断腸亭料理日記2009

穴子 その1

5月9日(土)夜

砂町銀座、と、いうのをご存じだろうか。

地名とすれば、江東区北砂。

古く江戸の頃は、砂村、と呼ばれ、深川の遥か東。
人里離れた十万坪(今の千田)、の、さらに東。
砂村新左衛門一族が、拓いたので、砂村新田と呼ばれた。

とまあ、昔の話はよいのだが、
今は、北砂、南砂、東砂、新砂と四つに分かれている
砂町。

駅は東西線の南砂、都営新宿線の大島、西大島、あたりが
最寄であろうか。
だが、どの駅からも離れている。
商店街として独立している、純粋商店街といってよいだろう。
一般には、商店街といえば駅前、と、思われるかも知れないが、
東京、特に下町には、駅などとは無関係な商店街が少なからず、
ある。(いや、下町の商店街のほとんどは、駅と無関係に
できていると、いってもよいかもしれない。)

拙亭近所の佐竹商店街も、今は新御徒町という駅があるが、
もともとは駅とは無関係に成立している。
挙げはじめたらきりがないが、墨田区京島の橘商店街

などもそう。建て込んだ下町の路地を曲がると
いきなり商店街がある。
また、純粋商店街には魅力的な商店街が多いのも
事実、で、あろう。

私は、数回砂町商店街にはいったことがあるが、
細い路地に、びっしりと商店が軒を連ねている。
やっぱり、魅力的な商店街、で、あろう。

ここで、有名な、魚壮という魚や。
なにが有名かというと、安い、ということ。
行列までできる。

この魚壮が、浅草にできている、というので、
のぞいてみようと思いついた。

場所は、千束町の商店街。
(地名は浅草四丁目)
スーパーダイマスの隣。

できたのは、去年の夏頃らしい。
なぜ、こんなところに、とも思うが、千束商店街のためには
活気が出て、よいのかもしれない。

夕方、ぶらぶら歩いて、、。

着いたら、6時過ぎ。

狙ったわけではないのだが、「明日休みだから、
安くしちゃうよ〜〜」とご主人がマジックで
端から値段を書き始めている。
これは、ラッキー、と、見てみると。

普通のスーパーの値引きなんというものではない。
夕方にかけて、半額、なんという値札が既に貼られているものを
さらに、半額程度に下げているものもある。
これはこれは、、、。
(ちょっと、目の色が変わってしまう。)

ちょうど、マグロの山かけが食べたかったので
まぐろ赤身、200円ほど。
それから、平目刺し。同じく200円ほど、これも。
ボイルやりいか、4〜5杯あって、80円。
よく、輸入物があるが、これは国産のよう、安いから買おうか。

それから、これは見逃せない。
千葉産、穴子、丸々と大きいもの(むろん開いてある。)。
これが一本なんと、150円。
3本残っていたが、これ全部。

細いものであれば、穴子も一本200円程度だが、
大きなものであれば、今、例えば吉池あたりでは、
間違いなく、一本500円は越え、まごまごすると、
800円程度にもなる。

これだけ買って、1000円でおつりがくる。

やはり、噂の砂町銀座、魚壮、只者ではない。

隣のダイマスで山かけ用の山芋も買って、引き上げる。

帰宅。

一応、今日のメインはマグロ山かけ、と
考えていたので、穴子は、すべて、煮穴子にしようか。

まずは、山かけ用に、鰹で出汁を濃いめに取る。
鍋ごと洗い桶の水に浮かべ、冷やしておく。

次に、穴子。

穴子のたれ。
毎度書いているが、鮨やで穴子や蝦蛄につける、
鮨やの符丁ではツメ、ともいう、甘いたれである。
煮穴子の煮汁を煮詰めたもの。
これは、瓶に入れて、冷蔵庫にストックしてある。
固まっているので、軽くレンジ加熱。

鍋にあける。

穴子は三本、よく洗い、ぬめりを取る。
一本のまま煮るのは長いので、それぞれ、半分に切る。

霜降りをした方がよいのか、多少迷うが、
めんどうだ、とそのまま鍋へ。

つゆに、酒、水、を足し、ヒタヒタにする。
たれはそうとう濃かったので、このままでもよさそうだが、
砂糖、これは、煮上がった後で、もう一度煮詰めるのにも
有効なので、少し多めに入れる。
気は心で、しょうゆも。

点火。


アルミホイルで落としぶた。

今日は、柔らかくなるまで、ゆっくり煮よう。
弱火。

10分超、15分、、、。

だいぶ色も付き、柔らかくなってきた。


穴子の皮の表面に脂も浮いている。
やはり、よい穴子である。

穴子は一先ず、このまま置く。

次に、山芋。

洗って、ひげ根を取る。
あたり鉢を用意し、ここにおろし金でおろす。

安いものだったのだが、なかなかものはよさそう。
そうとうに、粘る。

一本全部(と、いっても短いものだが)おろし、
ここに、酒、しょうゆ、先ほど冷やしておいた鰹出汁を
加えていく。
生玉子を入れてもうまいのだが、マグロを入れるので、
今日はやめる。

味見。

よいかな。

まぐろ赤身を切って、入れる。


穴子は、柔らかくなっているので、ヘラでそーっと、鍋から上げ、
切って、皿に盛る。
別のたれがあるので、たれもかける。
煮上がってすぐだから、うまいであろう。

それから、やりいかも、切って、同じくタレをかける。
平目の刺身も皿にのせる。


今夜は、内儀(かみ)さんはいないのだが、
とても豪勢な夕飯になってしまった。

穴子は、煮えたてで、脂もあり、そうとうにうまい。
やはり、大きく脂の乗った穴子は、最高である。
千葉産とあったが、江戸前、なのか。
(富津より東京湾の内側が江戸前という定義になっていたのだと
思うが、その外、外湾か、外房?
外房で穴子が獲れるのかどうか、私は知らない。)

これが一本150円は格安。

平目も、季節はもう終わってるのだろうが、
切れっぱしだが縁側までついており、うまい。

やりいかは、まあ、それなり。

マグロ山かけも、うまくできた。



続きがあるのだが、今日はひとまずこのへんで
終了。また明日。




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