・尾張屋5月18日（月）昼
朝から筑波で会議。
１１時、終わり、ここから戻る。
さて。
昼飯、で、ある。
筑波の往き帰りは、ＴＸ、つくばエクスプレス。
市谷のオフィスまで帰るので、新御徒町で乗り換えて、
大江戸線。
このどこかで、昼飯、と、いうことになる。
新御徒町、あるいは、上野御徒町、でもよいのだが、
まあ、このあたりは、いつもの行動範囲で、昼飯についても
決まってくる。
浅草？。
浅草で降りてみてはどうだろうか。
元浅草に住んではいるが、ウイークデーはむろん
市谷のオフィスで仕事をしているため、
昼飯を浅草で食う、ということは、ほとんど今までなかっただろう。
（浅草での飲食は、すべて、土日か、夜、で、ある。）
特段の候補を決めぬまま、ＴＸの浅草駅で降りる。
ＴＸの浅草駅はご存じの通り、国際通り、ＲＯＸの前。
弁当やの隣、演芸ホールに入っていく路地に出てくる。
ウイークデーのお昼のこのあたりは、どんな様子、なのか、
むろん知らないわけではないが、少し、歩いてみようか。
六区興行街の通り。
（そういえば、今、この通りは六区ブロ−ドウェイというのであった。）
人通りは週末ほどではないが、多い。
やはり、半分は観光客、で、あろうか。
どこにいこうか。
洋食はどうだろうか、、。
ヨシカミは、夜も遅いので、今でなくともよい。
他に、洋食やか、、。
夜早く、いつもいけないところ、、。
パイチ、か。
すしや通りの方へ少し歩き、雷門通りから一本目を左に入る。
しばらくいって、左側。
店前まできて、戸を開けてみる。
と、中から、ちょっと、時間がかかりますが、との声。
ありゃ。
どのくらいかと聞くと、３０分ほどという。
さすがに、人気がある。
もう１２時も、３０分をすぎている。
あんまり、ここで油を売っているわけにもいかない。
どうしようか。
雷門通りに出る。
と、すぐに目に入るのは、そばの、尾張屋。
やっぱりここか。
天丼だ。
天丼なら、この並び、葵丸進、もあるが、、、
まあ、知ったところが安心である。
ウイークデーの浅草ランチを開拓しようかと思ったのだが、
結局、いつものところにきてしまった。
尾張屋、というのは、本家断腸亭、永井荷風先生の
通われた店、と、いうのは有名な話。
（ただ、通った、というのは、池波先生の通った、とは意味合いが
荷風先生の場合はそうとうに違う。
先生は、武士の家に生まれ、食にはほとんど興味はなく、
いや、興味を持つのは、むしろ、よろしくないこと、と思われていた、
というのが本当、であったようだ。）
亡くなる直前に浅草で倒れられたのが、ここ、ともいう。
（これには、諸説あるようで、同じく行きつけであった、
洋食やの、アリゾナ、とも。）
戸を開けて、入る。
むろん相席。
左の奥に、案内される。
この左奥の壁に、今も、ここで食事をされている、
当時の荷風先生の写真が壁に貼られている。
ちょうどその前。
この位置の壁に、写真が貼られているのには、訳がある。
先生は、この左奥の壁の前の席がお気に入りで、
いつもここの店にくると、ニコリともせずに、この席に座り、
かしわなんばん、を頼み、食べて出ていったという。
たまさかに、この席に人が座っているようなことがあると、
その前に立ち、立たせてしまう、という、、、。
（まあ、そうとうな変人ではある。）
座り、迷わず、天丼、を頼む。
ここは、そばや、で、あるが、天丼。
まわりの先客も二人に一人は、天丼。
ここの天丼は、天丼といっても、かき揚げではない。
大きな、海老天二本の、天丼。
（さらに大きな、上天丼というのもあるが、私は並。）
と、隣のテーブルがあき、そちらへ移る。
今度は壁を背にして、座る。
すぐに、向かい側に、やはり相席で、一人、
背筋のシャキッとしたおばあさんが、会釈をして座る。
頼むのを聞いていると、お酒とお新香一人前。
なかなか、粋なおばあちゃんで、ある。
ご近所であろうか。
意外に、この店は、こういう粋なお年を召した
一人の女性も多く見かける。
一杯やって、あとは、上天丼か、上天ぷらそばか。
おばあちゃんのお酒とお新香はすぐにきて、やりはじめている。
こういうおばあさんを見ると、なにか、うれしくなる。
（前に書いた、下町のにおい、山手のにおい、で、いえば、
このおばあさんは間違いなく、下町のにおい、で、あろう。）
私は、本なぞを読みながら、待つ。
きた。天丼。
甘辛の濃いたれがかかった、海老天丼。
ハフ、ハフ、と食い、吸い物を飲む。
うまかった、うまかった。
今度は、私からおばあさんに会釈をして、席を立つ。
おばあさんも、会釈を返してくれる。
入口脇の帳場で勘定をして、出る。
よい昼飯、で、ある。
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